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黄根 第十一話 歪み



 プップさんの言ったとおり、昼ご飯は豪華なものだった。種類も多いし、密もたくさん使っているように感じた。

 そろそろ肉料理や塩っ気の効いたものが食べたくなってきてはいたが、それでも今日のプップさんの手料理は最高に美味しいものだった。


 昼飯を食べ終えた俺はすぐに魔法の練習をしにいく。


「風の矢!」


 ヒュッと風を切り打ち出された矢は丸太に辿り着くこと無く消えていった。その後絶え間なく打ち続けていると、さすがに体が重たくなってきた。地球の知識でいうとこのMP切れってとこかな。


「ふぅ、少し休もう。」


 汗を黄色い手で拭い転がって休んでいると、辺り一面に咲き誇る花の香りが届いてきて癒された。鼻が無いけどなんで香りが分かるんだろうか。でも鼻をくすぐる花の香りと爽やかな風、小川を静かに流れる音が気持ち良くて目を閉じる。


「休憩?」


 鈴の音のような愛らしい声が聞こえて目を開けると、ピピンさんが俺を見下ろしていた。


「うん。ちょっと魔法を使いすぎたみたいで体がだるくなったから休憩してたんだ。」


「賢明。前も教えたけど魔素を魔力に変換させるには生命エネルギーを必要とするから、無理して使いすぎれば体調も悪くなるし、死ぬときもある。」


 確かに説明はされたけど死ぬこともあるなんて知らなかったな。危うく根性で使いまくるところだった。


「これを飲んで。」


 微風で少し乱れた髪を耳にかけながらピピンさんは木や蔦で作られたような円柱のものを手渡してきた。

 起き上がりそれを受け取り、蓋に手を掛ける。液体が揺れる感覚からして水筒なのだろう。


「ありがとう。これは?」


「甘茶。密とプップが森で取ってきた薬草を煮たもの。生命エネルギーが回復する。……何してるの?」


「いや、蓋が開かなくて。」


 ちくしょう、人参の手は不便で仕方が無い。どこかの青いタヌキ型ロボのように指が無くても器用に何でも出来る仕様だったら良かったのに。


「駄目人参ね。かして。」


 ピピンさんは毒を吐きながら俺から水筒を取り上げると、ため息まじりに蓋を開けてくれた。


「はい。足手纏い野菜。」


 くっ。確かに足手纏いだが辛辣すぎるだろ。まぁピピンさんの場合言葉の少ないツンデレ特性の持ち主なのは分かってるから、他の人に言われるよりは遙かにダメージが少ないのだが。


「ありがとう。…………うまっ!!すごいよこれ!!プップさんが作ったの?」


「……違う。誰でもいい。誰が作ろうと関係ない。」


 キターーー(・∀・)!!!!

 出ましたツンデレーション!プップさんじゃなかったらピピンさんしかいないだろ!それと視線をそらしながら頬を染めるのやめて!!こっちまで恥ずかしくなってくるから!


「ありがとう、ピピンさん!」


「…………別に。」


「何だか元気が出てきた気がする!よーし、練習再開だ!」


 俺はスクッと立ち上がり直ぐさま風の矢を連射させる。そして数発放ったところでぶっ倒れた。……これ前もやったな。

 ピピンさんの思いやりが嬉しくてテンション上がったからとは言えアホすぎるだろ。


「お調子者のせいで甘茶が台無し。困った野菜ね。…………少し休みなさい。」


 ピピンさんが再度ため息まじりに何かを言っていたが、激しい眩暈のせいでうまく聞き取れなかった。ふわふわと体が浮くような浮遊感に身を任せた後、俺は意識を手放した。









ーーーー「ピピン、早かったね~!あれ~?レイくんどうしたの~?」


「魔法の使いすぎ。二度目よ。間抜け野菜。」


「ありゃりゃ~。レイくんは天然だからね~。まぁ魔法の練習始めたばかりだから加減が分からないのは仕方ないさ~!それにしてもピピンはほんとにレイくんに優しいね~!」


「プップ、これは優しさでは無いわ。母様の言い付けだから仕方なく運んだだけ。」


「ふふふ~。でも母様の言い付けには甘茶を作れとか倒れたらベッドに運んで布団を掛けてあげて~なんてのは無かったと思うのだよ~!」


「何が言いたいの?……私はレイに早くここを出てって貰うためにやってるだけ。」


「そうだよね~!ふふふ、ピピンも大変だね~!今お茶入れるからね~!」


「……。」





「うぅ、朝……じゃないな。」


 窓から覗かせる景色は夜となっていた。妖精の国は不思議な事に、外界と同様に夜が訪れるのだ。


 前回倒れたときは翌朝起こされるまで寝続けてしまったが、今回は数時間で目が覚めた。これはピピンさんがジューワットの密や薬草で作ってくれた甘茶のおかげだろう。


 ベッドを降りようとすると脚が中々床に届かず、バランスを崩しずっこけてしまった。

 足が短いのはかなり不利だ。


「プップ、レイが暴れ出したわ。とうとう本性を出した。」


 テーブルまでひっくり返してしまい、派手に音が鳴り響いたのを聞いたピピンさんが戸を開き呟いた。

 頭にタオルを巻いてるところを見るとお風呂にでも入っていたようで、よく見ると頬もほんのり赤く戸惑う程に色気を醸し出している。だが発言は奇抜だ。


「ピピン、レイくん起きた~?」


「プップ、お風呂上がりを狙う変態野菜はすぐに倒すから安心して。」


「違うから!転んだだけだから!!」


 せっかく目覚めたのにまた気絶させられては堪らないので慌てて否定すると、ニコニコしたプップさんが顔をひょこっと出す。いやこれはニコニコではない。ニヤニヤしている。

 

「レイくんおはよ~!あまり無理しちゃだめだよ~?」


「うん。2人共、迷惑かけてばかりでごめん。」


「そんなことないさ~!それにしてもレイくん、今回は目が覚めるの早かったね~!」


「……。」


 なるほど……これだったか。ニヤニヤしてたのはピピンさんを茶化すチャンス到来のワクワクが全面に押し出されてしまっていたからか!中々の悪だぜプップさんよぉ!


 だがピピンさんには甘茶を貰った借りがあるので、プップさんには悪いが今日のところはピピンさんを援護させてもらうぜ。


「多分ピピンさんが持ってきてくれた甘茶のおかげです!元気ピンピンさんです!ぶべらぁっ!!」


「あまりふざけていると次は切り刻む。」


「すみませんしたぁっ!」


 俺が頭を下げるとピピンさんは部屋を出ていった。陽動作戦……成功だな。


「レイくん大丈夫~?」


 俺の手を取りプップさんが起こしてくれるが、プップさんの柔らかさにドギマギした。プップさんはいつも優しいなぁ。


「ピピンは恥ずかしがり屋さんだからね~。本当は凄くレイくんのことも大切に思ってるはずなんだけどね~。」


「俺もそれは実感してるよ。よーし、滾ってきたぞ!ピピンさんの思い遣りに報えるように魔法の練習頑張ろう!」


「そうだね~!わたしはレイくんがいてくれて嬉しいよ~!ピピンも楽しそうだもん!さぁさぁ、お風呂に入っておいで~。晩御飯温めておくよ~!」


「ありがとう。」


 俺はプップさんの優しさに甘え風呂に浸かることにした。

 そして風呂を上がると良い香りが鼻をくすぐる。もちろんプップさんの手料理だ。少し遅めの晩御飯を食べ終えた俺は、二度目の就寝を迎えた。







ーーー「レイくんすぴすぴ言ってたよ~。可愛いよね~。」


「プップ、それは幻覚。可愛くは無い。」


「ピピンはほんと素直じゃないね~。」


「……私はいつでも素直。」


「ふふっ、有る意味素直だけどねぇ~。」


「……プップ、何が言いたいの?」


「何が言いたいかぁ。ピピン…………あなたレイくんのことが好きでしょ?」


「…………私にそんな感情の持ち合わせは無い。そんなことくらいプップも知ってるでしょう?」


「…………そう。でもピピンが楽しそうで私は嬉しいよ~!!レイくんもピピンと話してるとき楽しそうだもん。本音を言えばピピンだってそうでしょ~?」


「………………………………ん。つまらなくは無い。」


「ふふっ。ピピン可愛いね~。さぁさぁ、お姉ちゃんが良い子良い子してあげるからおいで~。」


「プップは妹。私が至上の姉。」


「そうだね~。明日もレイくんとの練習でしょ~?早く寝ようね~。」


「子供扱いしないで。私は私の意思で寝る。おやすみ、プップ。」


「うん。ピピンおやすみ~。」




 






 ピピン



 あのね



 わたし



 じぶんがわからなくなっちゃった



 わたしが見つけたの



 ピピンじゃない








「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。……レイくん返事してよ。答えてよ。わたしはどうすればよかったの?心はどうしたらいいの?ねぇ……答えてよ。」





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