第21話 あ~、そうですよね……。
コンコン。
「ミリー、リーシュ?入りますよ」
リネイル殿下がドアをノックして声を掛けると中から侍女が扉を開き中に招き入れられた。
「リネお兄様!ちょうどいい時間ですわ。お茶を一緒に戴きましょう!……あら?どなた?」
「こら、ミリー?淑女はいきなり飛びついたりしないものだよ。こちらは魔導師のミル殿。二人の新しい家庭教師だよ」
入った途端飛びつかれたリネイル殿下が苦笑しながらそっと妹を立たせる。妹姫は首を傾げて兄に問う。
「家庭……教師?この方はその先生の従者ではないの?」
「いや、こちらのお嬢さんが家庭教師だよ。ミルラウ・ランゼルム殿だ。ほら、ちゃんとご挨拶して。リーシュもこっちにおいで」
奥にいた双子の妹王女も進み出て姉に並び綺麗に一礼する。
「初めまして、ミルラウ様。ランドール王国第二王女、リシュネラ・リト・ランドールと申します。よろしくお願い致します」
「ご丁寧に有り難く存じます。この度、ご依頼戴き家庭教師として参りました。ミルラウ・ランゼルムと申します。ミルとお呼び下さい。以後、お見知りおき下さい」
「ミリーもほら、ご挨拶は?」
「……ランドール王国第一王女、ミリュエル・ロサ・ランドールですわ」
しぶしぶ、といった風に挨拶する姉姫。名前からも姉姫のほうが王位継承権が高い。余談になるが貴族のミドルネームは爵位を表わすが王族のミドルネームは王位継承権が分かるようになっている。第一位から順にシル・アシュ・フィン・ロサ・リト。それ以外の王族はユニとなる。継承権が五位以外の王族や王位継承権を放棄した王族も全て。ただ結婚などで他の貴族に嫁いでそちらの名を貰うこともある。
閑話休題……二人は髪の色や瞳の色は漆黒のような黒い髪と透き通ったアメジストの瞳で同じだが髪型と雰囲気は全く違っている。姉のミリュエル姫はふわふわとした巻き毛と強気そうな切れ長な瞳でちょっぴり我儘。妹のリシュネラ姫はさらさらとしたストレートの髪におっとりと優しげな瞳で大人しく真面目。と見えたが……
「お兄様、この方が家庭教師だなんて冗談でしょう?どう見ても私たちと同じくらいですわ」
ぐさっ!
姉姫はそれに加えて思ったことをすぐに口に出す素直な方なようだ。
「ミリュエル王女は確か十五歳でいらっしゃいますね……。私のほうが少しばかり年上になりますが年齢を気にせず遠慮なく授業中はご意見、ご質問を頂ければと思います」
「ミル殿はお前たちと同年代だから話もしやすいだろう。でも彼女は既に学院を卒業して研究所勤務の実績もある魔導師だ。わからないことがあれば何でも聞けばいいよ」
「まぁ……その年で卒業されているなんてミル様は優秀なんですね。学院は進級や卒業になかなか厳しい上に授業内容も多岐に渡ると聞いていますわ。たくさんお話をお聞きしたいわ!」
双子の妹姫は姉姫と逆にきらきらした瞳で見てくる。
うっ……
妹姫は大人しそうだが好奇心は旺盛な方なようでした……。
「えぇ、そう……ですね。ですが開始が七歳でそこから数年ですから、王女様たちも今からであれば物によってはすぐに習得されると思います。お二人の希望も伺って授業の進め方は後日考えますので」
「楽しみですわ!ね、ミリー?」
「……」
タイミングよく侍女がお茶の準備が出来たことを知らせて席に呼ばれる。なんかやりづらいなぁ……。
微妙な顔をして誘導された席に向かっているとリネイル殿下がこっそりと謝罪しつつ言った。
「申し訳ないです、ミリーが反抗的な態度で気になりますが仕事立て込んでいまして……お茶を一杯貰ったら僕は退散しますから後は任せますね。授業で必要な資料などあれば言ってもらえれば準備しますので」
「……あ~、そうですよね……。お気になさらず頑張って来て下さい。何かしら対処しますので……。後、年齢的にも王女様方と変わりませんので敬語は無しで構わないですよ?」
「うん、ごめんね~。よろしく~」
ベランダに近い窓際のテーブルにお茶とお菓子が用意されている。さすがというかいいものを使っていてお茶も薫り高い。お菓子は食べやすい一口サイズのクッキーやフルーツのタルトが並んでいる。
何となく長くなりそうだったのでどこで区切るか悩んでしまいました…。半端な所で切ってしまった…ような。
●登場人物紹介●
●ミリュエル・ロサ・ランドール(ミリー)(14)
髪:黒ゆるふわロング
目:紫
ちょっと我ままで意地っ張り。悪戯好き。ひっそりお転婆。
●リシュネラ・リト・ランドール(リーシュ)(14)
髪:黒ストレートロング
目:紫
大人しい。ちょっと人見知り。勉強熱心で好奇心旺盛。




