第二話「そうぞうりょくの産物との出会い」
第二話「そうぞうりょくの産物との出会い」
ユラが前方の景色に見惚れている間に、 他の子ども達も意識を取り戻し始めた。
皆一様に機体前方には集まり、 言葉もなく目の前の景色を見つめている。
ここにいる子供達は皆、 ポリス・パイオスで生まれた子供達だ。ポリス・パイオスには灰色、白、黒、以外の色がない。
彼らは、 今、 初めて色という概念に出会ったのだ。
(なんだろう、 これ、 ごちゃごちゃしてるけど、 温かい感じがする……)
ほどなくして、 機体は着陸した。
太陽の光に目を細めながら外へ出ると、 同じような機体が数機、 近くにあった。
「みなさ〜ん、 こっちに来てくださ〜い」
先程の少年がユラ達を誘導して、 頂の七色のドームへと向かう。
頂へ向かう坂道の途中で、 ユラ達同様、 灰色の制服を着た集団のいくつかと合流した。
(母さん、父さん、どこにいるんだろう……
無事なのかな……)
ついに一同はドームの前に到着した。
「ここで、 出身地区ごとに分かれて下さい。
別団体と合流します。」
ドームからアナウンスが流れる。
一同はざわめきながら、 互いに家族を探す。
ユラも人混みの奥に、 両親を見つけた。
「父さん! 母さん!」
「____ユラッッッッ!!」
両親はユラに駆け寄り、3人で抱き合った。
母親は目に涙を浮かべていた。
「ユラ……本当に無事でよかった……」
感動の再会も一段落し、 一行はドームに入る。
ドームの中は、 二階建ての吹き抜けとなっており、 中央の吹き抜け部分に先程の大男が立っていた。
「諸君、 ようこそ虹の都へ。 我々は諸君を 歓迎する。これより、 ここがどこで、 どういう場所なのか。 諸君の置かれている状況を説明してもらう」
すると、突然ドーム内が暗くなり、天井に映像が流れ始めた。
「ようこそ、 ポリス・イリスへ。
ここは、 この荒廃した世界で唯一、
創造物が集う場所……」
流れてくる音声によると、 ユラ達の故郷、 ポリス・パイオスでは、 人間の「そうぞうりょく」は搾取され、 その産物である「おんがく」や、 「ぶんがく」たる物が排除されているそうだ。
そして、 それらはユラ達の人生を豊かにする物であり、 自分以外の誰にもそれらを奪う権利は無い、 と。
全ての映像が流れきり、 明るくなると、 大男はユラ達を再び誘導し始めた。
「今からあらゆる創造物の中の一番初めのもの、 真の想像力の産物ってやつを、 実際に見 せてやる。 ついてこい。」
無精髭の大男がユラ達を連れてきたのは、 書庫だった。
彼が一冊の赤銅色の絹の表紙の本を捲ると、
物語を詠い始めた……
◇
彼はいくつもの物語を詠ってくれた。
少年が鳥になって、 世界中を旅する話。
海の中の宮殿に住む、人魚姫の話。
異世界に転生し、 魔法使いになる話。
海の向こうに自由があると信じて、
航海を続けた海賊達の話。
100年に及ぶ戦争を歌で止めた聖女の話。
魔女の呪いで醜くなった王女の心の美しさを
見抜き、 愛し、 呪いを解いた王子の話。
最後に男はこう言った。
「今詠った物語は全て、 200年前の最終戦争の時に書かれた物だ。」
「この作者は、 戦争という闇の時代の中、 いつか再び、 平和がやってくると信じ、 美しい世界を創造したんだ。」
◇
いつの間にかユラの黒い瞳には涙が浮かんでいた。
人間の想像力は果てしない……。
理由はわからない、 けれど、
「私が」これを守って、
広めていかなくちゃ。
私のやりたい事は労働なんかじゃない。
これを伝えていくことだったんだ。
ユラは強くそう思った____
ここまで、お読みいただいてありがとうございました。
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