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魂 第二話 塊魂

祝、第二話!



「うほっ。何だあれ…でけぇ~。」


 人魂さん達と旅をすること早………どのくらいか分からない。とりあえず結構な距離を皆さんと共にフワフワし続けて頑張っていると、巨大な鳥居の様な物が見えてきた。

 様な物というのは、鳥居とは少し形が違っていたからだ。鳥居は横棒が2本なのに対して、遠くに見えている巨大なあれは横棒が4本ある。

 そして横棒の先端には鈴や紐のような物が連なって下がっていた。


 あれが何かしら意味がある場所のような気がして俺はついつい急いで進んだ。そして遅れながらも健気に頑張る人魂さん達を思い出して戻るという無駄な事をしながら鳥居を目指した。


 近付くにつれ鳥居のデカさは際立っていき、明らかに建築基準法違反だろって感じの建造物だった。

 建築基準法知らないけど。


「やーば。いくら何でもデカすぎるだろ。スカイトリィーって感じか。な、金子さん?」


「……。」


 返事は無い。ただの魂のようだ。


 鳥居の真下まで来た俺はそのあまりの大きさに立ち止まってしまっていた。

 あれ?金子さんがグイグイこないな。返事はしないけど実は心を許してくれていたのかな。やだ、嬉しい。


 だがそんなことでは無かったようで、金子さん達は俺の横をすり抜けて先へ進んでしまった。

 あれ?まじでただの先導にされてただけ?


 ヘコみながら今度は金子さん達の後について行くと、鳥居の柱の脇にテーブルと人影があった。

 とうとう第1村人発見か!?


 綺麗に一連に並んでいる人魂さん達に続いて並ぶ。そして簡易な石のテーブルの向こう側にいる人が気になって覗き見る。


「…………悪魔じゃねーかッ!!和洋折衷なんか!?あぁ!?」


 もうパニックだ。意味が分からない。めちゃくちゃ和風な鳥居の向こうには紫の人。コウモリみたいに羽根の無い翼がチラチラと見えるし、全身紫色だし、頭から(ねじ)れた角が2本生えてるし。


 だた何となく凶悪そうに見えない。きっとプラスチックみたいな安っぽい眼鏡のせいだろうな。


「あいつインテリ気取りなのかな???」


「…さっきからうるせぇんだよお前!!!ちょっとこっちこいや!!!!」


 ぐはっ!聞こえてた!!!!しかも呼び出されたけどこれヤバいんじゃね?地獄ランクグレードアップされんじゃね?地獄の校舎裏に連れてかれるんじゃね?!


 は、はいぃ~!!と情けない声を出しながら列を外れて悪魔さんのところへ向かう。

 あっ、金子さんだ。ちょうど金子さんの番だったか。悪いことしたな。


 テーブルの前へ辿りつくと、悪魔さんはゴホンと咳払いした後にクイッと眼鏡の位置を直す。

 そしてブチ切れしたのが嘘のように丁寧な口調で喋り出した。なんだ、ニセインテリか。インテリ気取りめ。


「ゴホンッ。えー、手続きで大変忙しいので邪魔をしないで頂きたい。法令に基づき死者証明書の確認をします。死者証明書を提示して下さい。」


 クイッと眼鏡をいじりながら悪魔さんは死者証明書の提示を求めてきた。


 なにそれ。死者証明書なんて聞いたことないし、というか眼鏡新調した方が良くない?さっきからズレすぎだろ。


「死者証明書って何ですか?」


「はははっ。分かりました。そうまでして認めないということは余程未練があったのですね。まぁ地縛してないって事はその程度なんでしょうけど。」


 よく分からない。よく分からないけど癪に障る言い方しやがるな。悪魔さんから悪魔君にレベルダウンだ。


「いやいや。そうじゃなくて、死者証明書自体の意味が分かんないのよ。」


「…………流石にそれは笑えない冗談ですね。そこまでいくとやり過ぎです。ハッキリ言いましょう、つまらないです。早く死者証明書の提示をしなさい。」


 駄目だ。話になんねぇ。


「見たとおり裸一貫だぞ?手ぶらなんだから仕舞いようが無いし。」


「死んだ際に受け取っている証を取り出すだけです。これ以上ふざけていると強制提示させますよ?いいんですか?!」


 知らぬものは知らんと言っているのに、悪魔君は犯罪者を取り締まるかのような対応をしてきた。いい加減イライラする。


「だーかーらー!!良いんですかも何もそんなもん持ってないし貰ってないし初耳だっての!!!!」


「いい加減にしなさい!!後がつっかえてるのが分からないんですか!!ならば死者処罰法第116条により強制提示させます!!!」


 何だその法律は。やれるもんならやってみろってんだ!俺の()は潔白だぞ!!


 と強がってはみたが後悔してます。だって悪魔君が俺魂に手を突っ込んだ途端にアバババッ!!!……だぞ?

 スタンガンくらうとこんな感じなのかな?って位にアバババしたからな。後悔してます。


「ん~。……無いね。」


「……ん?」


「何で死者証明書無いの?有り得ねぇし。どーすんだこれ。」


 あっ、素に戻りやがったな。仕事なら徹底しろよ。


 悪魔君はまたしても咳払いして眼鏡を直した後に、少々お待ち下さいといって古くさい電話のようなもので誰かと会話し始めた。


「あっ、総合のドーリアです。ちょっと問題がありまして。いやっ、違います違います!()()云々(しかじか)でして、あっはい。すみませんけど宜しくお願いしまーす。」


 ……こいつドーリアって名前なんだな。

 

 電話のようなものを切った悪魔君は、別の者に引き継ぐから待ってて下さいといって石のテーブルに戻り眼鏡の位置を直しつつ通常業務をしだした。

 時たま元ヤンみたいな対応しやがるくせに。


 しばらく悪魔君や人魂さん達を見ていると、来た道とも人魂さん達が向かっていく先とも違った所からこちらへ歩いてくる人影が見えた。


 俺ってどーなるの?死ぬの?死んでるけど。そんなくだらない一人ツッコミしていると、その人影がハッキリと確認出来る距離まで近付いてきた。


 それは着物のような衣裳を着た超絶美人な女性だった。

 白肌美人さんなんだけど、額から短い角が2本生えていた。この地獄やっぱり和洋折衷だ。というかごちゃ混ぜだな。一貫性も統一感も無い。

 俺はハッキリと設計者に言ってやりたい。嫌いじゃ無いぜ……と。


「初めまして。死役所特別死者科のリョカと申します。失礼致します。」


 そういってリョカと名乗る美人さんは許可を取ること無く俺魂に手を突っ込んだ。もちろんアバババッ!!!!!だぜ。覚悟が必要なくらいには痛いんだから、アバるときはアバるっていってよ。


「どうやら本当に死者証明書をお持ちで無いようですね。申し訳ありませんがこちらでは処理できません。担当者を調べますので少しお話を聞かせて下さい。」


 俺はリョカ姉さんに出身地や死因や死亡場所などを細かく聞かれた。

 するとリョカ姉さんは「ではお待ち下さい」と言って電話をかけ始めた。


「そうです。……いえ、本来ティルトルティア様なのですが………………回収…………そうです。キーナルメナン様………………。」


 声が小さくてよく聞き取れないが、大事にならないといいのだけれど。

 電話を切ったリョカさんが振り返り、吸い込まれる程の美しさでこちらを見詰める。


「お待たせしました。担当者が判明致しました。詳しい話は移動してからにしたいと思います。宜しいですか?」


「まぁ、はい。」


 クールなリョカさん……いやっ、リョカ姉さんは事務的な人っぽいし、騒いでも事務的に処理されるだけだろう。いやっ、騒いだら事務的な処理だけでは済まないかもしれない。角あるし。諦めて素直についていこう。


「では参りましょう。」


 歩いて…いやっ、浮いて移動するのかと思ったがリョカ姉さんは再度俺魂に手を突っ込んでアバババさせた。するとようやく見慣れた荒廃しきった景色を置いて、俺達はどこかへと転移したのだった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「んあ?……今度は天国か?」


 間抜けな声を上げながら意識が覚醒すると、リョカ姉さんにアバババさせられて連れて来られたのは白い世界だった。

 まるで時が止まっているかのような不思議な空間には、不自然なほどに何も存在していない。


「とうとうきたか……夢だったんだ。精神と時の部屋。」


「お静かに願います。」


 すると着物姿がバッチリ似合っている黒髪ボブ乙女のリョカ姉さんが、何も無い白き空間へむけて頭を下げた。


「死役所より参りました。特別死者課のリョカと申します。」


「ぷふぉ。今行くの。」


 未だにリョカ姉さんは頭を下げ続けている。すると前方の空間が眩く輝き出した。

 やっぱりここは天国で神様登場なのか?


 ドキドキして今か今かと閃光が消えるのを待つ。やがて静かに光は消えていった。

 そして、どこからかガチャッとドアを開いたような音がした。


「間違ったのこいつかの?」


「はい。地下の転生総合カウンターで保護致しました。」


 リョカ姉さんはまだ頭を前方へ下げ続けている。だが俺はそれどころじゃ無い。転生総合カウンターってなによ。総合がつくような立派なカウンターじゃなかったぞ。


「そうかそうか。ほほっ、これは珍しい魂じゃの。手が生えていよる!」


 どこから話し掛けてるんだ?と思い周囲を見渡そうとすると、

前方ではなく俺の右側に空間を切り取ったかのような扉を閉めてる途中の幼女がいた。

 神様の娘か?


「ど、どうも。」


「おまえの名は……ぷふぉっ、死んどるから名前なんぞ知らんか。」


 ん?なんか分からないけどイラッとしたぞ?


「いやっ、完全に記憶があります。本当に死んだというのなら前世の名前ですけど………濱崎 想(はまさき そう)です。二十歳です。」


「濱崎レイじゃのうてか?霊だけにの。」


 あれ?この子なんだかイラッとするよ!?気のせいじゃないよね?!


「まぁジョークはここまでにしとくかの。死して尚そこまで鮮明な記憶があるとは魂の塊じゃの。ほほ。」


「魂の……塊?それは一体何なんですか?」


 俺の魂変なのかな。めっちゃ不安になるぞ。


「簡単に言うと字が似てるなぁと思って口にしただけじゃ。」


「は?」


「過ぎた話じゃ。気にするでない。」


 ジョークはここまでにしとくかのとか言ってたじゃん。


「ジョークはここまでにしとくかの。」


 ふざっけんな!!!もう騙されないぞ!!なんで終点が終点の前に来やがんだよ!!


「おまえ……レイの魂はかなり珍しいのじゃ。変わってよる。レアじゃ!レアなレイじゃ!」


 珍しい?やっぱり俺の魂変なのかな。記憶残っちゃってるし。つーか、レイじゃねーし!想だし!


「そんなに変わってるんですか?」


「うむ。魂のくせに自我があることもそうじゃが、何より喋りよる。内容はつまらんけどの。」


 あっ、そういえば普通に会話出来てるな。やっぱり金子さん達が喋れなかったって事か。

 最後のは聞かなかったことにしよう。キレそうだ。


「そして手が生えていよる!!!かなりキモイぞ?ほほっ、レイがキモイぞ!!ぷふぉふぉ!!キ・レイじゃのうてキ・モイじゃ!!!!レイやめてモイにするかの?ぷふぉ!!パワーハラスメントにされてしまうわ!!!これ以上の愉快はやめるんじゃレイ!!!ぷふぉ!!」


 くっ……何なんだこの幼女。性悪幼女め、神じゃ無くて悪魔だろ。あとモイはなんかやめてくれ。つーかそもそもレイじゃねーし。


「……笑っているところ悪いんですけど話の続きしてくれます?」


「ぷふぉ。……す、すまんのモ……レイ。レイは面白い奴じゃの。余は死と転生の管理者じゃ。知っとるじゃろうけど、レイは死んだのじゃ。そしてその結果つるっつるの手と顔がついたキモい魂に……ぷふぉ……なってしまったのじゃ。ぷふぉ…。」


 くっ。……改めて言われるとくるものがあるな。やっぱりあの時死んだのか。つーか笑ってんじゃねーよ。生やしたくて生やしてんじゃねーし。レイじゃねーし。いい加減にしとけよ!!


「すみません。因みに何で死んだんですか?死因は?」


「間違えちゃったみたいなのじゃ!すまぬ!こんなこと初めてのことじゃ!そもそも地球とやらは余の担当ではないのじゃ。しかしどうしてか余の回収班が扉を間違えたようなのじゃ。やはり忙しいとはいえ外注に出すんじゃなかったの。じゃが誰にだって間違いはある……許せ。まぁの、最近ゲームが忙しくてのぉ……中々キラーマリンの装備が集まらないんじゃ。ティルトルティアのアホに借りたゲームは楽しくてたまらんのじゃ!!あっ、因みにあえて名付けるなら死因は誤殺による魂離脱じゃの!ぷふぉ…。」


 えぇ………なにその軽い感じ。誤殺の原因がゲームで忙しいなんて有り得んぞ!!回収班ってなに!?外注って何!?パニックだよ!ぷふぉ…とか吹き出してんじゃねーよ!!


「そ、そうっすか。誤殺って事は…生き返らして貰えたりとかって出来るんですかね?」


「ざんねーんじゃ!すでに体が燃えて無くなっているのじゃ!!!灰じゃ!!スッカスカのカッスカスじゃ!!…………間に合わなかったのじゃ。」


 最後の一言……幼女は今までのジョークを言ってる時のケラケラと笑っていた表情とは一変して、途端に悲痛な面持ちをしていた。言葉は無くとも本当に申し訳ないといった感情が伝わってくるほどに。

 

「悲しんでおる身内や仲間達には本当に申し訳ない事をしたと思っておる。すまん…と皆に伝えたいくらいじゃの。」


 俺にはねーのかよ!!殺されたの俺なんですけど!!!!謝れ!!俺に謝れ!!!いますぐにだ!!


「間に合わなかったって……じゃあ俺はどうなるんですか!?一生このまま!?」


 一生このままっていうか生涯は終えてるけどね。言いながら違和感はあったよ。でもパニック真っ只中だ。メダパニなんて軽いもんじゃねーぞこりゃ。

 今なら卵かけご飯にソースを間違えてかけてても気付かない自信があるね。


「そうじゃのぉ~。……リョカとやら、其方は特別死者課だったな?」


「はい。課の長を務めております。」


「代わりは用意出来そうか?」


「申し訳ありません。現在では不自然な者しか用意出来そうにありません。技術的に言うとあと千年もあれば何とか……。」


 何?何の話だ?課長が耳に残って他が入ってこないよ!


「レイよ……と言う事じゃ。あと千年だけ待つが良い。そのつるっつるでな。ではさらばじゃ。」


「ちょっと待ったぁ!!!!だけって……千年も待てるわけ無いでしょ!!そもそも俺に落ち度は無いんですからもう少し頑張って下さいよ!!それでも神様なんですか!?」


「神?そんなものは現実に存在せんぞ。ゲームの中だけの話じゃ。ゲームの中では必要不可欠じゃが、余はただの死と転生の管理者である。地球にて復元させようにも素材が無ければ話にならん。レイの肉体は燃え滓になってしまっとるのじゃ。不自然な存在になったりすれば余は怒られてしまうのじゃ。乗っ取りも違法じゃ。怒られたらゲーム禁止どころの騒ぎじゃないのじゃ!!つるっつるの魂よりもゲームじゃ!!!」


 偉そうにしてたくせに神様じゃないのかよ!つーか、ゲームのことは一旦忘れろや!!!


「他に…他に方法は無いんですか!?」


「あるにはある。だが余はキラーマリンの装備を集めねばならんのじゃ!!!!レイよ……わかるな?」


 くっ。この期に及んでほざくか性悪幼女め!!わかるわけねーだろ。何凄んでんだ幼女が!!


「あるにはって……それはどんな方法ですか!?」


「別に大したことでは無い。レイの魂は濃すぎる。地球でそのレベルの魂を宿せるその依り代など中々作れるものではないのじゃ。よって、その魂が容易く宿せる場所を探せば良いだけの事じゃ。リョカとやら、それなら出来るな?」


 地球ではない世界?そんなものがあるのか?


「はい。ティルトルティア様のモルフィーナなら地球との魂の比重だけで考えれば間違いないかと。それにモルフィーナなら依り代も必要ありません。」


「と言う事じゃ!達者でな、レイよ!!」


「ちょっと待ったぁーーー!!!!」


 さっきから性悪幼女急ぎすぎだろ!!そんなにゲームが大事なのかよ!!俺の魂よりキラーマリンが大事かよ!!ふざけんな!!


 こんな適当な管理者の言いなりになっていたらどうなるか分かったもんじゃ無い。


 こっちは被害者なんだぞ!!!!!!!



なんと転生を司る人物はど定番の幼女でした(-_-;)


レイくんの転生はどうなるのか!?こうご期待!


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