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妖猫 第六話 気配



 陽は完全に落ち周囲は暗闇に包まれた。だが猫の夜目には関係なく、人間達が拠点にしているバロンのコロニーの跡地には松明がかかげられているのがハッキリと見えた。


「ピピンさん、そろそろ始めよう。」


「私は常に準備万端。」


 作戦決行の時が来た。まるで心臓が耳にあるかのように心音が聞こえる。心音は心の音と書くが、まさに心に同調しているように心臓が激しく鼓動している。


 計画は正面突破。これが駄目でも次の策はある。


「いくよ…ピピンさん!」


「……ん。」


 共に風の矢を放つべく生命としての源を捧げ、魔素と混ぜ合わせ魔力を生み出す。構えた先には合計8本の矢が浮かびあがり、今か今かと射られる時を待っている。


 昼間には4人いた見張りも今は2人に減っていた。大森林は夜の方が危険なのに何故か人数が減っていた。あえて夜だからなのか。雑魚はこいつらで対応して、危険な魔物が現れたら狭い洞窟に逃げ込む。合っているかは分からないがそんなところだろう。


「可能な限りは殺さないで。狙いは足、だよ……今だ!!」


 構えた存在しない弓弦に押し出されたかのように8本の矢は放たれた。


「っ!?」

「ぐぁ!!!」


 俺とピピンさんの息はピッタリで、矢がほぼ同時に冒険者に降り注いだ。

 話に夢中になってる様子を見せていた男は両足を貫かれ、もう1人は避ける素振りを見せたが間に合わず左足を貫かれていた。

 風を切る僅かな音や葉の揺れ動く様子を見て即座に反応出来たのを見ると、反応した方はそれなりに腕が立ちそうに感じた。


「レイ、私がいるのだから当然の結果。次。」


 内心ドキドキしていた為、成功したことにホッと胸を撫で下ろす。すると、まだ油断するなという意味合いの言葉を優しくオブラートに包んで渡してくれた。


「そうだね。走る足音だ……すぐに中から出て来るよ。」


 いつでも放てるように風の矢を待機させる。すると警戒しながら複数の男達が拠点から飛び出してきた。


「お前ら、一体なにがあった!!」


「魔物か!?」


「魔法だ…よくわからねぇけど、いきなり魔法が飛んできやがった。ぐぅ…ちくしょう。」


 そう言うと、腕の良さそうな方の男は痛みに耐えながら俺達の方を指差した。

 あの一瞬で矢が飛んできた方角まで確認出来るとは、やっぱりあの男は腕が立ちそうだ。早めに潰せてラッキーだったな。


「ピピンさん、いくよ!」


「ん。」


 あんまりのんびりしていると行動を開始されてしまう。戸惑って足を止めている今のうちに追撃の矢を放った。


「伏せろぉ!!!!」


 先頭切って拠点から出て来たガチガチの鎧を身に纏った男が声を張り上げ大声で叫ぶ。

 だが伏せたところで矢は足を狙って放ったものなので意味は無く、伏せる男達に降り注いだ。即死狙いで頭部に飛んできたら避けられたのだろうが、深読みしすぎだ。


「ぐぁぁ!」

「がぁ!!」

「くそっ!!」


 太股やふくらはぎを射抜かれ、その痛みに男達は叫び声を上げた。全身鎧で覆われた男と数人は無傷だった。


「あの鎧…魔法を完全に弾いた。あいつは厄介。」


「そうだね。もう一回いける?」


「余裕。」


 まだまだ騒ぎを聞きつけてワラワラと人間達は洞窟から飛び出してきていた。それをみた俺達は再度風の弓を放つべく、魔法を発動させる。


「次が来る筈だ!リーマン達は俺と正面に向かって突撃!真っ直ぐ走るなよ!他は怪我人を連れて一旦中へ退避!!」


 風の矢を放つ前に鎧男の号令に従い一斉に動き出した。


「こっちに何人か向かってきた!移動しよう………ん?なんだ?ピピンさん、何かがこっちに向かってきてる!!」


「……魔物。」


「くそっ!寄りによってこんな時に!ピピンさん、判断は任せるけど最悪妖精の国に逃げよう!!」


 移動速度からして逃げも隠れも出来ないと判断し、ミニミニフライパンを構えピピンさんの前に出る。

 木の上をガサッガサッと凄まじい速度で進んでくる音が聞こえてくる。風の槌をいつでも放てるように準備して、木が揺れるほどの何かがとうとう目の前に現れた。


「クギホォーーーーー!!!!」


「お前……あの時の猿か?」


 葉を激しく揺らしながら現れたのはキモ猿だった。


「オマエ、ニクナイ。オマエ、ノナカマネコ?」


 お前のことはもう食料だなんて思ってねーぜ。お前の仲間ってのはお前みたいな見た目の奴か?だな。


「……違う。この子と同じ妖精族なんだ。その子があの建物の中に囚われてるんだ。」


「ヤクソシダ!!オマエテツダッ!!クギルホォーーー!」


 お前と約束したからな……仲間を助けるの手伝うぜ!!!って感じに喋った後に、キモ猿は雄叫びを上げた。すると先程から感じていた気配が動きだすのを感じた。


「……まじかよ。」


 木々を派手に揺らしていたので先程までは巨大な魔物かと思っていたが、どうやらキモ猿の仲間が大量に移動していた為だったようだ。キモ猿の雄叫びで俺を囲むようにキモ猿の仲間達が大量に枝から飛び降りて姿を現した。


「イグクゥ!!!グボボフォーーーー!!!!!」


 行くぞオメェ等!!!!と言ったであろう後にキモ猿は雄叫びを上げて駆けだした。それに呼応して30匹はゆうにいるであろうキモ仲間達は動き出した。

 突然現れたキモ猿に(きも)を冷やしたが、これはこれは力強い味方が現れたもんだ。


「ピピンさん!チャンスだ!!キモ猿に乗じて俺達も突撃しよう!」


「ん。」


 ピピンさんの返答を聞いてすぐに俺達も駆けだした。するとすぐに冒険者達はキモ猿達とエンカウントしたようで、叫び声が響き渡った。


「な、何でこんなにいやがんだ!」

「知るか!」

「ヘナウーリーなど所詮2つ星だ!!群れとて恐れるな!!皆殺しにするぞぉ!!!」


 キモ猿はヘナウーリーっていうんだな。


 それはさておき、弱気と強気の入り交じった声を聞いて俺は足を止める。何故ならピピンさんを危険に晒さず、安全で尚且つキモ猿達にも出来れば死んで欲しくないので一旦援護に回ろうと考えたからだ。


「ピピンさん、キモ猿達も動き回ってる。誤射の無いように援護したいんだ。」


「だとしたら1本ずつ。」


「そうだね。集中していこう!」


 どうやら俺の気持ちを読んでくれたようで、ピピンさんは俺よりも先に風の矢を放った。

 ピピンさんの放った風の矢は木々を潜り抜け、キモ猿達に当たること無く冒険者の男の太股に突き刺さった。


 ピピンさんの矢は正確無比だ。猫の肉体で魔法適正が上がった俺でも見取れてしまう程に繊細な魔法を使う。俺も負けていられないな。


「退避!退避しろぉ!!」


 鎧男はキモ猿の多さと俺達の狙撃にこのまま強行突破は悪手だと判断して、怪我人を無理矢理引き摺って引き換えしだした。


「グボルフォ-!!!」


 だがキモ猿が一声あげると、拠点の入口を塞ぐように5匹のキモ猿が飛び出してきた。


「くそっ……回り込んでいやがったか!」


 これで外に残ってた奴らは一網打尽にできる。キモ猿達の手伝いをしにいこう。


 そう思い走り出した時、突如拠点の前にいる5匹のキモ猿の背後が赤く光った。

 そのすぐ後に爆発が起こり、キモ猿達は吹き飛ばされていく。


「ブイアン、あなたがいてなんて様ですか。早くこちらへ退避して下さい。」


「ダイア!ナイスタイミングだ!助かったぜ!!」


 キモ猿達が迂闊に動けずにいるうちに、ブイアンと呼ばれた鎧男と仲間達は拠点へと退避を完了させた。


「……ダイア。」


 ニコに大怪我を負わせ俺を殺し、そしてプップさんを捕らえバロンのコロニーを奪った張本人。その女を目前にした途端、抑えていた怒気に体が大きく震えた。


 


 

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