比叡山デリート!〜最強サーバー、炎上す〜
「おのれ信長……! ついに、あそこまで……! 神仏の加護という名の『運営権限』すら恐れぬというのか!」
京都、二条御所。
足利義明は、手元の端末でライブ配信されている「比叡山延暦寺」の光景を見て、腰を抜かしていた。画面の向こうでは、数千年の歴史を持つ宗教界の超巨大サーバー「比叡山」が、文字通り紅蓮の炎に包まれている。
「駆! 見ろ! 信長が、全僧侶のアカウントを物理的に削除しているぞ! #比叡山炎上 がトレンド1位だ! 不謹慎すぎる、不敬すぎるであろう!」
義明の血圧計はもはや「測定不能」の文字を出し続け、バイブレーションの振動で畳の上を独りでに走り回っている。
「あー……信長さん、マジっすね。『神も仏もログインしてこないなら、サーバーごと更地にするわ』って、全チャンネルに同時配信してますよ」
天野駆は、御所の屋根の上で、比叡山から立ち上る煙を直接眺めながら、自分専用の黒い端末で「パケット」を回収していた。比叡山が燃え落ちる際、そこから膨大な「古文書の電子データ」が空中へ霧散しているのだ。
比叡山:宗教ギルドの終焉
比叡山の僧侶たちは、自分たちの「聖域」を過信していた。
「我が山は仏のファイアウォールで守られている! 信長ごときがハッキングできるはずも……」
しかし、信長はそんな論理を「物理」で粉砕した。
「……祈りで回線が繋がるなら、苦労はせぬ。貴様らの『特権階級』という名のバグを、今ここで修正してやる」
信長が命じると、織田軍の「火縄銃ユニット」から一斉に火が放たれた。それは、単なる火ではなく、古い因習を焼き尽くす「強制初期化」の炎だった。
駆の暗躍:失われたデータの回収
「(……お、出てきた。比叡山の地下サーバーに眠ってた、足利家の裏ログだ)」
駆の指先が、空中に舞う光の粒子を捉える。
義明は知らない。かつて室町幕府がどのようにしてこの国の「管理権限」を手に入れたのか。その歴史の根幹が、この比叡山に隠されていたのだ。
「駆! 何をボサッとしておる! 早く、予の声明をアップせよ! 『信長、お前は永久追放だ!』と、大声で、全世界にだ!」
義明が泣きながら叫ぶ。だが、駆は端末から目を離さずに言った。
「将軍、それ逆効果っすよ。今、信長さんにメンション飛ばすと、次のターゲット、ここ(御所)になりますよ?」
「ひ、ひぃぃっ! ……あ、あぁ……でも、誰かが言わねば……予は、将軍なのだから……」
義明の承認欲求と恐怖心が、激しくせめぎ合う。
その時、駆の端末にデータの復元完了を知らせるプロンプトが出た。
【データ復元完了:足利家秘伝・「結界(封印)」の解除キー】
「……へぇ。将軍、意外といいもん持ってたんすね。足利家って、ただの飾りじゃなかったんだ」
「駆? 何をぶつぶつ言っておるのだ」
「いや、別に。……将軍、そろそろ本気で覚悟したほうがいいっすよ。信長さん、比叡山の『デリート作業』終わったみたいっす。次は……あなたの『退会手続き』に来ますから」
画面の中の信長が、カメラをこちらに向け、ゆっくりと「中指」を立てた。
室町幕府という名のアプリが、ついに「サービス終了(強制終了)」のカウントダウンを始めた。




