1/6
プロローグ
----初めてのキスは血の味だった。
「はぁ、はぁっ、」
薄暗い庭園に荒い吐息が響く。
広大なそこに居るのは12歳くらいの少女だ。
少女は石畳の上で独りうずくまっている。
----血が足りない、苦しい。誰か………兄様っ!
朦朧とする意識の中、少女は必死に兄を呼んだ。
少女は両手で自分の首元を押さえてもがき苦しんでいる。
その小さな口の隙間からは鋭い八重歯が覗く。
----最後に吸血したのはいつだっただろうか……。
少女は冴えない頭で思考を巡らせる。だが、ひどい頭痛でそれもままならない。
そして遂に、少女は完全に倒れ込んでしまう。
「………………!…………ア……!」
薄れ行く意識の中、誰かの声が聞こえた。
----誰?
そして大きな手で抱き起こされる。その頃には少女の瞼は完全に閉じていた。
そして、何か柔らかいものが唇に触れ、鉄臭いものが口内に流れ込んで来た気がした。
……おいしい。
そうして少女の意識は完全に途絶えた。