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灰かぶりの魔法使い  作者: 山崎空
1.ひとりからふたり
2/21

魔法使いになるまで02




 ――それから様々な経緯があって今の私があるわけだ。


 ぺしゃんこになった私の後に今の私が形作られ、残った母と姉を信頼できるはずもなく家族不信は確定で、さらに中学一年時にうっかり思春期の苛めにとっつかまり人間不信マックスとなった結果、自分以外の人間なんぞどうでもいいという極論に至った私が完成した。


 中学二年にあがる時に引っ越したのは、別段私が苛められていたからではなく単に母の仕事の都合だった。

 結果論として新しい中学ではいじめにもあわずに空気のようになって平和にすごした。

 

 中学三年の時に母が再婚した。

 相手の方にも連れ子がいて、お互い伴侶を交通事故で亡くしたことで何か通じ合ったらしい。

 性根に難ありな部分を綺麗に覆い隠して相手に微笑む母はまさに女優だった。

 騙された相手方には心の中で合掌しておいた。


 連れ子はとても可愛い女の子だった。

 周りから可愛い可愛いといわれ続けて育った姉よりも遥かに美少女だった。 

 その時点で姉の機嫌が下降したのは目に見えて分かったが、母が何をどう思ったのかは読めなかった。

 姉はまだ若いだけ感情が顔に出てしまいがちだが、母はそんな事がない。


 まったく女ってのは怖い生き物だ。


 

 再婚話はとんとん拍子に進み、一ヵ月後には私は新しい家で三人姉妹になっていた。


 妹になった美少女は「幸」と書いて「ゆき」という名らしい。

 愛されて育てられたのはよく分かった。

 性根がまっすぐで、優しく、小学生だというのに新しくできた家族に気をつかってくれる。

 幼い頃に母親をなくして、少し母親と言う存在に憧れか何かがあったのだろう。

 私の母も、最初のうちは外面が完璧だった。

 幸は母の言う事をよく聞いたし、好かれるように努力していた。彼女は頭もよかったらしく、見せてくれたテストはどれもいい点ばかり。

 

 姉がそんな幸を妬み羨ましがり母に言うのは想像できた範囲で。

 自分の可愛がる実の子より、優秀な他人の子を母が気に入るはずもなく。



 気がつけば我が家は現代版シンデレラの舞台となった。



 

 ――私? 役柄的には意地悪な姉その二らしい。

 興味ないから関わってない。

 姉と母が再婚相手が留守の間に幸をちくちく苛めているのは知っているが、ただそれだけ。同じように苛める気もなければ、庇う気もない。


 庇ったところで私に被害が及ぶ。中学一年の時に身にしみてわかった。それはごめん被りたい。


 そんな事より、私はさっさとこの家を出る算段をしていた。

 自分の子が影で苛められているのに気がつけない再婚相手を今更父と慕いたいとも思ってないし、別に妹なんて欲しくなかったし、何より母と姉に付き合うのは真っ平ごめんだ。

 

 私の家族は、今は亡き父だけだ。

 高校に入学したらすぐバイトを始めて、お金を貯めてさっさと家を出よう。

 ありがたい事に母は大学までお金を出してくれる気らしい。姉よりランクが低い大学に入れば問題ないだろう。姉が浪人すると計画が狂うのであまり名門は狙わないので欲しいのが本音だ。高校も姉が選んだ高校より偏差値が低いところを選んでるので特に何も言われなかった。


 ようは姉より常に下を狙えば母は私に干渉してこないわけだ。




 

 高校に入学した私は計画通り比較的時給が高いバイトを探して始めた。

 部活には入らず、青春なんてそっちのけでバイトに励んだ。スーパーの裏方は存外に時給がよく、平日はあまり入れない代わりに授業がない土日はガッツリバイトを入れてもらった。

 何より土日は時給も高くなるのだ。逃す手はない。


 稼いだお金は新しく作った口座でこつこつと貯めた。

 必要最低限な物以外は買うのをギリギリまで抑えて、使えるうちは多少ぼろくても使い切った。


 高校のイベントやその他諸々を全てスルーした私の高校生活は、見事にバイトと勉強の二つしかなかった。

 もちろん甘酸っぱい思い出なんぞない。恋愛なんて生活と精神に余裕がある人間だけがすればいい。生憎私の人生に余裕はない。



 私の人生は、多分母と姉から離れて漸く始まるのだ。


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