プロローグ
ーこの世界は退屈だが不満はないー
それが今の俺が抱いてる、いや抱いていた感想だ。
バイトしてるからそれなりに自由なお金もある、友達も多い方ではないけどいる。自分の家がある市内には飯屋に娯楽施設、市役所に警察署、更には温泉だってある。大学生での成績も中の上、将来的には実家の温泉経営を継ぐつもりだ。言わば線路の上に石ころ1つどころかゴミひとつ落ちていないレールの上を行くが如く安定した人生だ。
昔から向上心が薄いと言われているが、正直人の上に立つのが苦手だ。あまり好まれることではないがイエスマンは楽だ。もちろん何でもそういう訳ではないんだけど…ただ、誰かの役に立てる、そんな事を考えていたら自然と身についてしまった。
さて、前置きはこの辺で。
冒頭で俺は抱いているではなく、抱いていたと過去形にしたと思う?それはな……
「オイ、そこの奴隷!ブツブツ言ってねぇでさっさと仕事しやがれ!!」
俺、知らない世界で奴隷になってました。
「いやいや待って!何此処、何これ、何なのさ!」
謎の三段活用…何て言ってる場合じゃない!整理するんだ。俺は確か大学の帰りにカラオケに行こって誘われその後に晩飯にハンバーガーを食べにMOCに行ってそれから…そうだ、怖いお兄さんにカツアゲされてそれから、足を捻って工事中のせいか蓋がしていないマンホールに頭から突っ込んで、顔までははっきりと覚えてない綺麗な女性と出会って気がついたら…ん?
これ、死んでね?あれか、転生ってやつか?
「ぶっ殺されてぇかテメェ!」
えっと…看守様が怖いので仕事に戻ります。