魂 第五話 管理者からの祝福の詳細
「レイよ、余はまだ食しておらぬが誉めて遣わすのじゃ。甘味は余の大事な楽しみじゃからの。」
「はぁ、ありがとうございます。」
もう醜い甘味戦争は止めにしてくれるということなのか?
「ところでゴブ・イフリートとは何ぞ?」
ぐはっ。リョカ姉さんとのbattleから一転、予想外の軌道でレバーを抉りに来やがった。まさか恥ずかし責めにでもする気か?!
「……えーと、赤かったんで炎っぽいかなって。強そうだし。」
聞かないで!!やめて!!!こんなの答えは明白だったじゃないか!!
「火を使うことも出来ぬのにかの?」
知ってるよ!!本人が一番知ってるよ!!
「もちろん知ってましたけど、その方が迫が付くかなぁと思いまして。」
「余には全く分からぬの。盛大に笑いを取りにいってるのかと思っとったのじゃがの。あれはまさに抱腹絶倒じゃった。」
いやいや。あのタイミングで笑いを取りにいくわけないじゃないの。もし笑いを取りにいってるとしたら肝が据わり過ぎてるだろ。つーかあの時に抱腹絶倒してたんだとしたら、流石にキレるけどな。
「ふむ。……もしやレイは魔法が好きなのかの?」
唐突にキーナルメナンはイかれてない質問をしてきた。ようやく普通の会話を出来る路線に戻ったか。このまま無駄な切り替え装置が働かない無いといいけど。
「魔法は……使ってみたいとは思いますね。地球には無かった力ですし。」
「ほー、地球とやらは甘味は進んでるというのに……変わった星じゃの。」
「キーナルメナン様、地球の存在する区域にはあまり精霊等がおりませんので仕方がない事なのです。」
これは興味津々です。あたかも精霊の存在が当たり前のような会話ですな。
「精霊って、そんなものが存在するんですか?」
「ぷふぉ。当たり前じゃ。モルフィーナとやらは精霊……特に微精霊の力に依存しておるようじゃ。以前ティルトルティアが自慢気に話しおったわ。」
「レイ様、魔法が発動されるところを見たことはありますか?」
「あぁ、何か人間の魔法使いっぽい子が使ってましたね。」
「それは微精霊の生み出した魔素を用いて、望んだ現象を具現化しているのです。」
ほほぅ。ではダイアが火の塊を放ってきたのは微精霊の力を借りて火を具現化して使っていたということか。
「恐らくモルフィーナの世界ではそういった原理を知って魔法を使ってる者は少ないでしょう。もしかしたら人間は一人も知らずに使っている可能性すらあります。ですから微精霊を漠然と集めて発動している程度の力しか使えていないのが実状です。まぁ知っていたところで精霊は気難しい存在ですので、殆どの者が扱えないでしょう。」
MPみたいに体内に宿した力じゃ無くて、外の力を借りて発動させるって事か。
「因みに精霊って見えるんですか?」
「見えるとも見えぬとも言えるの。条件が整えば見ることが出来るのぅ。精霊自身が見せても良いとすれば見えるし、契約すれば勿論見えるの。……ピューヒエル。」
キーナルメナンが手招きをする。だがそちらを見ても何も見えなかった。
「見えぬじゃろ?ピューヒエル、此奴は余の友達じゃ。特別に姿を見せてやってくれぬかの?」
「仕方ねぇーぎゃ。ギガント特別だぎゃ。スペシャルサービスぎゃ!」
何となくヘンチクリンな印象を持たせる声が響くと、キーナルメナンの肩に鎧に包まれた鷹のような鳥が現れた。
声よりも発言の方が奇抜だけど。
「ぷふぉ。驚きすぎじゃの。これは時空を超える超絶レアな妖精のピューヒエルじゃ。ピューヒエルのお陰でおやつが食せるからの。余の人生において最大の友じゃ。」
「流石はキーナルメナン様です。素晴らしい精霊ですね。」
先程までお菓子大戦争を起こした張本人とは思えぬ顔でリョカ姉さんは褒め称えた。
「精霊って聞いたので、人間に羽を生やした姿を想像してましたけど、違うんですね。」
「それは妖精じゃの。まぁ妖精も人間からすれば似たようなもんじゃろうが全く別物じゃ。端折り簡単に言ってしまえば、精霊は力の源であり妖精はあくまでも種族といったところかの。まぁ滅多にお目にかかれぬじゃろうが妖精も友となれば力強い味方みたいじゃがの。」
ティンカーベルは種族。でも人間には見えない。分かりやすいぜ。
「なるほど。でも何で地球に精霊が少ないんですか?」
「地球とやらの存在場所が精霊の集まる条件が薄いだけの事じゃ。だが微精霊が全くいないということは有り得んからの。地球でも少しは魔法を使う者も居ったのでは無いかの?」
「いや、魔法なんて本やゲームの世界の話ですね。」
「なるほどの。レイからすればモルフィーナがゲームの世界のようなものなのじゃの。だがゲームのような魔法が精霊の全てでは無いのじゃ。地球にも特異な力や才能を示す者はおったじゃろ?」
特異な才能か。占い師とか合気道の達人とかかな。スポーツ選手も有る意味人間離れしてるっちゃしてるし。
「まぁ一般人とは違った才能を持ってる人はいましたね。」
「ふむ。恐らくそれも僅かながら自然と微精霊の力を借りておるはずじゃ。小さな事にも微精霊は関わっておるからの。それを微精霊が密集しておるモルフィーナでは無意識かはたまた違った見解でか微精霊を使って魔法を発動させておるのじゃろ。微精霊の力で身体能力を向上させて居る者もおるじゃろうしの。」
「と言うことは俺もモルフィーナなら魔法が使えるんですか!?」
「知らぬ。」
「へ?」
「精霊や微精霊はその世界の存在している場所に依存しておるとは言ったが、個人の才が最も影響するのじゃ。微精霊にも愛されぬ者は永久に魔法は使えぬ。精霊に愛されれば容易く周囲を圧倒させる魔法も使えよう。リョカよ、モルフィーナの魔法使用者のデータは分かるかの?」
「はい。生活上の魔法も含めれば98%となっております。」
「ぷふぉ。優秀じゃの。」
「それ以上の魔法となりますと、25%弱となっております。」
ということは生活上の魔法がよく分からないけど、四人に一人はそれ以上の魔法が使えるって事か。
「ぷふぉ、ティルトルティアが調子に乗るわけじゃの。まぁ良い。で、レイはどうするのじゃ?」
「どうすると言いますと?」
「転生じゃ。」
いきなり本題かよ。唐突だな。
「……よく分からないんですけど、どうするって聞くという事は選択肢があるんですか?」
「うむ。レアなレイは甘味を教えてくれるレアさも持ち合わせておる。今後も甘味を教えると誓うか?」
「はぁ。そんなことで良いなら俺の知る限りで教えますよ。」
「よくぞ言ったの。では教えてやるかの。」
そういってキーナルメナンは紅茶のようなものが入ったカップを置き、イスから下りると手を後ろに組み歩き出した。
一体何を教えてくれるというのだろうか。
「レアなレイが転生すると本来どうなるのかを教えてやろう。リョカよ、頼んだぞ。」
お前が話すんじゃねーのかよ!何なんだよさっきの意味深な動きは!!
「はい。レイ様が初めてこちらに来たときは特例でした。ですから、あのまま転生すれば記憶は残ったでしょう。しかし今回は別物です。普通に生き普通に死んだので、適切に対処されますので記憶は残りません。」
「え?でも今も全然記憶があるんですけど。」
「それはレイ様の魂が異常だからです。極々稀ですがそういった事はあります。顔と手まではありませんが。」
んー、よく分からんな。魂の塊の俺なら記憶が残るって事でも無いのか?
「その通りです。」
え?その通りってなに?!やだ怖いこの子!読心術の達人?心丸裸にされたわよ。そういえばニコにも読まれた事あったな。俺のせいか?サトラレ?
「レイ様の知識に合わせて簡単に言ってしまえば、リセットをかける事無くこちらに来たからです。死後、魂は必ずリセットされます。もちろん生前の善行による徳などは加味されますが、それ程大差はありません。ですからレイ様の魂が特異な体質によるものだとしても、本来ここで一度手をもぎ取られ、顔を削ぎ落とされ純粋な魂として転生して頂くということです。」
こわっ!!もぎ取って削ぎ落とすんかい!!精霊や魔法はあるくせにやり方が原始的だな!!!!
「まぁ基本的にはそんなところじゃの。じゃが余はレイに力を与えた。」
ようやく……よーーーやくキーナルメナン自ら喋り出した。駄目幼女め。
「……その力というのは?……というかランダムだから知らないんでしたね。」
「知っておる。今はな。」
……怪しい。何で今はなの所で顔を逸らしたんだこいつ。もしやおやつの事がある今はじゃないだろうな。もしくは前回ゲームで忙しかったからか。どちらにしてもホントにやべぇぞこの自己中幼女。
「じゃあ、どんな力なんですか?」
「ピューヒエルの力も借りたから素晴らしい力じゃの。お主の魂そのまんまでいくらでも転生出来る力じゃ。」
……うーん、これはリアクションに困ったぞ。
驚こうにも想定内だったし、むしろ俺自身の魂の強さからそうなってるものかと思ってたせいで、キーナルメナンがくれた力とやらが他に無かった事に残念ささえ感じてしまっている。
「その事に関しては以前にも考えてたんですけど、要するに記憶が残った状態で転生出来るって事ですよね。それって有る意味不死と同じですよね。」
何故そんなことを聞いたのかと言えば、正直喜んで良いのか分からなかったからだ。
深く付き合えば付き合うほどに別れはキツいものとなる。バロンやニコがいい例だ。不死の如く生きていれば必ず大切な者の方が先にこの世を去っていく。
それについて自分だけ良ければ全て良いなどと都合良く考えられる能力が俺の脳には備わっていない。
「そう考える事も出来ます。それに魂がリセットされないというのは大きな利点があります。まず記憶が残るという点から言いますと、前世での記憶を引き継ぐ事とは経験を引き継ぐということです。簡単に言ってしまえば、身についた剣の腕前を忘れる事無くいられるでしょう。まぁ身体能力は個体差がありますので同様の力を使えるわけではありませんが。」
まぁそれは予想していたというか当たり前のような事だから驚きはしなかったが、改めて言われるとかなりの利点ではあるな。
「そしてもう一つ利点があります。それは魂の格です。」
「格……ですか?」
「はい。本来生きている間に魂は成長していきます。そして格が上がった魂は次回の転生に良い影響をもたらしますがそれもその時限りで、その次の転生には影響しません。しかしレイ様の場合既に格も高く、リセットされることもありません。格が高ければ色々と得をするでしょう。もしかしたら次にお会いする時には尻尾が生えているかも知れませんね。」
それは得じゃない。生えてるかも知れませんねだなんて、リョカ姉さんも冗談とかいうんだなぁ。冗談……だよね。
「まぁ転生についてはそんなもんで良いじゃろ。してレイよ、ここからが本番じゃの。レイに与えた力に名前をつけたのじゃ。」
「はい!先生お願いします!!」
はっ!テンションが上がってつい調子に乗ってしまう悪い癖が出てしまった。
「ぷふぉ。先生の。それよいの。」
意外にも気に入ってるし。
「では発表するかの。レイに与えた力……それは無限転生じゃ!!!!」
「無限転生……。」
そのまんまじゃねーか!と思ったがここは黙っておこう。泣かれても面倒くさい。
「格好いいじゃろ?センスの塊じゃろ?」
「確かに格好いいですね!」
「レイに誉められたところで嬉しくないがの。」
「もっと他に細かい話も聞きたいんで、お願い出来ますか?」
「嫌じゃ。」
この野郎!!せっかく誉めてやったのに扱いが雑だぞ!
「いやいや、折角なんでキーナルメナン様からもっと細かく説明して下さいよ!!」
「嫌じゃ。もうタイムオーバーじゃ。そろそろ緊急クエストが始まるという噂を聞いた時間になるのじゃ。」
でたー。またゲームかよ駄幼女め。
「そうですか。折角美味しいお菓子を教えようと思ったんですけど……残念です。」
「おおお、お菓子じゃと!?むむむぅ、余は寛大じゃ。小姑のように煩いレイに説明してやるとするかの。」
小姑なんか知らんだろ。幼女なんだから。
「先程も言ったが無限転生というのは読んで字の如くじゃの。好きなだけ死んで好きなだけ新たな生を楽しむとよいのじゃ。しかし知っておるだろうが転生する生物を選ぶことは出来ぬのじゃ。その方が見てて笑えるからの。」
ん?なんかまた最後に余計な事を口にしていた気がするな。木刀を持ってなくて良かったような、そんな気がしてならない胸のざわめきはどこから来たのだろう。もちろんキーナルメナンから来たのだろう。忘れよう。現在魂である以上は詮無きことなのだ。忘れなくては病んでしまうからな。
「それと無限転生とは言ったが、無限にも条件があるの。」
キーナルメナンはわざわざ少し距離のあるテーブルに戻り紅茶を口にした。(※これは幼女なりの明らかな演出です。)
不必要な距離を歩いたせいで必要以上に時間がかかり、面接だったら冷や汗かきそうなほどに間が空いた。
「…………………………条件ですか。」
※……が多いのはキーナルメナンの紅茶待ちに会わせてあげたからです。
この人ほんとに偉いの?
読んでくれてありがとうございます!!




