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第4話 ここまでの俺の苦労は一体……

「で、そろそろ説明はしてくれないんですか。彼女はちゃんと人間ですか?後、探し物はまだですか……」


優雅にお茶を一人飲んでいたライが口を開く。ほんとに聞かなかったことにしているらしい。


「そうだな。とりあえずそれぞれを紹介しておくか。まずはミルだな。

“五年前”の卒業生、ミルラウ・ランゼルムだ。飛び級しまくった学院至上最年少卒業生。

さっきのあれは確かに魔封じだがこいつの場合は元の魔力が大きすぎて制御しづらいというのもあってそれを抑える為に作成を依頼されていた。

魔力が高すぎるゆえに精霊に異常に好かれているからな。通常必要な詠唱もほとんどいらない。勝手に精霊が意図を汲んでくれる感じだな」


「ぶっちゃけ発動の呪文も無くてもたぶん発動しますけどね……。

そこまで人外に見られるのは嫌なんでちゃんと口でお願いすることにはしてますけど。

正確な呪文じゃなくても発動するのは実験済みですよ。炎よ」


上に向けた掌の上に小さな火の玉を生み出し、消す。


「一言で発動か……まぁでもそれも現象の正確なイメージが出来ることが条件だからなぁ。

他のやつも出来るか一応教員の間には実験済みの報告としてあげては置くが出来るやつはいないかもしれないな」


「でしょうね。それなりに集中力と慣れが必要だし。一応私の名前でレポートは作成して出しますがまた特殊扱いになるんでしょうねぇ……」

「しゃーないな、それは。再現できるやつがいない現象だからな……」


学院では教員・学生・卒業生などから提出されたレポートが保管されていて手続きをすれば一部を除いて閲覧は自由でる。

それぞれにランクが設定されていて基本的なものはC級、応用されたものや用途が限られるものはB級、危険度が高いものや再現性の低いものはA級、伝説にすぎないようなものをまとめたり調べたものはS級とされている。

S級の中に特殊扱いということでM級というものがこっそり設定されているらしい……


「ミル級ってやつだな。こいつにしか再現出来なかったものはそう呼ばれている」

「恥ずかしいんで撤廃してくれない?」

「もう馴染んじゃってるから無理だろ……どうせ学院外に公開されることはないんだしいいじゃないか」


のんびりとお茶を飲みながらライにそんな説明をしていた。


「で、彼はどういった用件で片付けなんてしてたの。いつも人が入れないこの部屋に人がこうやって入って座れるだけでも奇跡的なんだけど」


「あぁ。ちょっとこいつの親に貸してくれって頼まれた物があったんだがなー。

埋もれてて見つからないって言ったら片付けに息子をよこすから絶対出せって言われたんでな……

どうしても来月に必要だっていうんだけど見つからないんだよなー」


「この部屋で探し物とかだいぶ無謀なことを……で、何を探してたの」

「なんだっけな……水の魔石を組み込んだ魔道具の杖なんだが……」

「それってさー。だいぶ前にエディー先生に貸し出してたやつじゃないの?」


やたら綺麗というかファンシーな杖を振り回していた先生を思い浮かべて言う。


「……それだ!そういやそんなこともあったな。すっかり忘れてた。ということでライ、所在がわかったぞ。良かったな」

「ここまでの俺の苦労は一体……」


ぽんと手を打ってにこやかに告げるおっさんとぐったりと机に突っ伏して滂沱の涙を流すライ。

かわいそうに……。


部屋の隅にある内線用の魔方陣に向かうダルディナー先生。

「あぁ。エディーいるか?水流の杖ってそこにあるか?あぁ、それだ。貸して欲しいって言うのがいるから返却してくれ」


こちらに戻ってきて点検と調整をして明日受け渡し、となった。

一応高額な魔石を使っていることもあり護衛というわけではないが学院側から無事届けたのを確認することになっているらしい。

後は実際に使ってみて暴走したりしないかどうかという確認。

で。なぜかちょうどいいから行って来いということで私に話が……


「えー……。めんどくさいー。渡すだけなんでしょ?先生が行って来ればいいじゃない」

「渡すだけなんだから頼んでるんじゃないか。ついでにライがいいところに連れて行ってくれるから」

「どこに案内させようっていうんだ……」


本人もそんな話は聞いていないようで渋い顔をしている。

が、行き先を先生が王宮図書館と言った所、納得の表情に……


「えぇ?あそこの入場ってそんなちょっと付いて行ったくらいで入れるものじゃない気がするんだけど……」


王宮図書館は学院でも保管が危険とされるものや一点ものしかない魔道書が保管されている。

見ることが出来るなら見てみたい。魔法を研究する者なら誰でも憧れる場所である。

入場が可能なのは聞いている限りでは王族と王宮魔導師の長と王族の許可を得た者のみ。

ライが貴族か何かとして王族の許可がもらえる立場ということだろうか……

まぁでも確かにいいとこのボンボンという雰囲気だし可能性は高そうだ。


「じゃあ護衛と確認役だけで図書館連れて行ってもらえるならまぁ引き受けましょう」


思いっきり物につられているという無かれ。

魔導師にとって知識はいくらあっても困ることは無い。

明日の午前、正規の服装でという約束をしてライは去って行った。


「うーん、それにしても……ライってどこの家の方なんです?

見た目はいかにも貴族っぽいけどこのマメな片付けっぷりとかは貴族らしくないというか」

「親の教育が良かったんじゃないか」


にやにやするばかりでのらりくらりとはぐらかし教えて貰えなかった。

くっ……たぬき親父め!

まぁ明日、案内してもらう間にでも聞いてみるか…?

宿泊は学院の部屋を借りることにしているのでここ二年で提出されたレポートを読んだり他の魔導師たちと研究について議論しつつ夜は更けていった。

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