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恋の始まり

 これはうちの初恋の話。


 その日、うちはいつもと同じように駅へと向かうバスに揺られてた。中学で家から遠い女子校に入学して、うちは家から最寄り駅までバスに乗るようになった。

 

 憧れだったブレザー。可愛いと思ってた赤いリボン。カッコイイと思ってた黒いローファー。自分できれいに結べるようになったポニーテール。慣れてしまえば当たり前の、つまらない日常。


 女バレには入ったけど運動も特別できないし、スクールカーストは中の中。ブスじゃないけど、特別かわいくもない。ちょっとカッコイイと思う男子はいるけど付き合いたいとか別にない。美少女の莉愛ちゃんと、バンドマンが好きなやまもっちゃんがイツメン。うち、佐藤眞白の中学二年生は、つまらないまま終わるんだと思ってた。


 それは突然の出来事だった。


 うちはイツメンから推された動画は、家から最寄り駅までのバスの中で見ることにしてる。だって友達とも会わないし、暇だし。


 たぶんやまもっちゃんがハマってるバンドのMVを見ようとしてたんだと思う。でもうちは出会っちゃった。『推し』に。


 何気ないダンス動画。フニャっとした笑顔にキュンとして、スワイプができなかった。


 好き。


 笑顔がかわいくて好き。スタイルよくて好き。性格良さそうで好き。ふわふわの髪が好き。ちょっと垂れ目なのが好き。肌きれいで好き。センスよくて好き。音感よくて好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。好き。


 うちはやまもっちゃんの推しバンドのことなんてすっかり忘れて、パブサしまくった。推しがたまに踊ってみたや歌ってみた動画を投稿してる、ネット配信者の『りくまる』通称りっくんで、ファンネはまるともで、好きな食べ物はスフレパンケーキで、嫌いなものは虫で、乙女座のB型で、盲腸の手術で二週間休止して先週復帰してて、仲良しの配信者が多くてコラボよくしてることを知った。その配信者とよくファンアート描いてる絵師とリプしてるなかで面白いオタクのSNSをフォローし終わる頃には、昼休みになってた。


「何見てるの? 」


やまもっちゃんが話しかけてくる。


「んー? 」


そーいや、やまもっちゃんのオススメ見てないな……。なんか申し訳なくて、はぐらかしている間にスマホを見られてしまった。


「え? なにこれ! 配信者? 」


「そ、そう。踊ってみたとか歌ってみたとか……あとゲーム実況もあげてるみたい」


「あぁ〜……。ネット配信者ってあんま良いイメージないなあ。あ、その人はカッコいいけど」


「そうでしょ? 」


「うん、わりと好き。でも眞白、気をつけなよ? 配信者界隈ってヤバいやつ多いからさ。ハマりすぎないようにね」


「う、うん」


バンド界隈だって充分やべーと思うけど。心の中で言い返すくらいには、うちはりっくんにハマっていた。でもイツメンが生活の全ての中学生には、やまもっちゃんに否定された時点で、誰にも言えない秘密になった。


 秘密の思いは、秘密だからこそ、うちの中でどんどん大きくなっていった。

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