不穏なポップアップと、美濃のデリート
「駆! 見ろ、予のフォロワーが1万人を超えたぞ! 激辛ナチョスを食った甲斐があったというものだ!」
翌朝、鼻の頭を真っ赤にした足利義明が、血圧計を振り回しながら飛び出してきた。一方、天野駆は縁側で、信長のスマートフォンに遠隔で「不穏なプログラム」を流し込んでいた。
「あー、おめでとうございます将軍。でも、信長さんは数字より実利を取るタイプっすから。今、美濃の斎藤龍興さんのアカウント、総攻撃(リアル進軍)仕掛けてますよ」
「なにっ!? 斎藤龍興といえば、予に『パリピ』だの『オワコン』だの抜かしたあの若造か!」
義明は慌ててタイムラインを確認した。そこには、信長が投稿したばかりの、稲葉山城をバックにした不敵な自撮り画像がアップされていた。
美濃:サイバー&フィジカル合戦
美濃の斎藤龍興は、城内で豪華なWi-Fi環境を整え、全国の大名と「オンライン飲み会」に興じていた。
「おい、信長の軍勢が門まで来てるってマジか? まぁいい、あいつのスマホ、俺のハッカー集団がもうすぐ『凍結』させるはずだし……」
だが、龍興の画面に映し出されたのは「接続済み」の文字ではなく、駆が仕込んだ「致命的なエラー:織田信長の覇気が強すぎます」という謎の警告文だった。
「なんだこれ!? 駆とかいう名もなき側近の設定か!?」
門を突き破って現れた信長は、刀を抜く代わりに、手に持った端末を高く掲げた。
「龍興! 貴様の投稿はすべて『規約違反』で通報済みだ! 貴様のフォロワーは今、俺の圧倒的な『天下布武・プロモーション』によって全員こちらへ寝返ったぞ!」
信長が「デリート(総攻撃)」のボタンを押した瞬間、斎藤軍の兵士たちのスマホに一斉に【織田家へ移籍すると、今ならログインボーナスで米3年分】という通知が届いた。
「あ、俺、織田さんに乗り換えます」「俺も」「斎藤さんのサロン、月額高いし……」
戦わずして崩壊する斎藤軍。龍興は「嘘だろ……俺のインフルエンサー人生が……!」と叫びながら、スマホを握りしめて城からログアウト(逃亡)していった。
京都:義明の嫉妬と駆の「ログ」
「駆! 見たか! 信長が美濃を占領しおった! あ奴、これでフォロワーがさらに倍増ではないか! 予より目立ってどうする!」
京都の義明は、信長の勝利報告に「いいね」を押すべきか、ブロックすべきか迷いながら、血圧を190まで上げていた。
「いいじゃないっすか。信長さんが勝てば、将軍の権威も『シェア』されるんですから」
駆は適当に答えながら、自分の画面に表示された「管理者ログ」を見つめていた。そこには、信長が美濃を手に入れた瞬間に自動生成された、一筋の不気味なテキストがあった。
【ログ:歴史の整合性を確認。織田信長、美濃を『岐阜』に改名手続き中。……警告:将軍・義明への『殺意』が15%上昇。】
「……あーあ。信長さん、美濃を手に入れて、いよいよ将軍の通知が『うるさい』って感じ始めてるな」
駆は、怯える義明の背後で、そっと「サイレント・モード解除」のコマンドを打ち込んだ。
「将軍、次のステップっすよ。信長さんに『岐阜』って名前をつける許可を出す代わりに、もっとデカいスタンプ……じゃなくて、副将軍の交渉、詰めちゃいましょう」
「うむ! 予の許可なくして『岐阜』などとは名乗らせぬ! 予の権威を見せつけてやるのだ!」
嫉妬に狂う将軍と、その裏で歴史のコードを書き換え続ける側近。
物語は、信長が「上洛」という名の「システム再起動」を京都に仕掛ける、激動の第2章へと突入していく。




