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三姉妹が俺の恋路を邪魔しに来たッ!  作者: ゆいまる
四章 酌んだ供物の対価
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夜闇の狂乱





 病院の面会時間が迫ってきた5人は未だ意識の無い優介に別れを告げ病院を後にした。

「なんだか騒がしいわね」

 電車で帰って来た駅でサイレンを回したパトカーが何台も行き来しているのを見て明日香が静かにぼやいた。

「学校での事件が起きてから半日も経ってないからの、広範囲で騒がしくなって当然じゃろ」

 鈴音の言う通り、明日には朝のテレビニュースで全国配信されること間違いなしの凶悪事件が引き起こされたばっかりだ。

 それも、2日連続同じ学校で多数の死傷者を伴っているのだ。

 町中騒がしくなるのは当然と言えば当然である。

 とは言っても、当事者の俺達ならともかく凶悪事件が起こったのはまだ数時間前である。

 警察が慌しく往来しているのは分かるが、今現在この凶悪事件が起こった事をしる住人はまだ少ないはずである。

 都会の、大型液晶モニターが設置されているスクランブル交差点や家電屋のテレビのコーナーでようやく今日の事件を伝えている真っ最中であろう。

 だから、夜の駅前と言えば仕事や学校の部活や塾帰りの人達の帰宅ラッシュを迎えているはずである。

 ところが、今日の駅前は少し不自然だった。

「それにしても人通りも少ないわね」

 駅に到着して詩織が辺りを見回しながらその異変を口にする。

 そう、本来なら人で溢れかえっている時間帯の駅は終電前くらいの人の(まば)らさしかないのだ。

「明日は恐らく休校になるだろうけど孝太クンと撫子原さんは今日はもう帰りなさい。」

 詩織が孝太と美雪の方に向き直って言う。

「孝太、よかったら家まで送るわ」

 心配そうに明日香がそう申し出てくれた。

「いや、今日は俺と美雪は神社の方で泊まるから大丈夫だよ。ありがとう、明日香」

 そう、今は非常事態だ。自宅に居るよりかは安全だろう。まあ、内情は秘密なので明日香達には説明出来ないが。

「神社?」

「ああ、俺の祖父が神社の神主なんだ。両親の方も今日はそこに移るって言ってたからそのままタクシーで帰る事にするよ」

「神社…それは初耳じゃの」

 流石は勘の良い鈴音だ。軽く流して誤魔化そうと思ったがしっかりと突っ込んで来られ一瞬ギクッ…となった。

「ふ、普通の神社だよ。どこにでもあるような寺だし」

 両親の献身的な教育の賜物(たまもの)か、俺は嘘をつく事に慣れておらずしどろもどろになってしまった。

「ふーん…」

 鈴音があごに手を当てながら相槌(あいづち)を返した。

 内心で何を考えてるのか…怖いな。

「それで撫子原さんは巫女さんの格好だったのね」

 詩織が美雪を見ながらにこやかに会話に入って来た。

「でも、撫子原さんの制服ボロボロだったでしょ?ご両親か、ご祖父母様は驚かれなかった?」

 これまた詩織の鋭い突っ込みでギクッっとした。美雪の事情を既に把握していて自分だけ疎外感受けてました~なんて絶対に言えない。

「あー…えっと、」

「孝太君のご両親とご祖父母様とは着替えた後に会いました。孝太君には制服が破けてしまったので衣服を貸していただいたと伝えてもらいました」

「なるほど、そういうことだったのね」

 詩織はすんなり信用してくれた。

 咄嗟の美雪のフォローに救われ気付かれない様に安堵のため息を吐いた。グッジョブ美雪。

「どうしてカノジョも孝太の神社へ?」

「ええ。孝太君のお義母(かあ)様に呼ばれてるのでお邪魔するつもりよ」

「ん?今カノジョ、サラッと『お義母様』と呼んだ?」

「なんの事かしら?わからないわ」

「そう、私の聞き違いだったのね」

「そうよ、いずれ私のお義母様になるのだから今から呼んだって構わないはずよ」

「うぬっ!?カノジョ…その喧嘩買ってやろうじゃないの!」

「あら?別に明日香さんには関係ないじゃない?」

「ああん?」

 よく分からない内に場の空気が冷えて来る。

「ちょっ、どうしたんだよふたり共!?急に喧嘩腰になって」

「じゃ、じゃあ私も一緒に行くわ!」

「明日香、駄目よ。私達は帰ってから作戦を練らないといけないのよ」

「う、ぐ…ぐぬぬ…」

 すぐさま詩織からNGを出され明日香が目尻を吊り上げ唸った。

「孝太クンも、まだ高校生なんだから健全なお付き合いをね」

「えっ?」

 詩織の言葉の意味を察して急激に顔の熱が上がっていく。

「ぅわわわかってますよ!」

 詩織はクスリと小さく笑ってから「さぁ、行きましょう」と言ってタクシー乗り場まで歩いていった。

 先に美雪が乗り込み、その後に俺が乗り込んだ。

 行き先を運転手さんに告げてから窓越しに三姉妹に会釈をする。

 笑顔で手を振る詩織に未だ納得が行かない顔をしている明日香と、難しい顔をしたままの鈴音の順に視線を送っていく。

 鈴音と目が合った時に何度か唇が動いたが当然聞き取れなかった。

 窓を開けようとも思ったが、すぐさまタクシーが発進した。




「お姉ちゃんあの神社の巫女さんかい?可愛いねぇ~」

 運転するタクシーの気の優しそうなおじさんがルームミラーを覗きながら美雪に話し掛けてくる。

「ええ、巫女見習いなんです」

 美雪がにこやかに返す。

 正確には違うんだが、説明しようにも悪魔の事とか言えるはずも無いのでそう言う事にしておいた。

「そうかいそうかい、そこのお兄ちゃんとは兄妹かい?」

 おじさんの優しそうな視線がミラー越しに俺の方へと向く。

「あ、いえ…」

「いえ、私達恋人なんですよ」

 横から美雪が入って来た。

「ほえー!こりゃ可愛いカップルさんだぁ~」

 おじさんがカラカラと笑う。

 ちょっと顔が熱くなり照れ笑いを返す事しか出来なかった。

 タクシーは外灯の少ない山道へと入っていく。

 民家も途切れ、タクシーはヘッドライトをハイライトに切り替える。

「この辺は昔から変わらないねぇ~、街の方はどんどん変わってくから寂しくてねぇ」

 タクシーのおじさんは軽快に運転しながら昔話を始めた。

 曲がりくねった道を進んでいくとヘッドライトの先にフラフラと人影が現れ道路の真ん中で立ち止まった。

「おっとと、」

 タクシーのおじさんは昔話を中断し、ヘッドライトをハイからローに切り替えゆっくり停車する。

 俺も人影を不審に思い前面を見やるが、ローライトに切り替わった明かりじゃ人影ははっきりと見えない。

「ったく、非常識だなぁ。酔っ払いかね」

 おじさんは軽くクラクションを何度か鳴らす。

 しかし、人影は道路の真ん中に突っ立ったままピクリとも動かなかった。

 そして、美雪がハッとした表情を浮かべた。

「おじさんッ発進して!」

「ええ?」

 タクシーのおじさんは怪訝(けげん)そうな顔をして美雪の方へ振り返る。

 それからおじさんはレバーをパーキングに入れサイドギアをギリリと引いた後シートベルトを外した。

「こんな人里離れた山道だ。もしかしたら何か困ってるのかもしれん」

 そう言っておじさんはドアを開けた。

「おじさんッ」

「大丈夫だって、こんな所に犯罪者が一人で居るわけないから。少しまっててね、運賃はおまけしとくから」

 笑顔でそう言ったおじさんはバタンとドアを閉めて人影の方へ近づいて行った。

「孝太君!出るわよ!」

 美雪がこっちに振り向き強い口調で言ってきた。

「あ、ああ」

 勢いに押され咄嗟に(うなず)く。

 美雪は俺の右手を取って右側のドアから降りる。

 外に下りた瞬間、前から悲鳴が聞こえドゴンと音が響いて来た。

 前方に振り向くとボンネットに押し倒されたおじさんが数人の人影に襲われていた。

「いつの間にッ」

 瞬間、鈍く嫌な音が響いたと思ったらサイドミラーの方におじさんの腕が力なく落ちた。

「……ッ!?」

 俺はそれがどういう意味かを察し息を呑んだ。

 後部ドアを開けた事で室内灯が人影の顔を微かに照らす。

「ゥゥゥ…ウゥ…」

(間違いない、コイツ等は狂人だッ!)

「孝太君ッこっち!」

 美雪が俺の手を引きタクシーで来た道を駆け出した。

 しかし、俺と美雪は数メートル走った所で立ち止まった。

 どこから現れたのか、数百名は居るだろうと思われる人影達が現れていたのだ。

「くっ…!?」

 美雪が悔しそうな声を上げる。

「み、美雪ッ」

 タクシーの方を振り向くとそこにも道路に埋め尽くす程の人影が現れていた。

 外灯も無い山の一本道、助けを求めて駆け込める家屋は一切ない。

 息を呑みながら辺りを見回すと、道路のわき道に舗装されてない細い砂利道が一本伸びていた。

 この先が何処に繋がっているか分からない。が、迷ってる余地は無さそうだ。

 美雪もそれに気付いて俺の顔を見る。

「行くわよ!」

「ああッ!」

 俺と美雪は手を取り合いながら僅かに浮かび上がった白い小道へと駆け出した。





    ◇ ◇ ◇

【キャラ一覧】

おきな 孝太こうた

★本物語の主人公。強力な女系霊媒師の家系の末っ子長男として生まれる。霊感などの類は一切ない平凡な高校生。

撫子原なでしこはら 美雪みゆき

★孝太の恋人。女子陸上部のエースで周囲からも期待されている。孝太にベタ惚れ。

琴宮ことみや 詩織しおり

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹長女。保健医。妹達が居る前ではしっかりな姉をやっているが、根はのんびりやさんらしく孝太とふたりきりの時は間延びした口調になる。日本史に出てくるお姫様みたいな雰囲気だが、服装はかなり艶やかで挑発的。対悪魔戦では基本後方支援・作戦立案担当。

琴宮ことみや 明日香あすか

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹次女。孝太と同じクラスに転入。孝太から悪魔の気配がする為、よく行動を共にする。対悪魔戦では猪突猛進の近接タイプ。

琴宮ことみや 鈴音すずね

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹三女。1年生。ちっこくて可愛い声なのだが喋りが年寄りという特徴的な女の子。対悪魔戦では中間地点から前衛との連携攻撃タイプ。



☆その他☆

谷津やと 優介ゆうすけ

★孝太とは大の親友で幼なじみ。孝太と同じクラスで孝太と飴玉交換するのを日課にしている野球少年。

茂木もぎ 和仁かずひと

★3年、男子陸上部キャプテン。美雪に想いを寄せ、孝太に強い敵意を持っている。

悪魔

★異世界から突如現れ、人間を喰らうモノ。肉体はあるが、人間の精神を乗っ取ったり弱みに付け込んで魂を供物にして契約を持ちかけたりする。契約時や獲物を襲う時以外直接人間に姿を現す事は無い。

おきな 婆様ばばさま

★遥か南国の島の王家に従っていた由緒ある霊媒師一族の長女。寺の住職である爺に見初められ嫁ぐ。現在は神殿の奥に篭り、その姿は翁母と翔子にしか見る事が叶わない。謁見の際は簾越しにしか話す事しか出来ず、孝太も幼少期以降は簾越しでしか会った事がない。実家一族とは絶縁状態である。

おきな はは

★孝太の母で霊媒師巫女。言動が若く、思春期真っ只中の息子とも良好な関係を維持している。孝太には美雪推し。

おきな ちち

★一般のサラリーマン父。厳格そうに見えるがだらしない一面が。孝太には明日香推し。

おきな 翔子しょうこ

★孝太の姉。霊媒師巫女。超ブラコン。現在は冒頭の方で孝太とのメールのやり取りをしたのみで、まだ1回も登場していなかったが遂に登場の兆しが?


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