第1話 「始動」
~1話『謎のフレンド申請』~
葵「ぬはははははっ!!私の酒が飲めないのかぁ!!おい!大智聞いてんのかぁ!?」
ケーキと紅茶やコーヒーではじまったぱーてぃーは、太陽が沈むのを合図かのように、つまみと酒の宴会に変わっていた。
その宴会でやたらうるさいのが、酒に弱い葵ともう一人…。
朱里「最近の男はなにさ!ただ歩いてるだけで「一緒に遊びませんか?」はぁ!?まず最初は「はじめまして」だろうがっ!!」
そう、未成年の朱里だった。
隼人「おい大智…なぜ酒を飲んでいない朱里まで暴れてるんだ?」
大智「あいつ自己表現が苦手な分、周りに影響されやすいんだよ…雰囲気に酔ったんだろ…」
見た目小学生の酒乱と、酒を飲まずして雰囲気に呑まれてしまった妹の相手をして、いつもの元気を失った大智はもう瀕死状態だった。
帝「しかし、これほど騒いでも問題ないという事は証明できたな」
隼人「たしかにな(笑)」
帝は、この騒ぎの中、自分の前に映し出された仮想モニターを見ていた。
今帝の前に表示されているモニターは、任意の空間にプロジェクターマッピングのように映像などを映し出すことができる。
ただ、従来のプロジェクターと違うのが、5次元仮想システム「AIR」だ。
このシステムを組み込む事で、従来の物では不可能だったことが可能になった。
例えば、今までは壁や物に映像を映していたが、AIRが組み込まれてからは、風、いわば空気に映像を映写する事が可能となった。
そのお陰で、今ではなにもない場所でもプロジェクターが使えるようになったのだ。
それだけではない。
このAIRには仮想認識システムが搭載されており、実際に任意の場所に触れる事で、モニター内を操作する事ができる。
なので、外出先でインターネットをしたり、TVを見たりというのが小型端末の所持などを必要とせず、人々にはかなり便利な世の中になった。
AIRの端末も、ある特定の物を除いては、ブレスレット型・アンクレット型・指輪型など、様々な形・大きさがあるので、ファッションの一つとしても携帯可能だ。
ただし、大きさによってほんの少しだが、性能に違いがでるのは仕方がないことだが…。
そして、帝が持っているAIRは最近発売されたばかりで、指輪型なのに、ブレスレット型とほとんど変わらない性能を誇る新製品だ。
性能が高いだけに、値段も高い。
隼人同様、お金持ちの帝だから買えるのだが、他の人から見れば贅沢品以外のなにものでもない。
帝「そういえば隼人、”アイツ”の新情報知ってるか?」
隼人「”アイツ”?」
帝「この間話しただろ?こいつだよ」
そう言って帝は、隼人のAIRに画面共有をする。
画面共有を許可した隼人のAIRに映し出されたのは、ある事件の記事だった。
[またもや参上!謎の救世主”神音”]
××月△△日
都内に本社を構える、大手家電メーカー「小泉電気」を襲った謎のネットウィルス。
ネットウィルスは、小泉電気のネットサーバーに不正アクセスした悪行ハッカー(クラッカー)の犯行で、ウィルスに感染した端末から事業データ・顧客情報などを別のサーバーに無断転送してしまうものだった。
その被害のせいで、小泉電気は倒産寸前まで来ていたが。
GIS(IT犯罪捜査組織)が小泉電気で捜査中、ウィルス感染していた端末にまたしても謎のアクセスが…。
アクセスしてきた相手は、GISでも手こずっていた謎のウィルスをたったの2分で削除、その後送信先特定不能のアドレスから届いたメールには、ウィルスによって転送されたオリジナルのデータの他に一枚の地図データと何かの暗号キー、そしてメッセージが入っていた。
その内容は
被害に遭われた小泉電気さん
今回はとんだ災難でしたね。
しかし、ウィルスは完全に削除しました。
そして、事業データ・顧客情報も悪用されてしまう前にプロテクターを掛けておきましたので安心してください。
データはこのメールに添付してお返しします。
掛かっているプロテクターは一緒に添付している暗号キーを使用すれば解除されるようになっております。
そしてGISのみなさん、ついでに今回の犯人の居場所を地図データに記して送って起きます。
犯人は…、まぁお楽しみに取っておきましょうか。
その方のAIRを調べれば、小泉電気さんへの不正アクセスの痕跡が残っているはずですよ。
それでは、あとはお任せします。
神罰の代行者”神音”より
というものだった。
隼人「まだこんなの追っかけてんの?」
帝「こんなのってお前なぁ…なんでそこまで興味ないんだよ…」
隼人「だってこんなの都市伝説レベルの存在じゃん(笑)
現にGISからの発表にもこんな存在出てないし、それにコイツの足取り掴めた人だって一人もいないんだぜ?どっかから出た噂が一人歩きして大きくなったんだよ、よくある話じゃん(笑)」
帝は、都市伝説や謎が大好きで、最近噂になっているネットを使って犯罪をする者を制裁する謎のヒーロー”神音”について必死になって追っかけをしている。
この執拗さがあれば、記者にでもなれるんじゃないかと思ってしまうほどだ。
唯「でもホントに誰なんだろうね?GIS?ってネット犯罪のスペシャリストが集まった集団なんでしょ?その人たちが困るほどの事を瞬時に解決しちゃうなんてすごいよね」
帝「唯は隼人と違って話がわかるねぇ」
隼人「話がわからん奴で悪かったな(笑)
でも、GISより上の技術を持った人間なんているのか?しかもその話がホントならかなりGISを凌駕した技術を持ってることになる」
隼人の言葉を聞いて、帝は深く考え込むしぐさをする。
隼人「あ、もしかして神音って…」
帝「ん?どうした!?まさか心当たりがあるのか!?」
隼人「神音本人が犯罪者だったりして」
帝は目を丸くしている。
隼人「だって神音が犯罪者で、今までの事件の黒幕だとしたら、ウィルスの解除だってできて当たり前だし、実行犯の居場所を知ってても不思議じゃないだろ?」
帝「はぁ…それなら一人ぐらい黒幕の名を吐く実行犯がいてもおかしくないと思うが?」
隼人「あ…そうか(笑)」
帝「お前の頭はどうなってんだよ…勉強では俺より上なのに、なんでこんなことになると全く頭が働かないんだか…お前に推理は絶対無理だな」
帝は苦笑いしながら神音についてさらに調べはじめた。
隼人(絶対って言われたw)
唯「ねぇ隼人」
隼人「ん?どした?」
空いた皿を片付けていた唯に呼ばれ、隼人はキッチンに移動した。
唯「こうやってみんなで集まるのってやっぱ楽しいね♪」
隼人「そうだな…ここなら騒げるし、みんなとも近いしな」
とはいえ、ここに住み始める前にいた実家も、ここから10㎞と離れていない、なのでいつでも会おうと思えば会えたのだが、やはり距離が縮まれば以前より会いやすくなるのは必然である。
朱里「隼人さんも唯ちゃんもこっち来て騒ごうよ!」
二人の姿が見えないので、朱里がキッチンに迎えに来た。
隼人&唯「はいはい」
それから時間は過ぎ、現在夜の12時を回ろうとしていた。
隼人「それじゃあそろそろはじめますか」
一同「「はーい」」
隼人が自分のAIRを起動し、通常のTVよりも大きいぐらいのモニターを映す。
それに合わせて他のみんなもAIRを起動する。
隼人が出したモニターの両端に、次々と他のみんなの画面が標準サイズで表示される。
これはAIRの機能の一つ「LinQ」だ。
一人のAIRがホスト(親)となり、他のAIRに機能を共有することができる。
隼人「でわでわ、みなさんroomの起動はできましたか?」
帝「その喋り方やめろ(苦笑)」
roomと呼ばれたプログラムをみんなが起動すると、中心画面に大きくroomという文字が浮かび上がった。
葵「今日はなにするのぉ?」
酔っていたメンバーも少し前からノンアルに変え通常運転に戻っていた。
隼人「今日は!この方の放送にお邪魔しちゃいます!!」
帝「げっ…まじかよ…w」
モニターに表示されたのは、roomでも超人気の配信者「彗星ちゃん」の放送だった。
葵「彗星ちゃんの放送とか…wこれ大丈夫なの?w」
このroomというプログラムは、一般の人間でも、AIR上でならりあるたいむで自分の番組を持つことができる、ネット配信プログラムで、人によって配信スタイルは全然違う。
例えば、この彗星ちゃんはカメラをつけて自分を映しだし、その可愛い見た目と一般人とは思えないほどの歌唱力で、歌放送などをしている。
それとは逆に、隼人たちGod Breathは、一切顔は出さず、声を使って歌や劇・朗読・声真似などを専門に活動しているグループだ。
顔出し歌放送などの一般の配信者の同時閲覧数が平均30~100人に対して、彗星ちゃんの同時閲覧数は基本2000人越え。
結構な数の人が彗星ちゃんの放送を見ている。
今現在も、閲覧数2400人とかなり賑わっているようだ。
隼人「まぁ、今回は俺の知り合いの配信者が彗星ちゃんと仲が良いからって特別にお願いしてくれたんだよ」
大智「あいかわらずお前の顔の広さには驚かされるぜw」
隼人「使えるもんは使わないとなw…あっ、噂をすればその知り合いが放送に参加するみたいだぞ」
隼人が彗星ちゃんの放送を指差す。
すると、放送画面の右下に小さな枠が追加され、一人の人物が映し出された。
朱里「………っ!!?」
葵「嘘でしょ…?」
そこに映っていたのは、今や世界中の誰もが知っている顔だった。
彗星ちゃん「さぁ!今回一緒に放送を盛り上げてくれるゲストの一人はこの方です!!拍手!!」
唯「えっ!?三谷恭一!!?隼人、三谷恭一と知り合いだったの!?」
隼人「あれ?言ってなかったっけ?」
唯は言われてない!と激しく首を振った。
三谷恭一…、今や世界でこの人物を知らない人は少ないだろう。
彼は、貧しい家に生まれ、苦労と共に生きていたが、15歳の時にroomに出会い興味レベルで配信をはじめた。
そんな彼は、貧しさと引き換えに、神に与えられたものがいくつかあった。
まずは、見た目だ。
容姿端麗…そんな言葉では足りない、彼の見た目は神々しいと言われるレベルだった。
そして、歌唱力・演技力、そのどちらにも長けていた彼は、放送開始数日で閲覧数5000を越える超人気配信者になった。
そして、2ヶ月もすれば彼の噂は広がり、多くの芸能関係者も見に来るようになった。
そして、日本の芸能界トップに位置する某大手事務所からスカウトされ、数年経った今では、歌・演技などで、活躍する世界的スーパースターとなった。
そんな彼と隼人は知り合いだという。
みんなが口を開けたまま驚くのも無理はない。
恭一「やぁ♪彗星ちゃん久しぶりだね!最後に会ったのは確か…「雅楽の奏者(映画)」の公開イベントに君が特別ゲストに来たときだったかな♪」
彗星ちゃん「はい!!そこまで覚えてくださってたんですか!?嬉しいです♡」
普段はリスナー(閲覧者)にそう言われる側の彗星ちゃんも、今はスーパースターを目の前にした一般人だ。