表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

なに、これ

「んー教育委員会…調査担当?」


校門を潜り敷地内を通り、来客用玄関までやってきたのはよかった。しかし、待ち受けていたのは学校の事務員である。60代ほどの女性で顔もきつく目付きも鋭い。薄っぺらい嘘など、その鋭い眼光で貫きそうなほどの圧が華と冷に立ちはだかっていた。


「来るという連絡は、受けておりませんが?」

「おかしいですね……事前に連絡はさせていただいておりまして」


冷は少し困ったように眉を下げながら、手元のスマートフォンを操作する。


「昨日の夕方に、教育委員会の学校支援課からこちらの学校へ連絡が入っているはずなんですが……」


画面を確認するふりをして、小さく息をつく。


「もしかすると、校長先生か教頭先生で止まっているのかもしれません」


そして顔を上げ、穏やかな声で続ける。


「本日は、市内の学校を順番に回っている途中でして。生徒指導関係の確認と、校内環境の簡易チェックを行っております」


胸元のホルダーに入ったカードを軽く見せる。


「お手数ですが、校長先生か教頭先生にお取り次ぎいただけますか?」


「まぁ……そういうことでしたら、来校者カードをお持ちいたします。首から下げて校内をお回りください」

「ありがとうございます」


事務員はそう言うと、事務室の奥へ引っ込んでいった。

数分後、首から下げるタイプの来校者カードを二枚持って戻ってくる。


「こちらになります」


冷はそれを受け取り、軽く一礼する。


「助かります」


隣で見ていた華も慌てて頭を下げた。

事務員が立ち去るのを確認してから、華が小声で囁く。


「すごー、めちゃそれっぽい……」

「適当だよ」


冷は苦笑する。


その後、事務員から渡された来校者カードを首から下げ、華と冷はついに学校の校舎の中へと足を踏み入れた。


スリッパに履き替え、廊下を歩く。廊下の奥から、教師の声とチョークが黒板を叩く音が聞こえてくる。

授業中の静かな空気が、校舎全体に広がっていた。


「影喰の気配感じる?」


隣を歩く華に、冷が小声で尋ねる。


「うん、この上から感じる!」


華は天井の方を指さした。


「上かぁ」


二人は階段を上がり、二階へ向かう。

廊下に出ると、奥の教室から賑やかな声が聞こえてきた。


笑い声と、ざわめき。

そして何かを煽るような声。


「授業してるみたいね」

「あそこだ!」


華が指さす。


「えっ、あそこって……あの奥の教室?」

「うん!」


一瞬、冷は足を止める。


だが、華は迷いなく歩き出した。その背中を追い、冷も恐る恐る廊下を進む。

奥の教室の入り口には、理科室と書かれていた。

引き戸のドアにある小さな窓から、中をそっと覗き込む。


――二人は目を疑った。


教室の両側に、生徒たちが密集している。まるで壁を作るように、左右に並んでいた。

その真ん中。

通路の中央に、女子生徒が一人だけ立たされている。


「これ、なにしてるの……」

「なんだろう、わかんない!」


状況が理解できず、

二人はそのまま様子を見る。


そのとき。

生徒の一人が椅子を持ち上げ――躊躇なく、中央の女子生徒へ投げつける。


ガンッ!っと鈍い音。

椅子が頭に当たり、女子生徒はその場に倒れ込んだ。

周囲から笑い声が上がる。


まるでそれが、

面白い遊びであるかのように。


「なに、これ……」


冷は信じられないといった表情で、その光景を見つめていた。


ふと、椅子を投げつけられた女子生徒の顔をもう一度確認する。


「華、あの子って……」

「うん……間違いない。昨日、駅で私とぶつかった子だ」

「なんでこんなことされてるの?」

「わかんないけど……こんなの、許せないよ!」


華の目に怒りが宿る。低くしていた姿勢のまま、ぐっと拳を握る。

そして――立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ