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コミカライズ記念SS

 ユラシェはピアノが得意。今日はリオンハールを屋敷に招いての、特別レッスン。

 リオンハールはユラシェに教わりながら、人差し指一本で鍵盤を順々に押していく。


「えぇっと、これがドで、次がレで、ミファソラド……シ?」

「ふふっ。シとドが反対です。ドレミファソラシド、です」

「わかった! ドレミファソラドシだね!」

「なにがわかったじゃ! ドとシが反対じゃ!」


 ユラシェの個人レッスンをそばで見ていたブランドンが、たまらずにツッコミを入れる。

 ピアノに触ること自体が初めてのリオンハールは、パニックになって、目をぐるぐるとさせた。


「えぇーっと、反対って……シレミファソラド?」

「違う! いいか、わしが教えるからよく聞け。ドレソラシドじゃ!」

「さすがおじいちゃん! 強いだけじゃなくて、ピアノにも詳しいんだね」


 リオンハールに褒められて、得意満面なブランドン。

 ユラシェは曖昧に微笑む。


(お祖父様、『ミ』と『ファ』が抜けています……)


 ユラシェはピアノ用の椅子に座ると、リオンハールに優しい笑顔を向けた。

 

「ドレミファソラシドがわからなくても、ピアノの音色を知ってもらえれば、それで十分です」


 ユラシェの白くてほっそりとした指が、銀盤の上を滑らかに滑っていく。

 ピアノの音色が奏でるハーモニーに、リオンハールとブランドンは頬をうっとりと緩ませた。


「ピアノの女神様みたい。こんなに素敵な音、聞いたことがないよ」

「そうだろう。ユラシェよりピアノが上手な者はいるだろうが、人を感動させるという点では世界一じゃ」


 二人が聞き惚れていると、扉がバーンっと開いた。


「ビッグニュースを持ってきました!」


 驚いたユラシェが、指を止める。

 ブランドンは、愛する孫娘の演奏を邪魔されて怒り心頭。部屋に入ってきたカリオスの胸ぐらを掴んだ。


「くだらないニュースだったら、ユラシェと話すのを禁止する!」

「これをくだらないニュースだと言う人がいたら、心が死んでいますよ」


 ユラシェの兄カリオスは、自信満々に微笑んだ。

 胸ぐらを掴んでいるブランドンの手を離してから、丸めて持っていた紙を上下に広げた。


「ジャーンっ!! 可愛いユラシェの恋愛物語が漫画になります!!」

「なんだとっ!?」

「メディリアス家の至宝であり、天上から舞い降りた天使の如く清らかなユラシェ。そんな我が妹を全世界の人々に自慢するために、小説を書いたのです。それが出版社の目に留まり、漫画化が決まりました! これがキャラ絵です!!」

「カリオス、でかした!!」


 飛びつくブランドンと、わけがわからずにキョトンとするユラシェとリオンハール。

 ブランドンはキャラ絵を見ると、顔を輝かせた。


「なんとっ! ユラシェが神々しいまでに美しい!! キラキラしておる! この絵を描いたのは誰じゃ!?」

「一重夕子先生です」

「褒美をとらせよう。鉄道運営会社の経営者である息子に頼んで、生涯鉄道乗り放題券を一重先生の家に送らせよう」

「お祖父様、ナイスアイディアです!」

「次のキャラ絵は……リオンハールか。うむ、ユラシェの相手として良いではないか。合格だ。次は……ヨルン様か。これも合格。次は……マクベスタ!?」

 

 ニコニコしていたブランドンの顔が、一転。怒りで真っ赤になる。


「マクベスタの身長は、185センチぃぃぃーっ!! 許せんっ!!」

「同意です!! まったくもって無意味で無駄な高身長。紙面の無駄遣いです。マクベスタの身長など、五センチでいい!!」

「その意見、まるっと同意じゃ! 顔が良いのも許せぬ! 孤高の一匹狼のようなオーラ、うらやま…じゃなくて、憎たらしい!!」

「同感! マクベスタなど、へのへのもへじ顔でいい!」


 マクベスタの文句を言いまくる、ブランドンとカリオス。

 ユラシェは呆れながら、リオンハールは目をぱちくりさせながら見守っている。


 ブランドンは、最後の一枚であるキャラ絵を見た途端。目を見開き、手をプルプルと震わせた。


「わしの身長145センチだと……。カ、カカ、カリオスっ! 一重先生の家に行くぞ! 185センチに描き直させるんじゃ!」

「嘘はいけません」


 部屋の戸口に立っていたヨルン王太子が、ブランドンをたしなめる。

 コミカライズを祝うために、花束を持って来たのだ。

 ブランドンが、抗議の声をあげる。


「嘘ではないわい! 40センチのシークレットブーツを履いている設定にすればいいんじゃい!」

「そんな高い靴を履いたら、転びますよ」


 どこまでも冷静なヨルンに、ブランドンとカリオスは嫉妬の目を向けた。


ブランドンの心の声(鍛えすぎて、背が伸びる分の栄養が筋肉にいってしまったわしの気持ちなど、ヨルン様にはわからん!)

カリオスの心の声(ヨルン様はサラサラヘアー。いいないいな。私もサラサラヘアーになりたいな!)


 ブランドンとカリオスは、悪いことを企んでいる視線を交わした。


「ふぉふぉふぉ、カリオスよ。一重先生に3000カラットのダイヤモンドを贈って、わしとヨルン様の身長を交換してもらおうと思う」

「私も、一重先生に五つ星ホテルのスイートルーム泊まりたい放題券をプレゼントして、私の天然パーマとヨルン様のサラサラヘアーを交換してもらおうと考えていました」

「こらこら、二人とも。読者を騙すのは良くない。そのままでいいではないですか」


 ギャーギャー騒ぐ、ブランドンとカリオス。ヨルンはそんな二人を宥めながら、部屋を出ていった。

 後に残されたユラシェとリオンハールは、顔を見合わせる。


「賑やかでしたね」

「うん。ボクも漫画にでるのかな?」

「そうだと思います。私の恋のお相手は、あなたしかいないもの」

「わわっ!!」


 嬉しさと恥ずかしさで頬を染めた、リオンハール。

 ユラシェは、リオンハールの両手を取った。

 

「私たちが恋人になるまで、いろんなことがあった。大変なことも、楽しいことも、ロマンティックなことも……悲しいことも。けれど、最後に待っていたのは、とびっきりのハッピーエンド。それをみんなで共有したら、幸せな気持ちになりそうですね」

「そうだね!」


 ユラシェは、リオンハールをピアノの椅子に座らせた。


「弾きたい曲があるという話でしたが……」

「実は……誕生日を祝う曲を弾けるようになりたいんだ。大好きな人の誕生日が半年後で……。半年あれば、弾けるよね?」

「半年後……」


 答えに辿り着いたユラシェは、微笑んだ。

 ユラシェは、半年後に十七歳の誕生日を迎える。


「半年あれば、大丈夫です。歌いながら弾くこともできますよ」

「ボクはピアノ担当で、歌はブランドンおじいちゃんなんだ」

「お祖父様は、すぐに音程を外すから。歌のレッスンをしなくてはですね」


 その日。ユラシェの指導のおかげで、リオンハールは五本指を使って、ドレミファソラシドを弾けるようになったのだった。


本編は完結しましたが、おまけとしていくつか書いていきます。

考えているのは、キスをしないと出られない部屋。そして、ヨルン王太子目線での話です。

お付き合いくだされば、嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

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