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第9話 お手をどうぞ、王子様?

軽く買い物をしながら町の外へ向かう。


「さてと。じゃあルイーズに向かいますかね」

「本気で今から出発して明るいうちに着くのか……?」

「だーいじょーぶだって。とりあえず飛んでいくから掴まってて」


まだ心配顔のライルに向かってくすっと笑って手を差し出す。


「お手をどうぞ、王子様?」

「普通は逆だろ……」


苦笑して手を載せてくるライルの手をがしっと掴んでから詠唱する。


「囁き渉る翠の風。空駆ける翼(フライ・ウィング)!」


ぶわっと風の膜に包まれて浮き上がる。そのまま風に包まれて高速で移動を始める。


「うおわぁっ!ええええ!?速過ぎじゃね!?魔力尽きるだろこの速さ!?」

「だいじょーぶだって……風の魔霊が一緒にいる時なら詠唱もいらないくらいだよー」

「やっぱりお前人間じゃないいぃぃ~~~~!!」



……失敬な。






風の魔術で飛ぶこと約一時間半。遠くに目的の村が見えてきたあたりで術を解いて道に降りる。

ちょっとカチンと来たので飛ばしてみたら予定より早く着きました☆

やったね!

ライルは最初こそ騒いで青い顔をしていたもののしばらくすると落ち着くというか諦めた顔で掴まっていた。


しかし……

村に向かう一本道なのに誰も通りかからない。

ちなみに術で直接村に到着しないのは各町や村で自衛の防御壁があったり見張りがいて迎撃されるというのを防ぐ為。魔導師たちの間では当然のルールとなっている。


「なーんかあんまりよくない状況みたいな気がするなぁ」

「つか静か過ぎる?ほんとにゴブリンなんているのかこれ?」


森に隣接するように存在するルイーズの村は小さいながらも林業などが盛んな活気のある村。動物に荒らされない程度に村を自衛する自衛団などもあり通常の獣相手なら襲われて被害が出ることはほとんどない。

今回の依頼は出没するのがゴブリンであったこと、報告で見るとそれなりの数がいたということが気にかかる……


「ゴブリンの群れ、か……もしかしたら近くにゴブリンが巣を作ろうとしていたのかもしれないわね」

「森の中にか?それなら別に村を荒らす必要は……あ……」


そう、あの村のメインは林業だ。無計画に伐採はしていないはずだが森に人間が立ち入り仕事をしている。ゴブリンたちが森の中に巣を作ろうとしていたのなら森に現れ木々を刈る人間を疎ましく思うのは当然だろう。


「話し合いをして折り合い付けられるような相手じゃないしねー。人間同士ならまだしも……ん?」

「人間の声……か?」

「村の人たちのって感じじゃないわね。とりあえず探してみましょ」


かすかに聞こえるのは子供の泣き声。村に向かう一本道に座り込む小さな影が見える。子供……?

嫌な予感がひしひしと押し寄せる。村から上がって見えるのは生活で起こる煙ではない黒い煙。

ひとまず座り込んだ小さな影に駆け寄る。


「大丈夫?どこか怪我でもしてる?」

「ヒック……だれ……?」



ふわふわした蜂蜜色の頭を撫でながら声をかけると女の子は顔を上げた。十歳前後だろうか……さすがに冒険者ということはなさそうだから村の子供なのだろう。

ずいぶん泣いていたのかスミレ色の目は赤く腫れている。ざっと見たところ怪我はなさそう。


「国にゴブリンの調査と退治の依頼があったからお仕事で来たの。あなたはルイーズの村の人かしら?どうしてここにいたの?」

「わ、たしは……ルイーズ、の村のメルナといいます……。今日は兄さんに連れ、られて薬草を探しに来てて……」


所々でしゃくりあげながらしゃべるメルナの背を撫でながらゆっくりと説明を聞く。どうやら兄妹で薬草を探しに来ていた時に村のほうから煙が上がり何か騒ぎが起こっているのが見えたので様子を見てくると兄だけが戻ったらしい。


「に、兄さんが、安全そうなら迎え、に来るからここで待てって……ヒック……でもずっと戻っ、て来なくて……」

「そうか。一人で待つのは怖かったな。よく頑張った」


ライルがしゃがんでメルナの頭をわしわしと撫でた。おーじさま意外とマメなのね。


「ライル。ちょっと見てくるからメルナを見ててくれる?村に来て大丈夫になったら分かるように合図するから」

「一人で行くのか?」

「メルナを置いていくわけにもいかないでしょ?それに……もしゴブリンが村を襲っているなら……きっと来ないほうがいいわ」

「……分かった。あまり遅くなるなよ」


メルナはまだ不安そうにしているし恐怖から震えが止まらないようだ……。何か気を紛らわせるようなものがあればいいんだろうけど周囲にあるのは草原と少しの木々くらい。

小動物でもいれば気が紛れるのかもしれないけどそう都合良くは行かないものだ……。

メルナちゃんの紹介はちょっと次までお預けで。

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