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壊れたオルゴール

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

最近、仄暗い恋愛が多いのは、そういったラブソングを聞きに聞きまくっているから。

彼奴が昏睡状態になったその日から、あの子は壊れたオルゴールになった。

昔は突き抜ける様な綺麗な声だった。御伽噺に夢見る様なラブソングを幾つも歌って、周りから賞賛されていた。硝子の様な透明感は、多くの人間の口を開かせた。

でも今は……。


あの人が交通事故で昏睡状態に陥った。お見舞いに行ったら、眠り姫の様に瞼を閉ざして眠っていた。違うのは、茨の代わりに沢山のチューブが彼を守っていた事。

貴方が好きだと言っていた声で何度も呼び掛けたけれど、瞼はピクリとも動かなかった。私がキスをしたら、貴方は目を覚ましてくれるの? そんな甘い夢、厳しい現実では起こりえないか。

失望したままに家に帰って、初めてのデートで贈られたオルゴールの螺子を回す。『君の声に似ているから』と言われて贈られた物だった。キラキラしたメルヘンな音が、冷たい部屋の中に響く。それから、それから……声が枯れるまで泣いた。


「久し振りにカラオケに行こうよ」

誘ったのは私からだった。彼奴が居なくなって、日に日に衰えて行くあの子を見ていられなかったから。せめて前まで好きだった歌で、気を紛らわして欲しかった。

彼女は虚ろな表情を無理に歪めて笑うと、静かに頷づいた。

カラオケ店に着いてから、私は彼女に機器を渡す。歌う事を拒絶する様な真似はしなかった。歌うものは元より決めていたかの様に、迷いなく曲名を打ち込むと、マイクを手にした。

聞いた事のない曲だった。曲調はオルゴールの様に繊細で、キラキラしていた。彼女のハイトーンによく合っていて、昔の彼女が戻って来たように思える。けれども……歌詞は……夢見ている様でありながら、何処か仄暗く病んでいた。今の彼女の様に……。

幾重もの変拍子の後に、サビが来る。そして――。

「も゛う゛!!」

サビの一説に思い切りがなりを入った。音割れが空気を割いて、声自体が砕け散った。壊れかけたオルゴールの様に。何処か歪でありながら強く惹き付けられる。

今までの選曲からは考えられない音に、私は思い知る。

あぁ、この子は壊れてしまったんだ。愛しの彼を失って。何もかも。

著作権考えて、相変わらず捻ってるんですけど。

唯一あるのは「もう」ぐらいでしょうかね。

美しくて、不安定で、脆い曲です。


元々、夢見がちでファンシーな曲が似合う歌声でした。

彼が昏睡状態に陥ってからはそれにヒビが入りました。

ハイトーンの絶叫聞いた事あります?

繊細で不安定で病んだ様に聞こえるんですよ。

今の彼女がそうだから、選曲もそうなんです。


帰ってからもオルゴール鳴らして、多分泣いていると思います。

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