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プロローグ


 ----初めてのキスは血の味だった。






「はぁ、はぁっ、」



 薄暗い庭園に荒い吐息が響く。

 広大なそこに居るのは12歳くらいの少女だ。

 少女は石畳の上で独りうずくまっている。



 ----血が足りない、苦しい。誰か………兄様っ!


 朦朧とする意識の中、少女は必死に兄を呼んだ。

 少女は両手で自分の首元を押さえてもがき苦しんでいる。

 その小さな口の隙間からは鋭い八重歯が覗く。


 ----最後に吸血したのはいつだっただろうか……。


 少女は冴えない頭で思考を巡らせる。だが、ひどい頭痛でそれもままならない。

 そして遂に、少女は完全に倒れ込んでしまう。



「………………!…………ア……!」



 薄れ行く意識の中、誰かの声が聞こえた。


 ----誰?


 そして大きな手で抱き起こされる。その頃には少女の瞼は完全に閉じていた。


 そして、何か柔らかいものが唇に触れ、鉄臭いものが口内に流れ込んで来た気がした。


 ……おいしい。


 そうして少女の意識は完全に途絶えた。


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