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3 魔王視点


 初めてシェリアを見たとき体に電撃が走った。


 それは初恋だった。


 真っ白い髪に僕と同じ金の瞳。


 最高級の鈴の音にも負けない可愛らしい声で『まおさまリアとおめめいっしょね』と言われた時には嬉しすぎて泣いた。冗談じゃなく泣いた。

 うろたえて一生懸命慰めてくるシェリアの優しさに感動してさらに泣いた。あの時シェリアに貰ったハンカチは何百年経った今でも魔力で保存してある。


 あのときアルフォンスの冷たい視線がなかったら間違いなく拐って結婚しようとしてた。

 間違いなく一目惚れだった。

 そしてすぐに中身も好きになった。


 僕なんかがシェリアの名前を呼ぶのも烏滸(おこ)がましい気がして『姫』と呼んでいたら名前を呼ぶタイミングが掴めなくて結局呼び方は姫のままだ。

 『リア』と呼べるアルフォンスが羨ましい。

 まああいつは兄だからシェリアとは結婚できないからな。そのくらいの役得はあってもいいだろう。


 シェリアが小さい頃は(外見は今も小さいが……)僕も兄ポジションでよく遊んだ。

 だが完全に兄認定はされないように絶妙な距離を保った。

 シェリアに恋愛対象として見てもらえないとか泣く。


 シェリアと出逢って自分が表情が顔に出ないタイプでよかったと思った。表情が出ていたらきっとデロンデロンの酷い顔をしているだろう。それでシェリアに気持ち悪いとか思われたら一生仮面を被って生活するところだった。

 それでもアルフォンスには表情の豊かさが普段と段違いと言われたが……。正直シェリアに嫌われなければ何でもいい。


 シェリアも成長するにつれ、吸血鬼の姫として教育を受けるようになった。

 シェリアは存在するだけで尊いのだからそんなことする必要はないと思うのだが……。

 遠回しにそうシェリアに伝えたら『将来魔王様の役に立ちたいから』と返ってきて鼻血がでそうになった。……気合いで止めたが、代わりに涙が出た。

 シェリアをでろんでろんに甘やかして世話をして僕がいないと生活できないようにしたい。

 多分そうさせないためにアルフォンスはシェリアに教育を施しているのだろう。


 まぁ絶対に嫁には貰うけどね。


 その考えが伝わったのか、アルフォンスは徐々に僕とシェリアの合う回数を減らしてきやがった。しかもこっそり会いに行くと必ず邪魔をされる。


 シェリアを嫁にやりたくないのはわかるがあいつマジぶっ殺してやろうかと本気で思った。

 だが決闘を申し込むという僕に都合の良い方法があったことを思い出して溜飲を下げる。

 あの方法を認可した昔の自分を全力で褒めた。





 アルフォンスはまだ気付いていないようだがシェリアが限られた血しか飲めないのはその魔力量のせいだ。


 シェリアの魔力の器は群を抜いている。

 流石に僕には届かないが魔界のNo.2であるアルフォンスよりも桁違いに大きい。


 その上、体がまだ成熟しきっていないため、血から多くの魔力を必要とするのだ。

 アルフォンスの魔力量でも足りなかったようだな……。


 これまでは遊びに行った時に血をあげていたのだが会う回数が減ったのでそうもいかなくなった。


 さすがにそろそろ限界だろうと思っていた頃にアルフォンスの気配がシェリアから離れた。

 僕はアルフォンスとすれ違うようにシェリアの自宅へ向かった。


 僕がそこで見たのは庭に倒れるシェリアだった。


「シェリア!起きろシェリア!」


 自分の顔が青ざめるのをまざまざと感じた。

 倒れているのがシェリアだと認識した瞬間、僕は未だ嘗てない程動揺した。

 思わずいつも呼んでいる"姫"ではなく"シェリア"と名前を叫んでしまうくらいに。


 シェリアを抱き起こして"視た"瞬間にシェリアが魔力不足の貧血に陥っているとわかった。


 ----おかしい、まだそこまで深刻になる時期ではないはずだ。


 シェリアは自分で血を飲むことも出来ない様子だったので、やむを得ず、本当に仕方なく!シェリアに口移しで僕の血を流し込んだ。


 ………柔らかかった。



 一秒でも長く唇を合わせているために少し多めに血を流し込んだのは否定しない。うん。

 アルフォンスが来なければもうちょっとやってた。

 しょうがないと思う。



 シェリアの体内から微かに薬物の存在を感知した。

 おそらく貧血を促す類いのものだろう。いたずらにしては度が過ぎる。


 やはり早くシェリアを僕の目の届く範囲に置かなければ。もう一秒も離れてやるものか。



 アルフォンスにシェリアを預けると直ぐに犯人を探し始める。


 ----僕のシェリアに手を出したのだから、死よりも辛い目に逢わせてやるよ。


 その時のノアが纏っていた雰囲気は正しく魔王と言うべきものだった……。





 目が覚めたシェリアを見たら一気に安堵した。


 ああ、シェリア、僕のシェリア。


 気がついたら例の方法を申し込んでいた。


 その時のアルフォンスの顔は見ものだったな。

 


 魔王である僕が負けることは万に一つもない。


 ごめんねシェリア。


 もう君を逃がしてあげられない。


 僕が守るから、ずっと一緒に生きよう。



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