第7話 その情熱は仕事に向けて下さい
ひとまず使用に関する問題はなさそうと判断。
もともと貸出依頼のあった水流の杖は使用者の水の魔力を増幅させるというだけのもの。
暴走などの危険性はほとんどなく確認役というのもきちんと依頼者に届きさえすれば良かった。
「では、そちらの杖は使用後ダルディナーへ返却下さい」
すいっと片手でマントの端をつかみ胸元へ引き上げ礼を取る。最後くらいはきちんと挨拶をしておくべきだろう。
「この度は王立魔法学院へのご相談、ご依頼を頂き真に有難うございます。またのご依頼をお待ちして……」
バタバタバタ……
なにやら外が騒がしい。複数の人のやり取りする声と足音が近づいてきているような。
「お待ち下さい!そちらは謁見の間ですよっ!」
「例えそれがどこであろうとも私を止めることは出来ない!」
なんだか聞いたことある声のような気がしてならない。
「その情熱は仕事に向けて下さいいぃぃぃっ!」
「ここだーーーー!」
バターーーン!!
「こっちからシャインちゃんの気配があぁぁっ!」
「うるさい。黙れ。怯えるから寄って来るな」
めきっ!
「ぐふぅっ……」
「はぁはぁ……ピッドさん走るのがこういうときだけ速すぎます……」
入り口の衛兵を振り切って扉から飛び込んできたらしい魔術師の顔面に飛び蹴りを決めて黙らせた所に後ろから追ってきていたもう一人の魔術師が追いついてきた。
「あらミルちゃん。ごきげんよう~。シャインちゃんも騒がせてごめんねぇ」
「お久しぶりです、ミーナさん……相変わらずこの人はあれなんですね……」
私の背中に隠れて様子を見ていたシャインは声を掛けられてふるふると首を振るとそのまま姿を消してしまった。
うん、やっぱりピッドは苦手なようだ。
「お騒がせして申し訳ございません。魔霊の気配を感じて飛び出してしまったもので……すぐに引き取りますねぇ~」
室内にいた王様たちに跪いて謝罪し目を廻しているピッドを連れて立ち去ろうとした、が。
「はっ!シャインちゃんはどこに!?」
「大人しく仕事に戻りなさい」
がすっ!ぱたん……
「じゃあミーナさん、それよろしくお願いしますね」
「えぇ。ミルちゃんもまたねぇ~」
ずりずりずり……がんっ!ごんっ!ばたん……
「ミーナさんえぐい……だいぶ痛そうな音が聞こえていたような……」
「女の子じゃ師団長を持ち帰らせるのは大変だったかしらねぇ」
おっとりと王妃様は言うが違う。
「いえ、運ぶなら風などを使って浮遊させて運べばよかったのです。特に彼女、魔霊に懐かれるくらい風の魔法は得意ですから……。多分あえて引き摺って行ったのではないかと」
「……あらまぁ……」
「仕事を邪魔されて実は怒っていたんじゃないですかね」
「女性を怒らせると恐ろしいものだな……」
邪魔が入ってしまったが用件は済んだので謁見の間からは撤退させてもらう。
ご褒美の図書館は午後からでいいかと聞かれて了承。
一日では足りないだろうという王様の配慮で特別に閲覧許可証を発行してくれるらしい。
いつでも来ていいよ!とか言われてもさすがに王城にほいほい来れないデス……
明けましておめでとうございました!
明けきってますね。すみません……orz
別途、登場人物紹介を短編としてまとめました。
今後新たに登場した人物はそちらに追加編集していく予定です。




