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銀滅のドラゴンロード 〜最後の龍王〜  作者: 翡翠宮
第2章 旅立ち
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旅立ち #2

早いもので第10部に入りました!皆さんからの熱い応援があったからこそです。これからも宜しくお願いします!


 「あなたのお名前を伺ってもいいですか?」

 

 会話が一区切りしたタイミングで、そう切り出すノア。そういえば、まだ俺自身の紹介をしていなかったな、と思い返す。俺は一度空を仰ぎ、彼らに視線を戻した。


 「シュネーヴァイス=アルタイル。……龍王(ドラゴンロード)だ。まあ、今となってはロードと呼べるのかすら怪しいが」


 俺の言葉に彼らは揃って驚嘆の表情を浮かべた。数こそ少ないが、圧倒的な力を持つ種族、(ドラゴン)の王と言われれば誰だって驚くだろう。会ってから一度も龍王とは名乗っていなかった事を思い出し、俺は頭を掻く。


 「ドラゴンロード……まさか……10年前の大災厄を引き起こした……」


 リリーが震えた声音で俺に問う。そんなリリーの雰囲気に、ただならぬ気配を感じた俺は、一瞬間を置いて「……そうだ」と首肯した。彼女の言う大災厄というのが何を示しているのか、今更言うまでもない。

 すると次の瞬間、リリーは手元に置いていた弓に矢をつがえ、後方に素早く飛び去りながら俺に向けて構えた。その行動に俺以外が驚く。そしてリリーは激情に身を任せるように声を張り上げた。


 「あんたが……!貴様が……私たちの故郷を奪った根源かぁ!!!」


 静寂の樹海に響き渡るリリーの怒号。弓を構えたその腕は怒りに震え、琥珀色の瞳には憎しみの業火が浮かんでいる。その姿に俺は、ルージュを失ったあの日を思い出し、自分もこういう目をしていたのだろうなと思う。そんな様子の彼女に俺は微動だにせず、しかし確実にリリーを捉え、静かに告げた。


 「撃ちたければ撃てばいい。俺はお前の行ないを否定しない……だが、忘れるな。あの大戦を最初に引き起こしたのは……お前ら人族である事を」


 我ながら卑怯だと思った。自分の罪を正当化するような言葉。こんな事ではいつまで経っても憎しみの連鎖は止められないと分かっていても保身に走ってしまう。そんな自分に吐き気を覚える。

 しかし、次のリリーの言葉だけは聞き逃すことが出来なかった。


 「父さんや母さんは関係なかった……皆、あの戦争とは無関係だったんだ!それを貴様は……殺したんだ……!己が破壊欲に溺れ、面白半分で!……奪うことしか知らない怪物が!偉そうな口をきくな!!」


 俺の中でパリンッ!と何かが割れた音が聞こえた――そう感じた時には既に己が変身を解いていた。真っ白な光と甲高い金属音と共に白銀の(ドラゴン)が姿を現す。

 俺はその双眸にリリーを捉え、本気の威圧と怒気を彼女にぶつけた。


 『今の言葉を撤回しろ――。無関係……面白半分……奪うことしか知らぬ……だと?――貴様に何が解かる!!何も知らぬ小娘が……偉そうに垂れやがって!それ以上言ってみろ……殺すぞ』


 俺の言葉がどこまで通じているのかは解らない。だがリリーは、奥歯をギュッと嚙みしめ、気丈にも俺を睨みつける。その目は確かに俺を捉えていた。


 彼女に己の存在、関わったもの全てを否定された気がした。あの日味わった絶望、悲壮、そして奈落、その全てを嘲笑う言葉。到底看過出来るものではない。こいつは、殺そう――頭の中で決した考えを実行に移す手前まできた時……


 「2人共やめて下さい!!」


 突如、俺とリリーの間を高い叫び声が通り過ぎる。俺はゆっくりと声のした方へ頭を向けた。そこには泣きそうな顔をこちらに向けたノアが立っていた。

 

 「やめて……下さい。リリー……昔、約束しましたよね?……二度とあんな悲劇は起こさないようにしようと……一緒に……和解の道を探そうと――――あれは……ただの理想に過ぎなかったんですか!?」


 「…………」


 リリーはつがえていた矢をポロリと力なく落とし、弓を下げた。俯き押し黙る彼女に、なおもノアは続ける。

 

 「私は、リリーとの約束を忘れた事はありません……私が冒険者になったのは、あなたとの約束を守るためです。だから、必死に努力して、努力して……やっとあなたに近づく事が出来たんです」


 ノアの蒼色の瞳から、ツゥーっと一筋の涙が零れた。その姿に、俺の中にあったドロドロとした感情が押し流されていくのを感じた。


 「復讐は何も生みません。私の……私たちのこのチカラは……復讐を遂げるためのものではない――――憎しみの(くさり)を断ち切るためのものなんです!」


 ノアが強く言い放つ。俺は呆然と立ち尽くした。何も言えない、言うことが出来ない……この感情をなんと言うのだろう……


 『ルージュ……』


 俺はポツリとそう呟いた。彼女の……ノアの姿に、亡きルージュが見えた気がしたからだ。そう。これは……希望。

 何もない真っ暗闇に差した一筋の光。俺は彼女の言葉にそれを見出してしまったのだ。


 ――――今こそ動き出す時だと。


皆さんの読みやすい文字数っていくつくらいですか?片手間に読んで頂ける小説を目指して、1000字前後を目安に書いているのですが、自分で読んでみて「あれ、短くない?」なんて思ってしまいまして。

今回も前回に引き続き2000字前後ありました。今回もお付き合い有難う御座いました!

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