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禁裏の「いいね」は菊の香り





「もう、武士フォロワーどもには頼らぬ! 予には、もっと高次元のバックアップがあるのだ!」




足利義明は、充血した目で叫んだ。信長は勝手に「岐阜」と名乗ってブランド化を進め、地方の大名たちは勝手に軍事アップロードを繰り返している。幕府のサーバー(権威)は、今やパンク寸前だった。




「駆! 予はこれから朝廷へ行く。帝にお目通りし、幕府公式アカウントに『認証済み(ブルーバッジ)』よりもさらに上の『菊紋・ゴールドバッジ』を付与していただくのだ! 権威のインフレで、野蛮な大名どもを黙らせてやる!」




「あー……朝廷すか。あそこ、システムが古すぎて、まだフロッピーディスクとか使ってるって噂っすよ。将軍の最新デバイス、繋がりますかね?」




天野駆は、御所の庭でWi-Fiのアンテナ感度を調整しながら、気だるそうに答えた。




京都・禁裏:アナログの極致




義明が訪れた朝廷は、静寂に包まれていた。そこには、SNSの通知音も、プロセッサの駆動音もない。


「おぉ……これだ。この『オフライン』の静けさ。これぞ権威よ」




義明は、公家たちが紙のスクロール(物理スクロール)を広げ、筆で手書きのログを記録している様子を見て、思わず背筋を伸ばした。しかし、そこにいた公家の一人が、義明に一枚の和紙を差し出した。




「将軍様。帝よりのメッセージでございます。……あ、QRコードはこちらに」




「QRコードだと!? アナログではないのか!?」




見れば、墨で丁寧に書かれたQRコードがそこにあった。義明が震える手でスキャンすると、画面には




【官位授与:1回につき、金10,000枚の投げ銭(寄付)が必要です】




という無慈悲な課金画面が表示された。




「な、な……っ。朝廷も、結局はマネタイズ(集金)か! 予の窮地につけ込んで、高額な課金を要求するとは!」




「まぁまぁ将軍。朝廷も、屋根の修理代(メンテナンス費用)に困ってるみたいっすから。ここでドカンと投げ銭(献金)すれば、信長も手出しできない『公式・関白推し』のステータスが手に入るかもしれませんよ」




駆は、公家たちの懐にこっそりと最新の「スマート扇子」を配りながら、朝廷のネットワークに自分のバックドアを仕掛けていた。




義明の策と、駆の「権限代行」




「よし、駆! 予の全財産……いや、幕府の予備費をすべて朝廷にブチ込め! その代わり、全国の大名に『将軍に逆らう者は、即座にアカウント永久追放(朝敵)』とするみことのりを全世界に同時配信していただくのだ!」




「了解っす。……あ、じゃあついでに、帝の名前で『信長、お前ちょっと調子乗りすぎ。一度京都に来て、将軍の生配信のゲスト(共演)に出ろ』っていう強制フラグも立てときますね」




駆が朝廷の古いサーバーに自分の端末を接続した瞬間、画面には【管理者権限:朝廷】という文字が点滅した。




その数分後。




日本中の大名たちのスマホに、これまでにない




「神々しい通知音(雅楽)」




と共に、一斉通知が届いた。




【勅命:全大名へ。第15代将軍・足利義明を『推し』に設定せぬ者は、非国民(ブロック対象)とする。また、織田信長は速やかに上洛し、将軍の『踊ってみた』動画にコラボ出演せよ】




「はーっはっは! 見たか信長! 見たか各地の野蛮人ども! これが朝廷という名の『最高ランク・インフルエンサー』の力だ!」




義明は、血圧が安定したのか、高らかに笑い声を上げた。


しかし、その通知を受け取った岐阜城の信長は、引きつった笑みを浮かべ、スマホを握りつぶさんばかりの力でこう呟いた。




「……面白い。朝廷を『MOD(改造データ)』として使いおったか、義明……。ならば、俺は実力で、そのサーバーごと乗っ取ってやるまでだ」




義明が朝廷を利用したつもりが、逆に信長の「リアル略奪欲」に火をつけてしまったことに、まだ誰も気づいていなかった。

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