表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

1万ポイント超え

その令嬢が王妃になるのならこちらの人材はもう貸せません

作者: リーシャ
掲載日:2026/08/23

 数年前、王子の婚約者として次期王子妃に相応しい令嬢を選ぶための習慣が始まった。王子達がある程度大きくなった頃に行われるそれは、緩い後宮の候補バージョンみたいなものかと思った。


 権力争いがあるにはあるが、己には関係ないと今回の余り物枠に添えられることになり父にどちらでもいいと言われたのでそこが物流の発祥になったり、情報の最先端だと思っているからこそ参戦するフリをした。


 選ばれるとは思わない、ならない前提のイベントのようなものだと認識している。あながち間違いではない。このイベントは王家が利になる令嬢を選ぶものであり、滅多に外に出ない王族たちと貴族とのやり取りを緻密に取るための処置でもある。ますます後宮制度っぽい。


 行き遅れになって怒りや恨みを買わないように滑り止め用に、他の王族や他国の王族が同じく滞在して親睦を深めるために自国の王家とのやり取りは禁止されていない。

 他国の王家の人間は滑り止めである前提であることも暗黙の了解であるため、自国に持ち帰れなくてもそれはそれと割り切る。言うなれば、この国の王子と王家に優先権がある集団お見合いイベントみたいなものだ。


 シュメリーは王子にも他国の王子にも興味はないと傍観者の体で観察役に徹する。そうしていると今回の有力候補などの令嬢、王子がことさら丁寧に扱っている人間がわかるようになった。


 こちらは色物扱いなので空気みたいに誰も目を合わせようとしないところが地味に面白い。面白みのあることだから存分に楽しんでいる。

 楽しんでいるのは楽しんでいるのだが、満喫しているわけではない。というか、日に日に扱いが悪くなっているのが目に見えて、ちょっとストレスが蓄積している。


 最近は部屋が荒らされることが起きたので防犯上、盗みが起きてしまう前にやっておいたので品物がどこにあるのかわかる追跡魔法で警備と共に向かえば、王妃の部屋に飾られており呆れた。

 あれは自分の物だと伝えても贈られた物なのであり得ないと突っぱねられて、その主張には無理があるのではないかと辟易する。

 それならばこちらとしてはもう返却は望まない。向こうが突っぱねた事実を公的に記録させて、部屋に戻った。クスクス笑う令嬢たち。彼女たちの持ち物にも自身の部屋から盗んだ私物があるのだろう。


 後悔しても知らない。回収をお願いしたのに無視した方が悪い。やられたらドン返しである。こちらも底意地の悪い顔を浮かべて、魔法を起動した。

 彼女たちは魔道具と知らずに持っているのだろう。親切にそれは魔道具なのですよ、なんて被害者が教えるわけがないと想像力が欠如していたことを悔いるといい。

 作業をしながらどうしようと思っているにはいるが、まだ動かない方がいいだろう。他国の王子や高位貴族も招かれている。有能な令嬢を得られる機会なので平等に与えられていて、選ばれなかった時の滑り止め扱いができる。


 集団お見合いであることを思い出しながら、彼らはこのことを把握していながらどうにかする気はないのだとわかった。ここまでわかったのであとは辞退して帰るだけだ。その前にやっておくことがたくさんあり、必要がある。やれやれ、帰る準備も楽ではない。


 もうすぐ婚約者を選ぶ日だ。その日から数日間令嬢たちは同じく滞在を許されている王子たちと交流して、婚約を結んだりする。誰を選ぶのかはすでに噂されている。シュメリーへしつこく強く当たる令嬢が有力な見方。

 王太子と話しているのを見たが、見た目や外側だけのお淑やかさを見ているし高位貴族で後ろ盾もあるために、決まりだと言われている。今は本命の者たちの交流が盛んになっていた。


「ふう」


 令嬢たちに見つからないように図書室に向かうと王子の一人が待っていた。お待たせと気安く話しかけると、彼もお疲れ様と笑う。


「すでにこちらは受け入れる準備を終えている」


「ありがとう」


「いや、君みたいな人がうちに来てくれるのなら、きっと力になるしこちらの国も大きくできる」


 小さい国の王子が優しげな気質を見せて、こちらを労る。この国の傲慢な王子や王家なんかよりもずっと好感触。そうすれば、シュメリーは動かなかったのに、じっと動かずに済んだのに。本をペラペラとめくりながら、パタンと閉じた。


「皆のもの、今宵は私の伴侶となる女性が選ばれる!」


 そうして、来るエックスデーを迎える。シュメリーはそれをスパークリング片手に薄目で眺める。新作のスパークリングは美味しい。今後も伸び代があると納得して、再び王太子たちを見上げる。


 あんなふうに大々的に言っているが、彼が本当にやらなければならなかったもの、見なくてはいけなかったものは他にあった。それが見えないのなら、もう落ちるところに落ちるしか無いのだろう。


 この後この国がどうなるのか、なんてことはわかっているが。祖父はきっと新聞で結末を見て、また悲しそうに笑うのかもしれない。この国に住むことになったのは祖父が商いを始めた時。

 当時の第二王子と出会って、ここで商いをしろと当時の若き男に誘われて住み着いたのだと懐かしそうに語っていたのを思い出す。それを聞くと最後には「今の王家は」と尻すぼみになる。


「エイトー侯爵家のレディリア・エイトー令嬢を選びたいと思う」


「わあ!殿下……!」


「おめでとうございます!」


 すでに半年前から噂されていたことなので、ネタバレされていたようなもの。面白みもなにもない。五日前、シュメリーの部屋の前に腐った果物を捨てることを指示したと、到底思えないような笑みを浮かべる女。取り巻きたちにもかなりやり込められた。


 様々な嫌がらせがメリーゴーランドのように回って、祖父とのやり取りをしている手紙を回想する。


「すまなかった……か」


 すでに祖父の知る人情に溢れた先代国王は亡くなっている。その息子の国王とも小さい頃からの知り合いだったが、その人が年頃になると平民風情がと声をかけられて罵られたのだと、シュメリーの父が悔しそうに言っていた。それでも、祖父は友人が作った国なのでもう少し見たいと、移り住むことをしなかったのだが。


 二日前に爵位返上をした。先王からの媚で爵位を得たと貴族から言われ始めた父がうんざりだと提出したのだ。もうすぐ貴族令嬢としての役目も終えるのでちょうどいいと、最後の入場をしてからこの国を去る。


 散々イジメ倒してきた女が王妃になるのならば、うちの家は酷い嫌がらせをされて結局潰されるのは目に見えている。使用人たちからも、王子の発言の中でも我が家の話題が出るとでしゃばりという令嬢の発言を咎めたり止めたり、諌めたりしなかったと聞いていた。

 それでもう十分だろう。次期王の言葉は次世代に響く。ただでさえ、うまくいっている商売を妬んでいる貴族達からのあたりは昔からある。いつかを怖がり潰されるのならば潔く畳み、綺麗に居なくなるのが王家と国への恩返しだ。


 シュメリーも何年も王家の意向や貴族たちの言葉を聞いてきたから、この国に居続ける気はないと決めている。次の国を探していると、数年前に有能とも聞いたこともない王子が勧誘してきた。

 誘致と言ってもいい。爵位がなくなる平民なのに?と自虐を述べようと見透かした顔で笑って。構わないから、と手招きしてきた。


 なら、その心眼を見越して移動してもいいだろう。父や祖父たちもそこで構わないと言ってくれて、このあとは家族総出で出ていくことになる。


 家族経営をしていたうちは、長いこと王家や国全体に育てていた人材をあちこちに配置していた。王家で言うとメイドや使用人。十年以上前からいる者も今は肩書きが上がっている。料理人は料理長など。王家の教育係だって。


 有能な人材の彼らはうちの自慢なのだが、ここ近年そんな彼らをいとも簡単に解雇するようになった。理由は今目の前で次期王妃とお披露目されている女のせいだ。己の派閥の手の者を捻込みたいという思惑に、王太子が嬉々として願いを叶えてしまうせい。


 貴重な人材をポンポン捨てる人間に仕えさせる気はない。肩書きが上の人間はストップがかかるが、ランクが下の肩書きの場合、翌日には解雇通知が届いている。


 長年働いてきた人間をすげ替える王家にいよいよ、我が一族もこんな国にいられるかと移住を完了しかけている。残るはシュメリーと親と肩書きが上の人材達。小さな頃に転生者として、人材派遣の仕事を提案して形になってから安定していたと言うのに、契約をいきなり切る横暴さには我慢ならない。


 王子と令嬢が自分たちは今幸せですという顔をして、壇上にいる。庭の方に移動すると例の取り巻きたちが後ろからやってきて、使用人たちに水入のバケツをかけるよう指をさした。バシャア!と盛大にかかる大量の水。


 ザバザバとドレスから流れる水で、着ているものが重くてたまらない。最後の最後までやってくれる。髪をかきあげて、一年前から彼女たちが愛用している香水がふわりと風に乗ってやってくると内心憐れんだ。彼女たちは二度と簡単にそれをつけられなくなるのだと。


「あ、ねえ!待ってくれ」


 何も言わずに進むとイエルが駆け寄ってきて、部屋に寄るように無理矢理引っ張っていくと彼の国からの使用人に指示をして、着替えさせられた。


「強引」


「そのままで帰るとご両親が悲しむ」


 正論なのでぐうの音も出ない。そこからはスピーディーにことが進む。王室に潜ませていたスパイたちを回収して、この国から出た。

 王家にとっては今までの生活ができなくなるような人間ばかりなので、私生活も拙くなり次の日はパニックになるだろう。彼の国に着くまで後数日かかる。窓の外を見ると朝日が出ていた。


「ようこそ!」


 先んじて帰っていた彼から入国した途端、ぴっちり横に張り付かれる。彼を伴ったまま両親たちと再会して抱きしめ合うと、この国に定住するため忙しく働き出す。


「ねえ、これはどこに置く?」


「王子がさらっと品出しするってどうなの?」


 イエルが自然と風景に馴染んでいた。従業員たちが軽く笑う。このやり取りも定番になっている。もう少しで営業を再開しようと話し合っている最中、手紙が送られてきた。送り主は今まで住んでいた王室と王から。彼らからの手紙は分厚く、まるで質問状というか質問だらけの、ただの問いかけをするだけのものだ。


「大量に人材がいなくなって。人材派遣元がお父さんだったって今になって気付くって」


 使用人や下働きがどこから来ているのか、上の人間は考えたことなどないのだろう。焦りが文面からも伝わってくる。父も爵位返上、のちに他国に移動したことで人材が一気にごっそりいなくなったことが調査でわかり、こうして送ってきたのだ。


「おじいちゃんがこんなに次々働き手を理由なく解雇するのは何故かって書いた手紙、あったのに無視しておいて」


 祖父は孫が時間をかけて使用人たちを育てて、王家に報いるためにと人材を彼らへ貸してくれた気持ちを踏みにじるあちらに、しっかり抗議文を送った。しかし、平民と蔑む王と王室は送り主を見た途端、中身を見ることなく捨てたことがすでにわかっている。


 ここまで行くともうダメだと諦めたのはその頃、孫が貴族たちに虐められていると知って見捨てることに決めた。そして、どうなろうとも助けないことも。祖父にとっては一世一代の決断だ。


「で、送ったの?」


 王家から送られてきた手紙の件をイエルに教えて、結末を早く聞きたいと聞き返してくる。


「送った送った」


 令嬢が望むままに従業員を解雇をし、王太子が選んだ者はさらに孫をいたぶりました。そんな方が今後、王妃になるのならこちらの人材はもう貸せません。そちらが解雇しないような、ご満足させられる有能な人材はおりませんので。


 つまり、貸せない、である。


 王家の返答はこの手に今ある。しかし、必死にどんなランクの使用人でもいいから雇用したいと媚びへつらう、低姿勢な言葉が並ぶ。


 今まで先王にすり寄る寄生する虫と蔑んでいた彼らが、嘘みたいに腰を低くしている。祖父には悪いが計画通りな終わりだった。彼らが寄生しているとうちを悪く言っているのを聞いた時、寄生させてやるのだと闘志がメラメラ燃えたのが理由だから。


 シュメリーが小さい頃から様々なものを作らせてきたおかげで、今の王家はさらに祖父世代から大きくなった。王家自慢の光るステッキを作らせたのもシュメリーである。


 王家の人間や、貴族たちが大好きなステッキはうちの魔石を使わないと光らないので、今後古い型になることにより新しくなる新作の、効率がいい魔石を嵌めても光らない。もう二度と光らないから周りに自慢できない、ただのステッキになってしまう。

 ステッキは王太子が特に気に入っていて、最低な次期王妃である令嬢もお得意様であった。香水も作っており、過去に住んでいた国に輸出するときは簡単に買えなくなるほど税金をかける計画も、すでに頭に描かれていた。シンプルに旨味がある国ではないのだ。

 手紙を読んだ祖国の人間たちは誰の責任にして、誰のせいにするのか楽しみだ。それと、令嬢や王妃の部屋に持って行かれた方の盗まれた私物には、映像を記録するものが仕掛けられている。


 今も彼らの動向が筒抜けなので、情報を得続けられるわけだ。返してほしいと頼んだのに放置したのが悪い。


「あんなのが王妃になったら、うちの有能な人たちが勿体無い。宝の持ち腐れなの」


 王子イエルに説明すると、うちがすでに大商会でありシュメリーが開発に絡んでいたことを調べていたらしい男はうんうんと頷く。


「そして僕は婿入りだ」


「それはまだ審査中」


「ええ!君に一途だったろ!?」


 驚くフリをするわざとらしさに笑いつつ、光るステッキの新作を相手に向けた。


「あなたの人件費は高そうだし、乗っ取りも考えられるし」


 つらつらともう隠す必要がないことを伝える。


「それは穿ち過ぎる。お買い得だぞ?」


 婿入りをする時に爵位も持ってくるので、商売の幅が広がるんだぞ?とプレゼンしてきて耐え切れず吹き出す。

 シュメリーと彼が出会った時、彼もまだ子供であったと思い出す。確かに一途なんだよなぁと数々の出来事が浮かんでくる。利発で賢くて自国を大きくしたいという、シュメリーと似た気質を持っていた。


「家計簿もつけられる王子は確かに希少価値は高いかもね」


 選び間違え続けているどこぞの王族よりは、単価は確実に高い。


「指輪はうちで買ってくれるの?」


「流石に筒抜けはムードがないから他店で買うが?」


 さらりと返してくる内容にまさかそうくるとは、と反動で赤くなる顔に手応えを感じた彼がすでにデザインしていた高そうなリングを差し出すのを、白旗をあげて手を差し出すしかなかった。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。王家が気付けば引き続き人材を高額で貸してたんですけどね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヒロインの滞在する部屋から盗まれてい王妃に献上されていた魔道具とはなんなのでしょうか? しかも遠隔で起動させることができて、はためには何も起きていない魔道具? 何かの伏線になるのかと思いましたが、シン…
作者様、 いつも面白いお話をありがとうございます♪ ただ、少し苦言を… 一時期、読みやすくなっていたのですけれど、今回はちょっと…… 失礼ですけど、単語や熟語の用法の間違いや、一つの文章が長すぎて、…
選民思想リアルですね。貴族の旧の人たちが新しく貴族入ったら元平民(商人)だと見下したくてクスクス笑って嫌がらせ…うーん…。どこの世界にもあるからあるあるだけど、やり返し鮮やかですっきりでした。文章もA…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ