第5話 とりあえず行きましょうか
翌日――
正式な服装って言うことだったので魔導師の正装、称号の衣を引っ張り出す。
派手だからあんまり好きじゃないんだよね……
まだ最初に考案されたのよりだいぶましだけど。
魔力の属性を現す魔力色を基準にすることが多いが白金だから全体が輝くようスパンコールを、とか言う案があって速攻却下の上、発案者をぼこぼこにした記憶がある。
結局、どの魔力色にもない黒と銀という物になった。
何も無いことを表す黒と全ての魔力を混ぜた色の白金を表す銀。
「正装で、か……。めんどくさいなぁ……」
ため息をつきながら着替えて首元に学院章をつけ部屋を出る。
マントを翻し魔道具を受け取りにダルディナー先生の部屋に向かうと生徒の目をずいぶんと集めている気がする……
やっぱり……黒に銀の刺繍は目立つよねぇ。
「せんせー、おはよーございますー」
「おう、ミルか。じゃあこれ、頼んだぞ」
ご丁寧に封印やらなにやら掛かった箱に入れられた杖を受け取りおまけの結界を施す。
「りょうかいー。えーと、ライは?」
「ここに。準備がいいなら行くか」
部屋の奥から現れたライは昨日見た姿とあまり変わらない。
あれー?正装って……
「ライの服装はそれでいいの?なんか正装で、とか言われたんだけど……」
「あぁ、まぁこいつのうちに行くんだしこいつはいいだろ」
「なるほど。とりあえず行きましょうか」
近いから、というのでてくてくとライと並んで歩く。
ちなみに箱は私が持っている。色々封印とかかけたので他の人が触れないのだ。
しばらく歩いて着いた門を見てあいた口が塞がらない……
なぜ王城。
あ、そうか。儀式用だから王城の誰かに渡してからってことかな。うん、きっとそうだ。
「お帰りなさいませ、殿下」
ライに門番が挨拶している声が聞こえる。
……きっと空耳。
ない……ないよね!?
いわゆるおーじ様ってやつですか!
まぁたしかに見た目は典型的な王子様だ。淡い金色の髪に透き通った青い目。
でもエプロンして頭巾かぶってはたきを持って掃除する王子様ってないよね!?
ドアと本棚にサンドイッチされる王子様とかないよね!!?
はっ!私もしかしてものすごく失礼な態度だったんじゃない?
いきなりドアでサンドイッチだし言葉遣いも使いっぱしりにされてる使用人とかだと思ってたし!
もしかして不敬罪で捕縛されて処刑とか!?
固まってしまった私の前でライがひらひらと手を振っている。
「おーい、ミル。ミールー?みるみるミルラウミルラ……」
「殿下……早口言葉じゃないんですから……。もしかして何も説明してなかったんですか」
「え?だってわざわざ第3王子ですとか名乗らないじゃん?しかも親父の命令で探し物に行って掃除してたんだし」
「とりあえず中に案内してあげたらいいんじゃないでしょうか……ここに留まられても困ります」