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妖猫 第九話 僅かな隙を求めて



「答えては貰えないのですか?」


「……。」



 ダイアは次々と質問を投げ掛けてきた。だが俺はその全てを無視し、足の痛みに耐えることに集中する。



「妖精に見捨てられてしまったようですが、それでも仲間と言えるのですか?私ならば、例え命を取られる事になろうとも決して仲間を残して逃げたりなどしません。」


「……。」


「足が痛そうですね。さぞ辛い事でしょう。すぐに手当てをします。ですがその前に一つだけお願いを聞いて頂けませんか?」


「……。」


「私には妖精がどうしても必要なのです。仲間だった(・・・)妖精の元へ案内して頂けませんか?」


「何故、妖精が必要なんだ?」


「……私はあなたに隠し事はしません。情けない私の全てを話して差し上げましょう。」


 そうしてダイアがゆっくりと語り出す。話したことは、俺が知っているダイアの情報と同じ物だった。


 パレット王国の第7王女コンキスタの側近であり大森林で死んだことや、魔獣ゴブイフリートがただのレッドゴブリンであり国から追われていることなどだった。


「妖精をパレットへ持ち込むつもりはありません。持って行ったところで捕らえられ打ち首になるだけでしょうから。ですから私は国を捨てます。私と共に来てくれた仲間と共に新たなる場所で返り咲くのです。」


 ダイアの野心だけは消えること無く燃え続けている。俺からすれば野心というよりただの狂気にしか感じ得ないが。


「もう一度言いますが、私は仲間を見捨てたりはしません。あなたの力が必要なのです。手伝って貰えませんか?」


 ははっ。さっき仲間を殺したのは誰だ。信用など出来るわけが無い。


「妖精を売れば莫大な富が得られるでしょう。その暁にはあなたの望む物を手に入れましょう。どんな宝石でも、他国の破滅でも、()も。」


 物欲に破壊衝動……あとダイア?


 そんなものーーー


「……糞喰らえだ。風の刃!!!!」


 不意打ちで卑怯だとかそんなことは言っていられない。油断していたダイアの顔目掛けて全力の風の刃を打ち出した。


 だがダイアへと届く前に障壁が展開し呆気なく防がれた。


「……残念です。ですがあなたも(・・・・)高く売れることでしょう。妖精はいずれ自力で手に入れるとして、手始めにまずはあなたからとしましょうか。拘束は解くので逃げないで下さいね。毛皮だけでも高く売れるでしょうが、出来れば生きたままにしたいので。」


 そう言うとダイアは俺の足を覆う土へ杖を振り下ろす。すると鉄のようだった土がぼろぼろと崩れていく。


 足に突き刺さっていた棘も崩れると大量の血が流れ出る。再度訪れた激痛に目を回してしまいそうになる。


「あなたが完全に拘束されていた魔法程度なら少し干渉すればこの通りです。ですから、くれぐれも暴れないで下さいね。」


 今は大人しくしておいた方がいいのだろうか。だがダイアがこれから先今以上のフリーな状態にしてくれるとは限らない。身動き取れなくされダイアの思い通りに事が運んだ未来など恐ろしすぎる。


 妖精の国へ転移するにしても、魔力を感知するダイアが簡単に許してくれるとは思えない。

 だがただの弱い魔法なら使わせてくれる可能性ならばある。


 一瞬でいい。ダイアが障壁に気を取られてくれれば猫の身体能力で距離を取る。そして拘束される前に妖精の国へと転移する。



「風の矢!!」


 同時に三つの矢を作り出し直ぐさまダイアへと向けて放つ。


 はずだった。


「ぐっ!?」


 だが風の矢は形を作り出す事すらなく不発に終わる。それどころか逆にダイアが瞬時に生み出した炎の鎖によって拘束された。


 触れられている以上は妖精の国へは行けない。ヘタすれば鎖に繋がれたままダイアを連れて行くことになる。


 しかも今は転移どころではない。炎の鎖は見た目通りの熱量があり足の痛みを忘れるほどの激痛が体を走る。毛に引火して火達磨にならないあたりは魔法ならではなのだろう。


 作戦が見事に失敗に終わり、俺はどうすることも出来ないまま焦りと恐怖をつのらせる。


「発動がお粗末過ぎます。そんなことでは魔法を使う前に干渉することも容易いです。」

 

「ぐぁぁ!!は、離ぜぇ!!!」


「離すわけがないでしょう?」


 炎の鎖を破ろうにもビクともしない。グルグル巻きにされ狂ったように叫ぶ俺を、ダイアは氷のように冷たい眼で見下ろす。

 

 するとこちらへ駆けてくる足音が聞こえてきた。

 

「……ブイアン。掃除は終わりましたか?」


 部屋の入口には重装備の男が鎧をガチャガチャと音を鳴らし立っていた。最初に洞窟の入口から飛び出してきたリーダーシップを張っていた男。


「おぅ、簡単にだが魔物の死骸は掃除しといた。他の魔物を引き寄せちまうからな。だが一匹だけ生きてたみたいで取り逃がした。すまねぇ。」


「そうでしたか。醜い魔物の執念を見誤った私のミスです。気にしないで下さい。」


 俺のことなど意に介さず会話を続ける二人に魔法を放ってやりたかった。だがこの鎧男は風の矢を物ともしていなかったし、ダイアに関してはそれ以前の問題だ。


 完全に八方ふさがり。お手上げ状態。肌を刺すような激痛で今にも死んでしまいそうだ。


 意識が混濁し始めた俺を捨て置いて二人は会話を続けた。


「ん?妖精はどうしたっ!?」


「残念ながら逃げられました。しかし妖精の仲間は手に入れましたよ。」


「逃げられたか。それにしても…何だこの魔物は?見たことねぇな。案外妖精よりもレアだったりしてな。つーかこいつ死にそうな面してるぞ?いいのか?」


「どうしても暴れたいようだったので、少し反省してもらっていました。もういいでしょう。」


「反省ねぇ…まぁ生きてるならいい。ダイアがそんなヘマするとは思えねぇしな。ところでこいつはどうするんだ?」


「この魔物を餌に妖精を釣ります。それが駄目なら売り払います。妖精もこの辺りにいるでしょうし。目覚めたら魔法で攻撃してくるでしょうから、魔蝕布で捕らえておいて下さい。」


「あいよ。」

  


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