第6話 とても逃亡したいです……。
気がついたら引きずられるようにして廊下を歩いていた。
「はっ……らい、殿下!失礼致しました!」
「いや、気にしなくていいから。今まで通りでいいよ。城内のみんなもあんな感じだし。ダルディナー師匠もそうだったし」
そういわれてみれば……。そもそも先生の態度があれだったから気づかなかったのだ。
というか昨夜のにやにやはこれだったのか!ちくしょう……!
心の中で先生を罵倒しながら歩き、大きな扉の前に到着した。
ライが頷いて扉を開けさせるとそこに広がるのは謁見の間。
わぁ。
とても逃亡したいです……。
しかし運搬のために来たのだからさっさと受け渡しを済ませてしまえば自由の身に。
部屋の中の様子を意識の外に締め出し、ひたすら無の境地でライ、もといライルに続いて部屋に入る。
「あ、魔術師殿。お荷物お持ちしましょう」
「あ!だめですっ!」
バチバチバチッ!ぱたり。
入り口の衛兵さんが気を利かせて杖が入った箱を持ってくれようとしたのだが…
封印の中には運搬者指定の術が組まれていた。
指定された運搬者以外が触れると雷撃が流れる。
「あちゃー……。シャイン、回復回復…」
慌てすぎていつもは形だけ唱える詠唱が出てこず直接回りにいる光の魔霊に呼びかけてしまう。
ふわんと光って魔霊のシャインが現れて一連のを見ていたのかくすくすと笑いながら回復を施していく。
「ミル……落ち着け。ってでもちゃんと発動してるな。魔霊がそんなに懐いてるとか初めて見るんだが……」
ライルに言われて落ち着きを取り戻す。
衛兵さんの回復はすぐに完了し、謝罪をしてから奥へ向き直る。
いきなりやらかした感があるがおかげで冷静になることが出来た。
トラブルは人を強くするんだよ!……いらないけど。
とにかく当初の目的を果たさねばならない。
謁見の間に入り進んでいく。
王様直々に受け取りだなんて聞いてないよー(涙)
王様と王妃様が揃って待っていた……。ライルが止まった位置で跪く。
「わざわざ済まなかった。楽にするがよい」
王様に言われ立ち上がり、荷物を受け取りに出てきた侍従長に渡すために各種封印を解除する。
うん、めんどくさいからまとめて解いちゃっていいよね。
パチンッ
ひとつ指を鳴らすと光が弾けてすべての封印が解け、箱を開く。
中身の杖を取り出して確認してもらい、受け取りにきた侍従長に手渡す。
「ライルも御苦労様~。ライルがこんなかわいい女の子を連れてくる日なんて……きゃっ」
王妃様はお茶目な方のようです……
「母上……。彼女は師匠が指名した魔術師ですから……」
侍従が渡した杖を王妃様が受け取りくるりと回す。
大した魔力はこめていないようだが王妃様の回りにふわりと水が現れてくるくると舞っている。
「……なんかあれね。気分は魔女っ子ね……」
「かわいいではないか……」
使うのはどうやら王妃様らしい。
だが何ともファンシーな見た目のせいで王様も侍従長も生ぬるい目で見ている。
「少なくとも王が使うよりはましでしょう…」
「……どれ、わしも一つ……」
と、王妃様から杖を奪いくるくる回す王様。
うん、なんかみんな揃って見ないふりしてた。
「親父……鏡、見るか……?」
「……うむ、忘れてよいぞ」