激突!命がけのグルメリポート
御所の大広間。
そこには、加工アプリを通さない「リアルな殺気」を放つ織田信長が座っていた。
「……で、将軍。これが、俺がログインできなかった間に、貴様が楽しんでいた『懐石料理』か?」
信長が突きつけたのは、自身のスマホ画面。そこには、義明が数時間前にアップした『今日は自分へのご褒美w #室町ラグジュアリー』という、金箔まみれの豪華な食事画像だ。
「ひ、ひぃっ! それは……その、フォロワーへのファンサービスというか、その……」
足利義明は、目の前の信長が放つ覇気に押され、心臓がBPM180のドラムロールを刻んでいた。あまりの恐怖に、自慢の血圧計はすでに測定不能の「Error」を表示している。
「あー、信長さん、そんなに怒んないでくださいよ。将軍、映える写真撮るために3時間も並んだんすから」
後ろで、天野駆が空気を読まずにポテトチップスを差し出す。信長はそれを一瞥し、無言で自分の懐から「南蛮渡来の奇妙な缶」を取り出した。
「将軍。貴様は幕府の権威がどうとか、フォロワーがどうとか言っているが、この『時代の最先端』を理解しているか?」
ドン、と置かれたのは『デスソース入り・超激辛ナチョス』
「これは、南蛮の商人が『最もバズる食材』として持ってきたものだ。これを食べ、悶絶する姿をライブ配信し、10万いいねを稼いだ者こそが、これからの天下人に相応しい……。さあ、食え。将軍」
「な……毒見もなしにか!? 予に、このような真っ赤な物体を食えと言うのか!」
「毒ではない。『コンテンツ』だ」
信長がスマホの「ライブ開始」ボタンをポチッと押した。画面には瞬く間に数万の視聴者(大名や庶民)が集まり、コメント欄が加速する。
徳川家康:『うわあ、信長さんマジすか。これ死ぬやつですよ』
上杉謙信:『義なき辛さ。毘沙門天も水を用意するレベル』
武田信玄:『(ガビガビの画質で)……草……』
「駆! 駆! どうにかせよ! 予は辛いものは苦手なのだ! 胃腸が、予の繊細な胃腸がデリートされてしまう!」
義明が泣きつくと、駆はため息をつきながら、そっと義明の耳元で囁いた。
「将軍、チャンスっすよ。これ完食したら、信長のフォロワーをごっそり奪えます。……ちょっとだけ、僕が『味覚のパッチ』当てときますから」
「味覚のパッチ……?」
駆は、隠し持っていた謎のタブレット端末で、義明の喉元に向けて不可視のレーザー(?)を照射した。これが駆の持つ謎能力の一つ、「感覚データ・オーバーライド」である。
「よし。これで将軍の舌は、今だけ『石ころ』と同じ感度になってるはずっす。いっちゃってください」
義明は意を決し、真っ赤なナチョスを口に放り込んだ。
「……ん? ……あれ? 辛くない。というか、味がせぬ! 砂を噛んでいるようだ!」
強気になった義明は、次々とナチョスを口に運び、カメラに向かって高笑いをした。
「はーっはっは! 見たか信長! 予にとっては、この程度の辛さ、赤子の手をひねるようなものよ! 幕府の力、思い知ったか!」
画面上の「いいね」が爆発的に増えていく。信長は目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。
「……まさか、これほどの激辛を、無表情で……!? 貴様、もしや本当に神仏の加護を得ているのか……?」
しかし、その時だった。駆が「あっ」と声を漏らす。
「……あ、すいません。パッチの持続時間、設定ミスりました。今、切れました」
「………………ぎゃああああああああああああああ!!!」
一瞬の沈黙の後、御所に義明の断末魔が響き渡った。
顔は真っ赤を通り越して紫色になり、目からは滝のような涙、鼻からは火が出るような熱気が噴き出す。
「水! 水を! 通報だ! 織田信長を公序良俗違反で通報せよぉぉ!」
義明は床を転げ回り、そのまま気絶した。
だが、ライブ配信のコメント欄は、かつてないほどの盛り上がりを見せていた。
視聴者A:『最後のリプライ最高w』
視聴者B:『将軍、体張るなぁ! チャンネル登録したわ!』
信長は、気絶した義明を見下ろし、フッと不敵な笑みを浮かべた。
「……面白い。気に入ったぞ、将軍。この『狂気』、天下に晒し甲斐がある」
かくして、義明の血圧とフォロワー数は、過去最高値を更新するのだった。




