第十章 田川戦線
坑道に立ち込める硝煙と蒸気の中、僕たちは夜を明かした。
大仁会と炭鉱夫たちが肩を並べ、坑道の入口を守る。
だが、今度の敵は国家そのもの――警察機構と自衛隊の前身部隊だ。
「若旦那、奴ら……本気やぞ」
大田仁が肩を叩きながら言った。
「わかってます。ここで負けたら、街ごと奪われる……!」
◆◆◆
夜明けと共に、重装甲車と機関銃を携えた部隊が進行してきた。
坑道前に築いた簡易防衛線を突破しようと、装甲車のキャタピラが砂利を砕く。
鉄の匂い、土の匂い、硝煙が入り混じり、田川の街は戦場と化した。
「全員! アイテムボックスから鉄板と爆薬を!」
僕の指示に、炭鉱夫たちと大仁会が即座に反応する。
坑道から引き出した鉄板で即席の防壁を築き、爆薬で装甲車の進行を妨げた。
【スキル発動:坑道防衛 Lv.3】
地形と資材を最大限に活用し、防衛効率が大幅上昇
鉄板に跳ね返る銃弾、坑道に響く爆音。
それでも、僕たちは一歩も引かない。
◆◆◆
しかし、戦況は苛烈を極める。
重装甲車は数を揃え、部隊は進撃を止めない。
そのとき、坑道奥から蒼白く光るカワスジニウムの鉱脈が微かに揺れた。
「……そうか、奴ら狙いはこれか!」
「絶対に渡すな!」
僕はスキル【直感回避】と【身体強化】を最大限に使い、爆風と銃弾の間を縫うように移動。
大田仁もスキル【喧嘩上等】で前線を切り裂き、敵兵を次々と無力化する。
◆◆◆
だが、戦いはまだ序盤。
敵の司令官が無線で呼びかける。
「カワスジニウムを奪取せよ。損害は構わん」
どうやら国は、この鉱石を戦略物資として即座に軍事利用するつもりだ。
つまり、田川の街そのものが国家の軍事演習場にされかねない。
「……来たな、本当の戦いが」
僕は拳を握りしめ、坑道の壁に映る鉱石の輝きを見つめた。
「ここで負けるわけにはいかない……田川の未来と、炭鉱夫たちの命を守るために!」
硝煙と鉄の匂いが立ち込める中、田川の戦線は、国家との全面戦争へと突入した。