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聞き人

一方その頃、富谷邸にて。


「………」


モキドキパン屋から帰ってきた後、しばらくして冷はクリスチャントに頼まれ、再び買い出しに出かけた。

華も誘われたが、ソファーでふて寝を決め込み返事もせず、富谷邸にとどまったままだった。


「……桐灰様」


リビングにやってきたクリスチャントが、テーブルに紅茶を置く。


「起きていらっしゃいますのでしょう?」

「……うん」


背中を向けたままの華が、短く返事をする。


少し笑みを浮かべたクリスチャントは、対面に腰かけた。

紅茶を手に取り、上品な動作で口に運び、再びテーブルへ戻す。


「お嬢様が心配なさっておりましたよ」

「……」


優しく尋ねるクリスチャントに、華は答えなかった。


「ため込むばかりでは、体に悪いですよ」

「……」


クリスチャントが語りかけても、返答はない。


「なにかございましたか?」

「……うん」


ようやく華が口を開く。


「喧嘩でございますか?」

「ううん」


華の反応に当てが外れたクリスチャントは、探るような視線を向ける。

再び話しかけようとした、そのときだった。


「……さっき、携帯届けにいったじゃん」

「朝のことですね」

「見つけて、声を掛けようとしたらさ」


途中で言葉が途切れる華。

しばらくして、再び口を開いた。


「知らない子といるの見かけて……声かけて、割って入るようなことはしちゃいけないかな、って……」


華の声は、だんだん細くなっていった。

対面で聞いていたクリスチャントは、優しい笑みを浮かべている。


「そうでしたか」

「…変、かな」


クッションを抱えたまま、恐る恐る華はぼそりと言った。対して、クリスチャントは小さく首を横に振る。


「いいえ、そんなことはございません」


答えた後、クリスチャントは目を細める。


「どうしたらいいんだろうね……」

「気持ちというのは不思議なもので、目をそむけようとすればするほど、追いかけてくるものでございます」


手に持ったカップを少し揺らし、紅茶の香りを楽しみながら、クリスチャントは優しい口調で続けた。


「疑問を持つということは、答えは近いですよ」

「そうなのかな……」


その時。

華の目つきが、変わった。


「桐灰様?」

「影喰が……いる!」


ソファーから飛び起き、窓の外を見る。

クッションを置くと、華はリビングを飛び出し、玄関へと走っていった。


「お嬢様にご連絡しなくてよろしいのですか?」


後から追いかけてきたクリスチャントが尋ねる。


「……今回は、一人で行く!」


そう言って華は玄関で靴を履き、富谷邸を後にした。





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