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テーマ《メガネ(眼鏡)》
図書館に一緒に出掛けた。
彼女が珍しく屋内施設に行きたいと言ったのだ。
僕は図書館が大好きだし、彼女も本が好きだと言う。
「好きな作家の先生が『桜』をテーマにした本を書いてるの」
彼女の目的はその本だ。
僕は推理小説が好きだ。
お互いに閲覧室で待ち合わせの約束をして、目的の本を探す。
僕が二冊手に取って、椅子に座って読みながら彼女を待つ。
しかし、待てど彼女はなかなか来ない。
目的の本が見つからないのかもしれない。
僕は書架を一つひとつ覗いていく。
奥の方の書棚で彼女を見つけた。
僕は目を見張る。
そこには眼鏡姿の彼女が居た。
まるで別人の雰囲気だ。
「あ、ごめんね探した?」
首を振った僕はさらに気付く。
「メガネまで桜色なんだな」
「そう。リムが桜色なの。で、眼鏡ケースもお揃い」
彼女の桜好きは今に始まったことではない。
だが。
「あれ、顔赤いよ?」
「……眼鏡姿も、か、可愛い」
ぽん。
彼女の顔も音を立てて赤くなった。
図書館の書架の陰で、僕らははにかみ合った。
お読みくださり、本当にありがとうございます❀