始まりの破獄1-1
ある程度書いて載せます。
毎週水曜日更新できればいいかなと思っています。
深い深い日の光も差さない海の底。大海を檻とする堅牢から一機の潜水艦が浮上した。内部には横縞柄の服を着た齢十六の青年と黒スーツを身に纏う女性が搭乗していた。女性は険しい表情をしているが、その内心は安堵感に満ちていた。
「遅くなってすまない」
女性が口を開く。青年は不思議そうに女性を見ていた。何故あなたが謝る必要があるのだろうか、その言葉が漏れ出す。
「あの災害は私の力不足が招いたものだ。本来であれば、君が背負うものなんて何一つない。何一つ 背負う必要のない、ただの学生だった……はずなんだ」
一人の人生を歪めてしまった、それも自身の恩師の息子を。その事実に、女性は身を投げ出すことも覚悟していた。
しかしそれは責任逃れでしかない、お前がいなくなったらその子の人生はどうなるんだ。取り巻く友人たちの叱責を受け、再び救うことを誓った。
「私は君を助けるためなら権力も知力も能力も全て捧げるつもりだ。何かあったら私に相談してくれ」
母性に近しい温かさがその声色から感じ取れた。
「ありがとうございます理事長」
青年の表情は自然とほころんだ。
およそ1時間経つと漣の音色が耳に入るほど浮上していたことに二人は気が付く。海面付近には潜水艦をレールが迎えた。乗り上げ、結合すると潜水艦は上空へと昇って行った。
その先にあるのは空母、いや島、否――浮島という名の国であった。
嘗て新人類の始祖となる者が一晩によってその特異な能力で創り上げた。
海上浮遊型都市――通称『ディケルト』は、壊滅した本土から離れた太平洋の中心で新人類の営みを乗せる方舟である。
ここに到着した二人も例外なく新人類の枠組みに当てはまる。
潜水艦を降りると、半透明な壁が待ち受ける。女性が腕輪を翳すとその壁は音もなく消えた。
「へぇ」
青年は感嘆の声を上げる。
「そういえば、学園内部に来るのは初めてか」
「中等部まではいたんですけど、何せ別の校舎でしたから」
「高等部からは中央の校舎で学ぶことになる。その内見慣れるだろう」
黒スーツに似合う黒い腕輪を見せた。
「これも後で支給されるさ。生徒用ではあるがな」
「別に欲しがっているわけでも羨ましがってもないですよ?」
女性の瞳には青年は未だに未成熟な人間の面影が映っていた。また好奇心旺盛で多感な時期故に、彼も例外なくかっこいいものに憧れるだろうと予想していた。
青年の横顔は歴戦の猛者のように大人びていた。
申し遅れました。甲乙千夜でやっていきます。
あと、とても細かく更新していきます。
設定だけ眠っていたものの供養するつもりで書いていきます。
よろしくお願いします。