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三姉妹が俺の恋路を邪魔しに来たッ!  作者: ゆいまる
三章 魔に魅入られしは表裏に分かつ
21/43

修羅場場場場ぁ~ん




「「ぜぇぜぇ…」」

「ふたりともお疲れ様」

 結局勝負は決しなかったらしく、明日香も鈴音も四つんばいになって肩で大きく息をしている。

 詩織はホットではなく、氷で冷やしたアイスコーヒーをふたりに差し出す。

 さすがに大人の女性ともなると細かな気遣いが出来るんだな~っと感心するが詩織の方はもう慣れた様子だった。

「ありがとうございます。お姉様」

「ありがと。」

 ふたりは詩織から氷の入ったマグカップを受け取るとゴクゴクと一気に飲み干した。

「「ぷひぃ~~」」

「オッサンかッ!」

 腰に手をあて、風呂上りの珈琲牛乳を飲み干すかのような姿のふたりに思わず突っ込む。

「それで?どうするのか決めたの?」

 俺の突っ込みは完全スルーで明日香が本題を切り出した。

「そうね、孝太くんには協力を承諾して貰ったわ」

「そう」

 明日香は三姉妹と協力協定を受諾する意思を知って俺の顔を一瞥(いちべつ)した。

 その瞳は僅かに嬉しさを含んでいるように見えた。

「か、勘違いすんなよ。俺は美雪の潔白を証明したいだけだかんな」

「へぇ~。へぇ~。」

 明日香はやる気の無い返事を返してくる。

「そうか、では少年は私らの仲間じゃな!」

 鈴音は嬉しそうに俺の前へ歩み出て右手を差し出してきた。

「お、おう」

 その差し出された鈴音の右手を握る。

「心配するなよ。少年は私らが必ず守ってやるからの」

 カカカと笑いながら握った右手に左手を沿え包み込んできた。

「あ、ありがとう」

 言葉使いはおかしいけど、真っ直ぐ感情表現する鈴音にちょっと照れる。

 ふと明日香から視線を感じ意識を移すとそっぽを向いた明日香が横目で握手する手をチラチラと見ている。

「素直じゃないのう~」

「べ、別にそんなんじゃないし、」

「明日香もよろしくな」

 苦笑いを浮かべつつ明日香に右手を差し出す。

 明日香は頬を赤らめ、差し出した右手を横目で見つめた後に何故か人差し指だけをちょんと握ってきた。

「よ、よろしく」ごにょごにょ。

 声が小さくて聞き取れなかったが、言った事は理解出来た。

「さっ!協力関係も築けたことだし、作戦を立てましょう!」

 胸の前でパンっと両手を叩き詩織が切り出した。

「お姉様、何か良い案があるのですか?」

「そうね、今まではコソコソ後をつけてたけどすぐに見失っちゃってたでしょ?」

「明日香の尾行が下手っぴなのじゃ」

「う、うるさいわね!あんただって同じでしょッ!」

「うぬぬ…」

「まぁまぁ、そこはともかく彼女は凄い勘が良いわ。常に尾行を警戒してる節もあるから難しいのよ」

 明日香と鈴音が「ふむふむ」と頷いた。

「でも、これからは気にすることないわ」

「それはどうしてですか?お姉様」

「これからは堂々と一緒に居れば良いのよ。孝太くんとね♪」

 詩織がこちらを見てウインクを飛ばして来た。

「なるほどね!」

 明日香も納得の表情でこちらを見てくる。

「一緒に居てどうするんですか?」

「孝太くん心配?大丈夫よ。一緒に居るだけで良いの」

「?」

 詩織の意図が読めず、首を傾げる。

「これまでは犯行現場を押さえる為に行動していたけど、これからは傍に居ることで犯行を起こさせないように立ち回りましょう。もし、なにかやましい事があるなら必ずボロを出すわ」

「ふむ。少年にとっても危険リスクは小さいの」

「それじゃあ、孝太くんはお昼休みや放課後は撫子原さんと一緒に行動してちょうだい。明日香も孝太くんの傍にお願いね」

「わかったわ」

「お姉様、私はどうしましょうか?」

「鈴音は有事の時すぐ動けるように一歩引いた所から監視して頂戴。私もサポートするわ」

「わかりました。お姉様」

「それじゃあ孝太くん、お願いね」

「は、はい」

「大丈夫よ孝太。なにがあっても私が守ってあげるから」

「お、おう。ありがとう」


 なんだか大変な事に巻き込まれて来たけど、こうして三姉妹と協力関係を結ぶ事になった。





    ◇ ◇ ◇



【お昼休み】


「良いこと、必ずお昼呼び出すのよ?」

「な、なるべく善処するよ。あんまり強引だと向こうも警戒しちゃうから無理はしないぞ?」

 そう言って俺は携帯を取り出し、美雪に電話をかける。

「もしもし、美雪?俺だけど、」

『孝太君?どうしたの?電話なんて珍しいね』

「ああ、ごめんな。今日お昼一緒に食べたいな~って思って」

『……。』

「美雪?」

『ごめんなさい、ちょっと用事があって…』

「そ、そうか。ごめんな、美雪の顔がどうしても見たかったんだけど…」

『……!?』

 受話器の向こうで美雪が息を呑む音がした。

『わわわ私も、孝太君の顔見たいわ!…でも、ごめんなさい』

「ああ、謝らないで!いいよ、いいよ。俺の方こそ無理言ってごめんね」

 こりゃあ駄目だな~っと諦めモードになった。その時、

「孝太ぁ~、一緒にご飯食べよぉ~?」

「あっ、明日香ッ!?」

 突然、隣に居た明日香が猫撫で声で携帯を持つ腕に抱きついて来た。

「ちょっ!明日香ッむむむ胸が当たってるッて!?」

『えっ!そこに明日香さん居るの!?』

「どこに電話かけてるのぉ~?今日()ふたりきりで食・べ・よ!」

「なななななに言ってんだよ明日香ッ!」

『ちょっと!孝太君ッどういうこと!?』

「どどどうもしないよッ誤解するなよ美雪!ちょっ!?明日香!顔近いッ」

「美雪さんはどうぞごゆっくり~♪」

 明日香が俺の耳元の携帯に話しかけた。

(そうか、美雪を挑発してるのか)

『…行くわ』

「えっ?」

『今すぐ行くから待ってて!明日香さん、許しませんわッ』

 そう言って電話が切れた。

「切れた。美雪、来るってさ」

「大成功ね♪」

 明日香がいたずらっぽい笑みを投げかけてくる。

 だけど、

「あのさ、明日香…すごく、近いです」

 明日香自身気付いてなかったみたいだが、椅子に座る俺の膝の上に明日香が座り、抱きつく形になっていた。

 お昼休みと言え、教室で机を合わせて弁当を食べるグループも居る。

 今日も明日香と昼食を取ろうとしていたグループがポカンとこちらを見ている。

 そこでようやく周囲の視線に気付いた明日香が慌てて飛び退いた。

「あ、明日香さん、これはどういう事…?」

 グループの女子が恐る恐る明日香に尋ねる。

「べべべ別に、変な意味じゃなくて、ちょっとふざけてただけですのよ?オホホホ」

 明日香は顔を真っ赤にしながら苦しい言い訳をしながらこっちも見てくる。

 俺も気恥ずかしくなって赤くなる。

「そうそう~まったくもう明日香はいたずらっ子だなぁ~」

「翁君、どうして明日香さんの事呼び捨てで呼んでるの?」

「うっ…!?」

 助け舟を出さないといけないと思いフォローをしようとするが逆に墓穴を掘ってしまったようだ。

 すると、廊下の方からドドドドともの凄い足音が聞こえて来たかと思ったら勢い良く教室の後ろのドアが開いた。

「明ぁ~日ぅ~香ぁ~さ~ん!」

 そこには右手に小さな弁当箱を持って鬼の形相をして立っている美雪が居た。

「「早っ!!?」」

 見事なまでに明日香とハモった。

(あれ?もしかしてこれって修羅場?)

「孝太くぅ~ん、いったいどういう事かなぁ~?」

「まっ、待て!美雪ッこここれはだな」

 しどろもどろになりながらチラっと明日香の方に視線を移す。

 しかし、明日香はジッと美雪の方に視線を向けていている。

「そう!俺が、明日香に最近美雪とお昼一緒に出来なくて寂しいな~って言ったら気を利かせてくれたんだよ!なっ?」

「そ、そうなの?明日香さん」

 美雪は鬼の形相から一転、意外そうな表情に変わり明日香の顔を見やる。

 だが、明日香は腰に手を当てフフンと鼻を鳴らした。

「そんな訳ないじゃない。私は孝太と仲良く食べるからアナタ邪魔よ」

「あれれ~~?明日香さぁ~ん?」

 まさかの明日香の裏切りに(ブルータス、お前もか)という心境に陥った。

「うっ…ぐっ…」

 美雪の表情が呆れ顔に変わってから怒りに震えだした。

「孝太君ッ」

「はっ、はいっ!」

 美雪の矛先がこちらへ向いた。

「彼女の私とお昼食べるのよッ!」

「はっ、はいっ!」

 ぐわしっと美雪が弁当箱を持っていない左手で俺の右手を掴んだ。

「孝太ッ!」

「はっ、はいっ!」

「こんな彼氏をほったらかす女はほっといて私と食べるわよッ!」

「はっ、はいっ?」

 ぐわしっと明日香が弁当箱を持ってない右手で俺の左手を掴んだ。

「なにかしら?明日香さん」

「なによッ」

 ギリギリギリ…と手の平を強く握り締められ、主に俺の手が痛んだ。

「あっ、あのぉ~、まはぁ~一緒に食べれば良いんじゃないかとぉ~」

 手の痛みに耐えながらで声が裏返りまくったが、なんとか最後まで平和的に済みそうな案を提唱してみた。

 ふたり同時にキッと睨まれ、「ぐぬぬ…」と唸った。

「分かったわ。孝太君がそこまで言うのなら…」

「おお、美雪は分かってくれたか!」

「今日こそ決着をつけるわ!明日香さんッ」

 ビシッと弁当箱を持つ手で明日香を指差した。

「分かってくださってなかったぁーーーッ」

「望むところよッ」

 何故か明日香もビシッと弁当箱を持つ手で親指を立てた。

「明日香も乗っかっちゃったYO!」

「「孝太(君)ッ行くわよ!」」

 見事ハモらせてこちらを見る。

「あっ、ちょっと待って、今弁当箱取るから」

 背後にある自分の机に振り返るが、すぐに後ろから両腕を取られた。

「孝太君、どうせ購買のパンでしょ?私の弁当分けてあげるわ」

「孝太、私の弁当は詩織の自信作だぞ!分けてあげるから安心しろ!」

 そう言ってふたりはそのまま歩き出した。

 俺は後ろ向きのまま引きずられて教室を出る。

 教室に残った明日香のグループのポカンとした顔を俺だけが見届けた。





    ◇ ◇ ◇

【キャラ一覧】

おきな 孝太こうた

★本物語の主人公。強力な女系霊媒師の家系の末っ子長男として生まれる。霊感などの類は一切ない平凡な高校生。

撫子原なでしこはら 美雪みゆき

★孝太の恋人。女子陸上部のエースで周囲からも期待されている。孝太にベタ惚れ。

琴宮ことみや 詩織しおり

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹長女。保健医。妹達が居る前ではしっかりな姉をやっているが、根はのんびりやさんらしく孝太とふたりきりの時は間延びした口調になる。日本史に出てくるお姫様みたいな雰囲気だが、服装はかなり艶やかで挑発的。対悪魔戦では基本後方支援・作戦立案担当。

琴宮ことみや 明日香あすか

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹次女。孝太と同じクラスに転入。孝太から悪魔の気配がする為、よく行動を共にする。対悪魔戦では猪突猛進の近接タイプ。

琴宮ことみや 鈴音すずね

★悪魔狩り師、琴宮三姉妹三女。1年生。ちっこくて可愛い声なのだが喋りが年寄りという特徴的な女の子。対悪魔戦では中間地点から前衛との連携攻撃タイプ。



☆その他☆

谷津やと 優介ゆうすけ

★孝太とは大の親友で幼なじみ。孝太と同じクラスで孝太と飴玉交換するのを日課にしている野球少年。

茂木もぎ 和仁かずひと

★3年、男子陸上部キャプテン。美雪に想いを寄せ、孝太に強い敵意を持っている。

悪魔

★異世界から突如現れ、人間を喰らうモノ。肉体はあるが、人間の精神を乗っ取ったり弱みに付け込んで魂を供物にして契約を持ちかけたりする。契約時や獲物を襲う時以外直接人間に姿を現す事は無い。

おきな 婆様ばばさま

★遥か南国の島の王家に従っていた由緒ある霊媒師一族の長女。寺の住職である爺に見初められ嫁ぐ。現在は神殿の奥に篭り、その姿は翁母と翔子にしか見る事が叶わない。謁見の際は簾越しにしか話す事しか出来ず、孝太も幼少期以降は簾越しでしか会った事がない。実家一族とは絶縁状態である。

おきな はは

★ユタの血を引く霊媒師巫女。孝太には美雪推し。

おきな ちち

★一般のサラリーマン父。厳格そうに見えるがだらしない一面が。孝太には明日香推し。

おきな 翔子しょうこ

★孝太の姉。霊媒師巫女。超ブラコン。現在は冒頭の方で孝太とのメールのやり取りをしたのみで、まだ1回も登場していない。


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