本を読みたいだけなのに
~~王都襲撃一時間前~~
いつも通りジークは堕落した日々を送っていた。
「ふわぁぁ~~~あ、もう朝か」
窓を見ると兵士たちが訓練をしている姿が映る。今日もせいがでるね~と見ていると声がかかる。
「ジーク様お食事の時間です。」
メイドに呼ばれ振り向く。
「もうそんな時間?」
「はい。今日のご予定はどう致しますか。」
「いつも通り図書館かな?」
「かしこまりました。」
~~三十分前~~
食事も食べ終わり、ジークはいつも通り図書館へ向かう。
「今日は何の本を読もうかな♪」
この男は本を読むことが好きなのである。まあ、冒険物や恋愛系しか読まないのでほぼ実用的な知識はないのだが・・・
題名:魔王の生活日記
(ん?なんだこの本、めっちゃ古いな試しに読んでみるか)
「今日はこの本にしよう」
この男はなぜ王国図書に魔王の日記があることを疑問に思わないのだろうか。疑問である。椅子に腰掛けながら本を手に取り読む。
二十数分後、ジークはこの本に読みふけっていた。この本は日々の鬱憤が淡々と書かれていた。
(この魔王、馬鹿すぎだろww 何で恋愛しようとして、相手のこと土魔法で埋めちゃうんだよww)
こんなことを考えていたせいで周りの状況に全く気づいていなかった。図書室の廊下に魔方陣ができていたことに気づかなかったのだ。
「ドカァァァァン!!!!!!」
王都の門の方から激しい閃光と鼓膜がやぶれるような音が響いた。
「な、なんだ!?」
窓に目を向けると・・・
王都の門が木っ端微塵に破壊され、その煙が晴れると奥から魔物たちが闊歩していることに気がついた。
(え! やばいやばい!速く逃げないと!!)
逃げようと廊下に目を向けるとそこには魔人が立っており、こちらを睨んでいる。
(何で魔物の統括者である魔人が王城に入ってきてるんだよぉぉぉぉ)
逃げようとしても足がすくんで動けない。
(あ、俺ここで死ぬんだ・・・短い人生だったけど楽しかったな)
魔人が近づいてくる。もう喋る勇気もない。目を閉じる。
(し、死ぬ!!!・・・あ、あれ?なんで死んでないんだ?)
魔人が口を開く。
「なぜお前が魔王様の本を持っている。」
(どう言うことだ・・・あ!そうか俺がこの本を持ってるから魔王信者か何かだと勘違いされてるのか。だったらまだ生きられるかも・・・)
この男、生には貪欲なのだ。
魔人は短剣をジークの首元に当てながら聞く。
「早く答えろ」
(考えろ考えろ!まだなんとかなる!でも、何にも思い浮かばん・・・)
「答えられないのなら死ね!!」
(俺がまねできる物はあれしかない。てかあれしかわからん。覚悟を決めろぉぉぉ!)
ジークがたどりついた結論とは。
「本当に我がわからんか?」
やはりこの王子馬鹿である。幾つもある選択肢の中でそれは無いだろうと思うものをピンポイントで抜いていったのだ。
「まさか!魔王様ですか!?」
(お!いけそうか!?この本読んでて良かったぁぁぁぁ)
「そ、その通りだ。この私を忘れたのか?」
「いや、ですが魔王様倒されたはず!?」
「アハハハハハハ!! 我があの程度で死ぬわけがなかろう。ずっと機会をうかがっていたのだ。」
「で、ですが・・・では!本当に魔王様だというのなら証拠を見せてもらいましょうか。」
(えぇぇぇぇどうしよう。そこまで考えてないよ)
「見せられるでしょ。証拠を」
魔人はジークをにらみつける。
(何かないのか!?そ、そうだ)
「お前の名前を言おう。お前の名は・・・」
(さっきこの本が魔王の物って知ってたし、多分魔王と親しい人!その中で生きてるのはあいつだ!!)
「テリス!そうだろ!」
(ど、どうだ?)
「そうです!魔王様のテリスでございます!」
(アッテタァァァァ)
「この時をどれほど待ちわびたことか・・・」
「おお、長年待たせた大義であった。」
するとテリスは急に立ち上がった。
「泣いてる場合ではないですね。さあ行きましょう!」
「え?何処へ?」
「何を言ってるのですか?この国を憎き英雄を作り出したこの国を今こそ!破壊するのです!」
まぁそうなるだろう。何のために人間の国の中心部まで攻めてきたのかと言う話である。
(えぇぇl!?まずいまずい!なんとかしないと・・・)
ジークは足りない頭をフル回転させ考える。
「ま、まあ待て、テリスよ。我がなぜこのような小僧の体を乗っ取っているのかわからんのか?」
「どういうことでしょうか?」
「我はこの国を内側から乗っ取ろうとしているのだ!!」
「なんと!そういうことだったのですね!」
「そ、そうなのだ。だからこの国から手を引いてほしいのだ。」
「なるほどわかりました。そういうことならここは引かせていただきます。」
「お、おう分かってくれるか。」
「はい!ですのでまた魔王様に定期的に報告しにきたいと思います。」
「ではまたな。」
「はい失礼させていただきます。」
(よかったぁぁぁ)
だが、ジークはこの後の事について何も考えてはいなかった。なぜなら、ここで生き残れたら万々歳と思っていたからである。
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