井の中から跳んだ蛙
井の中の蛙は必死の空へ跳んだ
一陣の風に空しくも爪を立てて
善悪の怒号が吹きすさぶ街へと
五秒差で重なる運命線と生命線
暁の街に滅絶の道を行こうとも
夜の帳に死生の火を灯しながら
いつか到る岸辺まで跳び続ける
その先は誰も何も知りはしない
最初の呼吸で苦しみを呑み込み
最期の呼吸で思い出を吐き出す
死の跡に建てられた奉命の銘は
風の中でいつまでも残り続ける
群青に染まる空は命の呼吸の源
腐り落ちた林檎の中にも芽吹き
死のない人の群れにさえも宿り
彼方の川まで鳴き声を響かせて