テーマ《春》
春になった。
彼女と僕が一番好きな季節だ。
だって、と彼女と声を揃えて口にする。
「桜が咲く季節だから」
桜の木の下で出逢って、それから告白する日まで。
思い出せば桜色の彼女の事が忘れられなかった。
桜の木を背景に、春の青空を背景に見上げた彼女はあまりにも印象深くて。
一日、三日、一週間。
日を追うごとに濃くなっていく桜色の彼女の顔。
恋に落ちたあの瞬間。
運命のパートナーでさえあると僕は確信していた。
ただ。
これが一方的な想いだと思うと、怖かった。
桜の木の下に行きたい。
でも、彼女にはもう彼氏が居たら……。
やはり僕は臆病者だ。
怖いと動くことが出来ない。
でも。
でも。
でも……。
桜の木の下で、もう一度だけ会いたい。
だから出掛けてみた。
「……居た」
散りかけの桜の木の下にはあの日と同じ様に、写真を撮っている彼女が居た。
ふいに彼女が振り返る。
「「会いたかった」」
言葉が奇跡みたいに重なった。
もうそれだけで嬉しかった。
「「好きです!」」
再び重なる言葉。
呆気にとられた僕と彼女。
もう、奇跡は起こらないかもしれない。
けれど同じ想いがあるなら、この先何かあっても大丈夫。
後に、彼女は桜を見上げながらそう語ってくれたのだった。
お読みくださり、本当にありがとうございます❀




