彼女できました!
「孝太ー、早く起きて準備しないと美雪ちゃん来るわよー」
階段下からお母さんの声が届く
「んー...」
寝ぼけつつ元気良く起き上がる
「...しゃあー!起きるか!」
ベッド横で大きく伸びをした後、素早く制服に着替え洗面所で歯を磨き顔を洗ってから食卓に着く
「おはよう。はやくご飯食べちゃいなさい」
「あーーい。」
既に朝食が食卓の上に並んでいる
いつもの定位置に座りいただきますを言ってから箸に手をつける
「ふふふ。」
不意に母が笑う
「ん...なに?」
「孝太に彼女なんか出来て、すっかり良い子になったわよね」
そうなのだ、ほんの数週間前に女子から告白されてOKした俺には毎朝彼女が迎えに来てくれるようになったのだ
それで最近はちゃんと起きてすぐに朝食を取りに1階へ降りれるようになった
「それまで何度起こしてもなっかなか起きなかったのにね」
クスクスと嬉しそうに母が笑う
「だがな孝太、お前はまだ高校生なんだから健全な付き合いでな」
これは食卓の上座に鎮座する我が家の大黒柱。お父さん
「わわわ、わかってるょぅ...」
思わず赤面してしまい語尾がかすれてしまった
「ね、姉ちゃんは?」
話を逸らす為に母に尋ねる
「翔子は先にお寺に寄るからってもう出たわよ」
「そ、そう。さすが巫女さんは朝が早いね」
ウチの母方の家系は遠い南の島のユタという霊媒師の血筋で、その昔王家に仕えた由緒正しい血筋だったらしい
なんでも、お寺の住職だったお爺ちゃんが南の島でのお婆ちゃんに一目ぼれをし、反対を押し切ってこっちに連れて来ちゃったもんだから向こうと揉めるに揉めたみたい
そんな中誕生したのが我が母の兄と母である
それでユタの血筋は女性のみに強い霊力を宿すらしく、その関係で姉と母は実家であるお寺で巫女修行をしているのである
ちなみに、男性はまったくの霊力は宿らないらしい
その関係で母の兄、伯父さんは海外へと居なくなり現在まで行方知れずである
そういえば、『稀人』ってのがあったらしいけどなんだったかな?
「お母さんも今日はお寺に寄るから遅くなるわ。晩御飯はお父さんとで大丈夫よね?」
不意に母がそう言うもんだから思い出す前に霧散してしまった
「あーい、りょうかい♪」
朝食を食べ終わりかけた頃に玄関のチャイムが鳴った
◇ ◇ ◇
ピンポーン
「はーい!ほら、美雪ちゃん来たわよ!」
急いで残りの朝食を口の中に押し込む
「行っへひまーーふ!」
「車に気をつけてね~」
口の中モグモグしながら急いで靴を履き玄関を開けた
一瞬朝の太陽で目が眩み目を細める
次第に目が慣れ、玄関の格子の向こうで微笑む美雪の姿が目に入ってくる
「孝太君おはよ!」
「おはよう!美雪」
思わず顔が熱くなる
髪は陸上部で日に焼ける為かダークブラウンで鎖骨まで伸びている
肌はガッツリ焼けてるわけではなく少し小麦かかってる程度だ
背は160前半で瞳はやや吊り目パッチリの小顔ですっごい可愛い!!
やっぱ体育会系なだけあり活発で元気があり、異性同姓からかなり人気がある
この娘が俺、翁孝太の彼女、撫子原美雪だ
「いつも悪いね」
すまなさそうに隣へ並ぶ俺、背は美雪と同じくらいの160半ばである
こうして並んで歩くとお互いの顔が見れて良いなとは思うけど、ヒールなんか履かれたら簡単に抜かれるな
俺の方は、まあ南国の血筋が入ってるなだけにこの辺では珍しい顔立ちをしてるくらいと指先が器用なくらいだ
男子の平均身長より低いので、女子にモテるってことは無かった
だから美雪から突然告白された時は物凄く動揺した
接点なんか無かったし、美雪はまぁ有名人の部類に入るから知ってたけど、向こうが自分を知っていた事には凄く驚いた
いつから俺のこと見ていたのか今度聞いてみたいな
美雪の陸上部の話や近々ある模擬テスト対策とかを話しながら学校へ向う
学校に近づくにつれ生徒数が増えて来た
未だ美雪に彼氏が出来たというショッキングなニュースが受け入れ難いらしい男子生徒から敵意剥き出しの視線が容赦なく浴びせられる
「よう!美雪!」
ふと背後から声をかけられ2人振り向く
「あっ、茂木先輩!おはようございます!」
美雪が愛想良く答える
そこには男子陸上部キャプテンの茂木和仁が居た
「お前またタイム縮めたんだって?もう地区予選突破は近いんじゃねーの?」
「そんな、私なんかまだまだですよー!茂木先輩なんて全国目前じゃないですか」
さすがは陸上部のエース同士、通じるものがあるらしい
「まぁ、全国は昔からの目標だからなぁ。今年こそは行かしてもらうぜ!...うん?なにこいつ?」
そこで初めて俺の存在に気づいたらしくジロっと俺の顔を見下ろす
うん。さすが陸上部キャプテン張るなだけあってデケーな...
「あっ、こちら翁 孝太君。私の彼氏です」
「ども」
軽く会釈する
「美雪の彼氏?」
ピクッと茂木の眉の端が動き俺を見る
完全に敵意のそれに変わった
まぁ実際、告白される前の美雪と茂木はよく一緒に居たし付き合うだろうと噂になっていた
たぶん茂木もまんざらでは無かったのだろう
「何?美雪、こんな奴のオッケーしちゃったわけ?」
なんか俺が美雪に告白したみたいに取られてるな
「私から告白したんですよー」
恥ずかしそうに美雪が答える。可愛いぜ。。。
「美雪が!?ふぅ...ん」
おお、めっさ動揺してる!
一瞬の沈黙...
「まぁいいや、じゃな!」
そういうと俺と美雪の間を通って行く
ドンッ
(痛ッ)
通り過ぎざまカバンを俺の肩に当てて行きやがった。なに?この修羅場
美雪は気がつかなかったみたいだ
「じゃあ孝太君、行こっか」
そう天使の微笑みで俺に言ってくる。美雪マジ天使!
「おう」
それから美雪とはクラスが違うので下駄箱で別れ自分の教室へ向かった
◇ ◇ ◇