何度でもクライマックス断罪劇
恋愛要素ほぼなし。だけれど話外で盛り上がれそうなので妄想で好きに保管してください
本日は一年に四度ある、王家主催の王立学校学生を招待した舞踏会。それの四度目である
煌びやかな王城で開かれる宴であるが、招待客の表情は暗いものが多い。極々一部の、脳天気な刹那主義者だけが楽しそうにしていた
なぜこのような雰囲気なのか。それは遡って今年の最初の、一度目の舞踏会、ならびに二回目の舞踏会に起因していた
今年最初の舞踏会
今年入学の新入生達にとってはデビュタントも担っている大事な宴である
また、優秀であるために貴族の後押しや養子になった平民にとっても、顔つなぎや能力を披露する場である
下級貴族も、平民よりハードルは低くても、似たようなものである。家を継げない者はここで叙爵の可能性を拾わなければ自立すら難しい
上級貴族や裕福な中流貴族等も、この玉石混交の中から玉、または原石を掘り当てなければならない。その程度の審美眼がなければ家は早々に潰れてしまう
と、成人したばかりの子供には大層な初仕事であるけれども。それ故に全員が張り切っていた。これまでは
異変が起きたのは宴もそろそろ開きそうな終盤であった
この国の王族であり、二学年だが生徒会長を務めている素晴らしいルックスと銀の御髪で人を魅了してやまない第一王子が上段から声を上げたのだ
その内容はなんと、今年入学の公爵令嬢にして烈火の姫君と呼ばれる王子の婚約者。その約束を破棄する。というものだった
もちろん令嬢は、なぜかと問う。その二つ名にふさわしい真紅の髪と、切れ長の目尻との間に伝う涙からは、王子への愛が見えるようだ
しかし、王子の答えは冷徹なものだった。令嬢が入学してからすぐに始まったとされる、平民へのいやがらせ。特に王子と同学年であり、推薦で生徒会入りした元平民の男爵令嬢へは苛烈なものだったとし、婚約破棄のうえ、謹慎か自主退学を勧められていた
大事なデビュタントで、ここまでの醜聞をされたのだ。彼女はこれから貴族として生きていけないかもしれない
公爵令嬢は、謹慎を受け入れ去っていった。彼女は見た目に反してとても優しく、平民にも平等に接していた事を知っている同クラスの者や近しいものも同じく去っていった
これだけならば、正義感の強い王子の暴走であり王や元老院がなんとかしておしまい。だと、火の粉のかからない者たちは思っていた
今年二度目の舞踏会、その終盤までは。
公爵令嬢に婚約破棄を突きつけた第一王子は、その時庇ったピンクブロンドの男爵令嬢との婚約をすると大々的に宣言していた、が
またも壇上にて婚約破棄。いや、婚約はできないと。そして断罪すると宣言した
先程まで愛らしく微笑んで友人と話していた男爵令嬢の顔が真っ青になる。そして、何故、と、壇上を見上げることも出来ずに嘆いた
王子は、彼女は追放後も嫌がらせが止まらないと嘘を言った。自作自演で王族を謀った。等を理由に一族もろとも死罪を告げた
男爵の寄親である、この国の宰相にして侯爵の息子が男爵令嬢を会場から連れ出した
恐らく、王族から男爵一家を隠すためだろう。彼女は国一番と呼ばれるほどに優秀で頑張り屋。男爵家も時期に爵位が上がるくらいには王家に献身していたのだ
それと同時に、彼女の友人達と宰相傘下の貴族達も退出していった
今年三度目の舞踏会。二度あることはと身構えはするも、前回は断罪のみで新しく婚約の発表はされていなかったからと
皆、油断をしていた所を突かれた
壇上にて、三度目の婚約破棄を第一王子が発表した
相手は、騎士団長の息子。その婚約者との婚約を、令息有責での破棄を。と
将来の部下であろう騎士科の友人達と話をしていた最中である
ルックスこそ王子には劣るが、幼少より鍛え上げられた身体と、その長身で人気の名誉騎士爵の令息はぽかんとしていた
それもそのはず。王子の護衛として切磋琢磨していた、女性騎士の婚約者が、今は王子の瞳の色のドレスを着せられて肩を抱かれているのだから
王子は語った。実は彼女は騎士になりたくなかったのだと。ただ、剣の才能を見出され騎士団に身売りも同然に入れさせられただけだと。婚約が決まり、漸く令嬢らしく出来るはずが、鎧を着せられたまま。それを強要した名誉騎士は、騎士失格であるから名誉を取り消し、一騎士に落とす。とまで
最後まで聞いた令息は、傅き頭を下げ承っていた
これこそ騎士の鏡だ、と。皆が胸中で称賛した
こうして第一王子は、幼い頃からの護衛であり初恋の相手だった令嬢を手に入れた。一学年の大事な舞踏会を三度も潰して。
そして迎える四度目の舞踏会。第一王子は元護衛の令嬢を連れ、舞踏会へ足を運んだ
この時の参加者の気持ちの8割が、今回こそ何もしないでくれとの願いであった
1割ほどの刹那主義者は、女性騎士との婚約破棄を楽しみに。
残りの1割。今日起こる最大の余興を準備していた者たちの胸中は複雑だ。流れによっては自らが大火傷を負うから
舞踏会は粛々と進み、王子が壇上に上がった
一部のもの以外、皆の顔から表情が抜け落ちた。が、王子は構わず声を上げた
「皆、この一年は有意義に過ごせただろうか?今年は下位の者に優秀な者が多く、逆に高位の者は少々力不足な年であった。
入学して早々、家の権力を振るい下位の者から搾取しようとする不届き者や、弾圧するものがいた。間に合わず三ヶ月もの間晒された方々に、再度、貴族を統べるものとして謝罪する
だが、だからといって爵位を軽く考えてはいけない。権力を持つものはそれ相応の責任や義務を負っている。それゆえ、自由な裁量等それほどないのだ。理解してほしい。出来ない場合、裁くしかなくなるのだから
だが、騎士は違う。彼らは貴族でありながら実力により自由を勝ち取れる。そのはずなのに、近年はその実力者を飼い殺ししたがる者が悲しいことに増えている。騎士の忠誠は買うものではなく勝ち取るものだというのに、嘆かわしいことだ
さて、今日、今ここに残っている者たちには心当たりが多いのではないかな?
先に、力不足ながらそれを理解していた高位者は退出した。次に、能力と共に貴族のあり方を理解している、とても優秀な下位者も退出した。そして私は、騎士の忠誠を勝ち取っている
そろそろ理解できたであろうか?
今年は波乱の年だと、元老院から下町の占い師まで皆が言うほどに、不出来なものが多かった。
貴族の矜持を忘れた甘ったれ。反王政等という利益は享受しながら不満を溜める強欲で怠惰な者。機を見る能力もなくただ流されるだけの無能者。君たちはこの一年間、この最高の王立学校で何を学んだ?いや、学べれたか?
学んでいれたなら、理解できるかな。ここに、この場に居ることが落第者の証になることを
勇気を持って、私に忠言をしにきてくれた人達に既に知っていたことだ。学生の約1割の君たちが知らないということは、そういうことだ。又聞きですら耳に入らないほどに君達には人脈や人望がない
さて。私の忠実なる騎士たちよ。事前の通り、わが優秀な民達に手を出していた愚か者共と反王政を掲げる反逆者共を捕らえよ。そして残った日和見共。残りの学生生活で見返してみよ。それが私に贈れる最後の施しだ。この機会を見事手中に収めてみせよ」
出口に殺到していた者達と、壇上へ上がろうとする者たちを一人づつ捕縛していく騎士達に激励を贈りながら第一王子は退出していった
会場の外では公爵令嬢と男爵令嬢、それを守るように派閥や身分を超えた学生たちが落第者の烙印を押された者達を受け入れようとしてくれている
長らく平和だった王国の、内乱の種であった平和ボケは王子の真実の愛によって取り除かれたのだと、誰かが言い出した
この国は、実力主義によって発展してきた国だ
それがいつの間にか、世襲の中で少しづつ、怠惰に侵食されていた
王家にまでそれが及ばなかった事が幸いであったのだろう
しかし、筆者にはどうしても気になることがある
婚約契約を軽く扱いすぎてはないか?と
次代の王が真似をして、婚約者、または自らが不幸になることが無きよう、美談ではなく史実としてここに残す
抜粋 第一王子近衛騎士の手記
作者メモ
NTRではない。三者三様にそれぞれの想いがあるのに汚い大人の思惑で引き離された
確定してる汚い大人は身分の低い騎士の手柄を横取りして成り上がった騎士団長
宰相も不満を煽って王家転覆を狙ってたかもしれないし公爵家も娘を駒にしか思ってなかったかもしれないけどここは不確定で