旅立ち #3
本日2本目の投稿になります。アクション性が全くないストーリーが続いていますが、どうか飽きずお付き合いください!
『リリーよ。俺は人族を滅ぼすつもりでこのチカラを振るった。それは紛れもない事実だ』
俺は俯くリリーにそう告げる。顔を上げず、何の反応も示さないが、拳を強く握り、怒りに震えているのだけはよく解った。他の3人も俺の言葉を黙って聴いている。
『その行ないに対し、許しを求めるつもりはないし、間違いだったとも思ってはいない』
「なん……だと?」
顔を上げて俺を睨みつけるリリー。その様子は今にも攻撃に転じるような勢いである。だが、俺は言葉を続けた。
『だが……罪、だと思う』
「過ちは認めず、罪である事は認めるのか……言葉遊びでもしているつもりか!?」
『そうではない』
声を荒げるリリーに冷静を保ちながら返答する。どす黒い感情に呑まれぬようにそれを塞き止める。今、これは必要ない。
「罪の意識があるならば、今ここで私に狩られろ。それが一番の贖罪になる――」
「いい加減にしてください、リリー!」
ノアの怒号にリリーは再び押し黙る。すると険しい表情でやり取りを聞いていたフェルゼンが、リリーの小さな肩に黙って手を置いた。そして少し表情を和らげながら言った。
「リリー。少しだけシュネーヴァイスの話を聴いてみないか?お前の気持ちはよく解かる。あの大戦……あの地獄を経験した人間としてな。彼の話を聴いて、それでもお前が納得出来ないというのであれば、俺はもう何も言わない。彼をを討つことは出来ないだろうが、せめて一矢を報いよう。それがお前の望みなら――――それでいいだろう?龍王よ」
『……ありがとう』
俺は敢えて礼を言う。殺される覚悟がある、という俺なりの誠意だ。彼らの誠意にはそれだけの価値があると思う。
『ある龍の話をしよう。誰よりも熱意に溢れ、バカみたいに真っ直ぐだったヤツの話を――』
それから俺は、今は亡き女王龍、ルージュロート=ベガの話をした。
共に過ごし、遊び、成長したこと。
彼女が目標として掲げていた、種族問わず皆が笑って暮らせる世界のこと。
いつも明るく、俺を引っ張り回していたこと。
そして、俺を置いて先に逝ってしまったこと。
怒り狂い、人族の国や街、村を焼き尽くしたこと。
七勇者に敗れたこと。
人族のたちの戦勝パレードでルージュの遺体が晒されていたこと。
その時の怒りや感情も包み隠さず話した。
1時間以上にも及んだ俺の話を彼らは様々な表情を浮かべつつも静かに聴いた。最初はいくつかの問答を繰り返したが、話が進むにつれて何も言わず、黙って聴いてくれた。
『――――俺はルージュの遺志を継ぐ。怨嗟の声は、俺の代で完全に摘み取る。そのためならば同族殺しも躊躇わない。己が滅びようとも構わない。……それが俺の「意志」だからだ』
俺はチカラ強く言い放つ。今まで溜め込んでいたモノ全てを吐き出すように。
これはただの理想論に過ぎない。だが、信じたい。――必ず出来ると。ルージュが成し遂げようとした世界を諦めたくはない。どんなにバカにされようとも、俺だけは必ず出来ると信じ続ける。
『俺は世界種族安寧のために、この命を燃やす……』
『――――龍王、シュネーヴァイス=アルタイルの名にかけて――!』
シュネーとルージュのフルネームが出てこなくて少し困りました……メモしておいたのでもう大丈夫です。




