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あなたのとなり

外に出ると、空は夕暮れ色に染まっていた。

遠くからかすかに聞こえる蜩の鳴き声はどこか涼しく、しかし頬を撫でる風は生暖かさを持っている。


「……前から思ってたけど、華もスマホ持てばいいのに。お金出すよ?連絡つかないと心配だし」

「私はいいよ! 払ってもらうの悪いから!」


麦と別れ、モキドキパン屋を後にした二人は、

夕暮れ色に染まる住宅街を歩いていた。


「それに麦さんとの連絡は冷が取ってくれるじゃん?」

「さっき交換したからできるけどね」


何気ない会話をしていると、

冷はあることを思い出し顔を上げる。


「そういえば、戦ってる時に言ってた続き…まだ聞けてなかったよね」


言われて華はビクっとなり、ぎこちなく笑った。


「え、えへへ……なんのことかな?」

「華」

「はいっ!」


冷の真顔に、華はぴしっと背筋を伸ばした。


「なんで機嫌悪かったのかなー?」

「えーっと……」


誤魔化すように、色んなポーズを瞬時に取る華。

だが、隣から向けられる冷の視線に気づき、観念したように唇を尖らせた。


「朝、スマホ忘れていったよね? 届けに行ったら、知らない子といるの見かけてさ。邪魔しちゃ悪いかなって……」


顔を合わせないように、華はよそを向きながら話している。


「べ、別に嫉妬じゃないしー? ただ気になっただけだしー?」

「友達だよ」


対する冷は、冷静だった。


「中学校の頃の友達。偶然会って話し込んでたんだよ。そしたら、美味しいパン屋さんがあるって聞いてさ」


「あ、そ……そうだったんだ!」


華の表情の緊張が、だんだんとほどけていく。

よそを向いていた顔を、そっと前に戻した。


「じゃ、じゃあ早く言ってよ!」

「聞かれてないから」


さらっと答える冷は、華の顔を覗き込む。


「……嫉妬してたの?」

「ち、違うってば!」

「顔、赤いよ」

「夕焼けのせい!」

「ふーん」


じっと見つめてくる冷に、華はたまらず顔を逸らした。


「もうっ、近い近い!」


「華って、意外と独占欲強いんだね」

「そ、そんなことないし!」

「ふーん。じゃあ他の子と仲良くしてても平気なんだ?」

「それは……」

「それは?」

「……」


一瞬の沈黙。


「やっぱり嫉妬じゃん」

「ぐっ! 違うからぁ!!」


全力で否定する華は、手をぶんぶん振っていた。

いつもの調子で冷静にからかう冷は、歩き出した華の後ろをついていき――そっと右手を握る。


「えっ?!」

「帰りに駅前のケーキ屋さん行かない? 何か買って帰ろう?」

「あ……う、うん」


突然手を握られ、華は少し顔を真っ赤にしながら歩き出す。

そんな様子を横目で見ていた冷は、微笑ましそうに笑った。


ふと、冷の脳裏に引っかかるものがよぎる。


――私は……!


戦闘の最中に、華が放った一言。


(あれは……華は、何を言いかけてたんだろう)


嫉妬とは別のことを、言いかけていたような気がする。

けれど気のせいだろうと考え直し、冷は華と手をつないだまま、染まりゆく街の中へと溶け込んでいった。


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