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銀滅のドラゴンロード 〜最後の龍王〜  作者: 翡翠宮
第1章 動き出す時間
8/13

動き出す時間 #FINAL

「動き出す時間」これで終わりです。お楽しみください。


 「こ、ここは……?」


 手の平に乗せている魔法使いの少女は、最深部のドームを見回しながら呟く。その問いに『樹海の最深部、俺の住処だ』とだけ答えたが、彼らは声音を聞くや「ひっ!」と身体をびくつかせ、その場で縮こまった。問いに答えただけなのに……

 俺はルージュの石碑の直ぐ隣に沸いている小さな泉の淵に彼らを降ろした。そして、眩い光と甲高い金属音と共に変身術を発動する。人族のこの姿なら怖がらせることもないだろう。


 「あ、あの……」


 「そこの水を飲ませろ。傷が回復するはずだ」


 「あ……は、はい」


 俺は泉を指さしながら言う。そしてルージュの石碑に背を預け、その場に座り込んだ。俺が見てると作業がしづらいだろうからな。彼女らが治療の準備を始めたのを横目で確認しながら俺は瞼を閉じた。

 

 ――――少し整理しよう。俺は樹海外縁部で瀕死の人間を抱えた人族一行を発見。最初は見捨てようとしたが、勢いで本当の姿を晒してまで救出。人族にとっての禁足地たる最深部まで連れて行き、治療を受けさせる。


 ……少し迂闊過ぎたかもしれない。(ドラゴン)は10年前の大戦で絶滅した事になっているはず。その龍が生きていると知られたら、またあの大戦が勃発する可能性もある――――


 《ルージュならどうする?》


 ……そう、ルージュだったら。これをチャンスだと言い、人族との距離を縮めにかかるに違いない。あの空飛ぶお転婆なら間違いなくそうするだろう。あいつが成し遂げられなかった事を俺が成し遂げる。いいじゃないか。


 だが、それと同時に脳裏にある事実がよぎる。人族の街を襲撃し、虐殺した過去。切っても切れない、俺の過ちであり罪だ。ルージュを殺された恨みと言えば聞こえはいいが、それではこの争いは永遠に終わる事はないだろう。だからこそ、憎しみの連鎖はここで断ち切らなければならない。


 罪の分だけ善行を重ねよう。

 過ちの分だけ徳を積もう。

 

 それがルージュを含めた全ての者たちへの罪滅ぼしになると信じたい。


 ――――……


 「あのぉ……大丈夫ですか?」


 俺は瞼を開け、声のする方向へ顔を向ける。どのくらい経ったのだろう。そこには魔法使いの少女とその他一行が少し警戒した表情で俺を見つめていた。彼女らの後方へ目を向けるとさっきまで虫の息だった男が仰向けで寝ている。顔色もさっきよりかは良いように思えた。


 「もう、いいのか?」


 目の前の少女に問いかける。すると少女は少しビクッとなりながら「は、はい」と頷いた。

 

 「そうか……それは、良かった」


 「え?」とキョトンとする少女を傍らに俺は空を仰いだ。少し日も傾きかけているのか、少し薄暗くなってきている。

 傷は癒えたとは言え、患者を抱えているこの一行をこのまま帰らせるのは酷……か。


 「無理にとは言わないが、今日はここで夜を明かしたらどうだ?朝になったら好きな所へでも送ってやるから」


 俺の何気なく放った一言に人族一行は今日一番の驚嘆の表情を浮かべた。

 だから何故……?


引きこもりドラゴンが出立します。皆さん、これからも飽きずにお付き合いください!

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