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2 アルフォンス視点

 リアは特別な子だ。


 勿論、俺にとってこれ以上ない程特別な存在だ。

 だがそういう意味じゃなくて、リアの性質が特殊なのだ。


 俺とリアは魔王に次ぐ力を持つ種族である吸血鬼の長の家系に生まれた。つまり俺は吸血鬼という種族の王だ。それ故にリアは大体姫と呼ばれている。


 吸血鬼は全ての者が銀髪に紅眼で生まれてくる。純血ではないとごく稀に違う色彩を持つ者も居るそうだが……。


 リアは勿論純血だ。

 なのに髪の色は銀ではなく白で瞳は魔王しか持ち得ないはずの金色をしている。

 医者が言うには突然変異だそうだが、同種族以外からの心無い言葉をリアに聞かせたくなかったからリアをあまり屋敷から出さないようにしていた。リアの可愛さにやられた求婚者が増えても困るしね……。どちらかと言えばこちらが本音だ。

 わざわざ格上である吸血鬼の姫の悪口を言って顰蹙(ひんしゅく)を買いたい輩はいない。だが、影では何を言われるかわからない。万が一でもリアが傷付く可能性は排除したかった。


 リアの特異性はまだある。

 リアが飲める血はかなり限られているのだ。

 吸血鬼は基本、好みはあるが誰の血でも飲める。だがリアは俺とあと数人の吸血鬼の血しか受けつけない。しかもその誰の血でもリアは満足することができない。故にリアは常に空腹状態が続いているようなものなのだ。いくら殺されなければ死なないと言われている魔族でも限界はある。


 魔族の血が駄目なら人間の血はどうかと思い魔王城まで魔王の従者である人間を借りに行った。魔王は見事にリアの魅力にやられているので簡単に貸してくれると予想していた。

 リアはまだ嫁に出す気はないので最近は二人を会わせていない。ノアの奴は隙さえあればすぐにリアに求婚しそうだからな……。


 その時ノアは留守だった。

 抵抗する人間を縛って帰ろうとしたところ他種族の長に会ってよくわからん話を長々とされそうになった。こっちはそれどころじゃないのに……。

 ムカついたのでぶっ飛ばしてさっさと帰った。

 リア以外に良く思われる必要はないからね。



 急いで帰った俺を待っていたのは最悪の光景だった。


 最愛のリアが庭で倒れていて魔王に接吻されていた。

 リアは遠目から見ても顔色が悪い。


 全身の血が凍ったような錯覚を覚えた。


 俺にとって最も見たくない光景が二つ一気に視界に飛び込んできたのだ。


 ----何故リアが倒れているんだ。


 ----何故お前は俺のリアにキスをしているんだ。


 予想外の光景に動けないでいるとリアの口の端から血液が一筋垂れた。

 俺はそれで魔王が血を与えているんだと察した。


 近付くと既に十分な血を与え終わったらしく魔王はリアから唇を離した。リアの顔色も回復している。

 魔王が若干名残惜しそうにしているのが腹立った。


 唇に付いた自分の血を妙に色っぽいしぐさで舐め取っている。

 ふざけんな!ハンカチで拭けよ。リアの成分を取り込もうとすんな!!


 持ち帰った人間は適当にリアの部屋に転移させておいた。


 リアは俺が抱き上げて自室へ運ぶ。

 魔王は少し用があるらしくついて来なかった。『姫が目を覚ます頃には戻る』と言い残して何処かへ行った。

 戻らなくていいと思う。



 リアを部屋のベッドに横たえると俺はただリアが目覚めるのを待つしかなかった。


 寝顔も可愛い。


 どうやら魔王の血はリアに合うらしく、最近で一番顔色がいい。

 何だか悔しいな。



 リアの目が覚めると魔王が脈絡のないことをいい始めた。

 クリフが『うちの主どうしたんですかね。頭おかしくなりました?』とか言っていたが"決闘"というのはれっきとした吸血鬼への求婚方法だったりする。


 最も、大昔にしつこい求婚を断るために作られた方法なのだが……。


 基本的に吸血鬼に他種族が求婚する時はこの方法を使わなければならない。そして決闘は断れない。ただ吸血鬼同士と吸血鬼から求婚する場合には用いられない。


 ルールは殺しは禁止で相手が気絶するまで。求婚者が勝った場合は問答無用で結婚。両者の合意がある場合のみ離婚が可能になる。ただし求婚者が負けた場合は人間の単位で100年間結婚を申し込んだ吸血鬼以外の吸血鬼の餌を勤めなければならない。そして一生その吸血鬼と合うことを禁止される。

 これを説明してやったらクリフが『えげつなっ!』と言っていた。

 

 吸血鬼は魔王を除くと最強の種族なので必然的に求婚を断れる。

 長レベルなら平の吸血鬼とはいい勝負をするかもしれないが、長ともなるとそんな危険な橋を渡るわけにはいかない。

 よってこの方法を使う者はいなくなり、長である俺も今まで忘れていたくらいだ。

 おそらく魔王も最近思い出したのだろう。



 リアが生まれる前に使われなくなった方法だが勿論姫であるリアも内容は学んでいる。断れないことも。


 結局準備が出来次第決闘が執り行われることになった。

 何故かリアはやる気満々だ。お兄ちゃんわかんないよ……。




「主!こういうことは相手に合わせることが大事でですね……」


 決闘が決まってからクリフのノアに対する説教が始まった。

 ノアは真面目な顔で頷いている。


「わかった、相手に合わせればいいんだな。僕にもそのくらいできる。案ずるなクリフ」

「それならいいんですけど……」


 いや絶対なんか別の解釈してるよ。

 あのずれた魔王がまともな考えに行き着くはずがないだろう。




 リア、お前はこんな奴のところへお嫁に行ってしまうのかい?




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