プロローグ
~~玉座の間にて~~
皆が緊張した面持ちで見守るなか、一人の英雄が白銀に輝く聖剣を腰に着けながら玉座の間に王を真っ直ぐに見つめ入ってくる。少し緊張しているのだろうか。荒い息使いが聞こえてくる。
王の前で止まり跪くと、王であるセルバード・クロノゼスは言った。
「此度の戦い よくぞこの国を守ってくれた。この国の王としてそしてお前の父として誇りに思う。」
今回、一番の功労者であるジーク・クロノゼスは声を震わせながら答える。
「はい…ありがたき幸せでございます。」
その言葉を嬉しそうに聞き、一呼吸開けたのち、王は声高らかに宣言する。
「第三王子に王位を継承する!異論あるものはいるか・・・」
皆が静まり返るなかジークが口を開く。
「私は王位をいただくわけにはいきません。」
多少のざわめきが起きた後、沈黙が玉座の間を駆け抜ける。
王座から冷たい空気が漂ってくる。王が問いかける。
「何故要らぬのだジークよ。今回の件でお前に相応しいと思ったからこそ渡そうと思ったのだ。どうした。理由があるのなら答えてみよ。」
緊張が走る。ここで言葉を間違えれば王に恥をかかせたことになるからだ。そしてゆっくりとジークは話し始める。
「知識もなく力もない今の私ではこれから待つ苦難に立ち向かっていくことが出来ないでしょう。」
英雄とは思えない弱気な言葉がそこにはあった。だがそれも本心なのだろう。ジークは続けて語る。
「私はこれから色々な世界色々な場所に出向きこの国の王として相応しくなったときに王位をいただきたいと思っております。」
皆、王の反応を伺う。次の瞬間、玉座の間にて笑い声が響く。
「あはははは!!! そうか、ジークよ。お前はそこまで考えていたのだな。分かった。」
ジークは喜びの声をあげようとする。
「あ、ありがとうござい「だが、今回の件は決まってしまったことだ。わかるな。」
ジークは沈黙をもって答える。
王が声をかける。
「しかし、お前の意見を尊重しないわけにも行かん。よってこの件は一年後ジークの成人式で決定することとする。」
下を向いている等の本人は肩を震わせ喜びに浸っているのだろうか。その涙は第三王子として辛かった過去のことを思い出しているのか。これからの不安なのか。
それとも、王から自らへの愛を感じたからなのか。それは彼のみが知ることなのだろう。
「では、これにて解散とする!」
この欲望が渦巻く王都の中央で、あるものは
(流石は私の旦那様です!!)と愛を再確認し。
また、あるものは
(やはり、力を隠していたか…これからが楽しみだなジーク)とこれからのことに期待を膨らませ。
そして、あるものは
(王座に就くのは俺だったはずなのに!!)と怒りを積もらせていた。
皆が希望や野望を持ち各自の思考を巡らせながら解散していくなか、英雄ジークはというと・・・
(どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)と自らの行動を悔やんでいた。
これは王道の物語?否
これは修羅の物語?否
これは邪道の物語?否
これは・・・ただのアホでバカな王子が、何故か上手く行ってしまう勘違い物語である。
もしこの小説を読んで
次が読みたい!
面白い!
と思っていただけた方!!
↓の★★★★★を押して応援してくれると執筆が進みます!
よろしくお願いします。