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小鬼 第八話 底ノ知レタ覚悟

またまた投稿(^^ゞ




「人間達ガ攻撃シテイル。」


「魔物でも出たかな?」


 まだ人間達は動き出していないようで、魔法の爆発音が聞こえてきた。作戦会議でもしようかと思っていたが予想外のことをバロンが口にした。


「レイ、便乗シテ数ヲ減ラスゾ。」


「え?……人間の?」


「覚悟ハ決メテキタノダロウ?」


 バロンがゴブリンのくせに理詰めしてきやがった。揚げ足を取るとは大人気ないゴブリンだな。


「も、もちろんだ!」


 も、餅はロンドンで食べてみたいんだ!の略のつもりで言ったのだがバロンは納得してくれてすぐに動き出した。馬鹿め!バロンが納得したのは餅を食する場所だ!

 俺は殺さないからな!百歩譲って良いとこ打撲だぞ!!


 心の声を声帯が見事に制御してくれたので無言でバロンの後に続いていく。


「カナリ激シイ攻撃ヲシテイル。今ハ危険ダカラ様子ヲ見ルカ。」


 バロンが予定変更したのでガッツポーズして様子を見ていると、何かが魔法使いや剣士に狙われている姿が映る。

 爆発の閃光のせいで逆光となり黒い影しか捉えられない。だがかなりのスピードで動いているように見えた。


「レイ、モウ少シ近ヅコウ。」


 俺は揚げ足君の言いなりになり、しぶしぶ近付いていく。すると角度が変わり魔法の閃光に照らされた影の正体が鮮明に見えた。


「ニコッ!!!」


 燃え上がる炎に照らし出された横顔は紛れもなくニコの顔だった。俺が声を上げると同時にバロンは走り出した。


「な、なんでニコが!!」


 バロンに置いて行かれ、俺も独り言を投げ掛けながら走り出した。何故こんなところに……そう思ったが、恐らく俺と同じ気持ちだったのだ。

 ニコはきっと居ても立ってもいられず駆け付けてしまったのだろう。


 俺の行動が軽率だったのだろうか。

 だがバロンとニコを天秤にかけることなんて出来ない。だからニコを洞窟に置いて危険な事をしているバロンのもとへ駆け抜けたというのに、蓋を開けてみればニコが最も危険な状態に晒されている。


 怒号が響き渡りその全てが勝ち鬨に聞こえてしまう。頼むから俺達が辿り着くまでは無事でいてくれと心の底から願った。


「ソッチハ駄目ダッ!!!!」


 バロンの声が俺の思考を停止させる。視界がスローモーションになり、勝手にニコを注視していた。


 魔法の余波で木から落ちたニコは斧をもった男に右から斬り掛かられる。それを回避すべく左に移動すると、挟撃にかかった剣士が迫った。


 何とか振り下ろされた剣を回避したニコの元へ、それを始めから見越していたように魔法が降りかかる。


「ニコッ!!!!!」


 意識を置き去りに言葉は紡がれた。直撃を辛うじて回避したニコだったが、容赦なく魔法は爆発する。


 ニコは吹き飛ばされ、ちょうど同じ方向にいたバロンが辛うじてキャッチした。


「ニコ!大丈夫カ!?」


 ニコを抱えてバロンが叫び、そこへようやく俺は追いついた。


「レ……イ。無事デ……良カッタ。」


 炎に焼かれ皮膚が爛れながらニコは俺の生存に笑顔を溢す。


 同じ事をした俺は声がかけられずに震えていた。




 なぜここにニコがいる?

 

 どうしてそんな傷だらけなのに俺なんかの心配をしてくれるのだろう。


 勝手な葛藤をして動けない俺を見てニコは言う。今の俺にとって最も苦痛の伴う優しい言葉を。


「私……人間、殺シテナイヨ。ダカラ……安心…シテネ。見ツカッテ、ゴメンナサイ。」


「……。」


 俺は一体何をしているのだろう。

 ニコが苦しんでいる原因は全て俺じゃないか。痛みに耐え、涙を流しながら安堵しているニコ。そして無言で抱きしめるバロン。


 俺はそれを見て何を想えばいいんだ。


 偽善者気取りで全てを手に入れようとして、結局は自分だけしか見えていないのではないのか?


 痺れる。痛みに耐えるニコと、目を瞑り眉間に皺を寄せ胸の苦しみに耐えるバロン。


 その姿に脳が震えた気がした。


 何が決意だ。


 何が覚悟だ。


 この卑しくも纏わり付く自分勝手な精神では、端から何一つ護ることなど出来ないではないか。


 本当の覚悟って……なんなんだ。


 短絡的でなく、軽率でなく、それでいて強い気持ちを持つことなんて出来るのだろうか。何かを切り捨てないと、何かを守ることは出来ないのか?だとしたら、全てを守ることなど初めからただの戯れ言となってしまうではないか。


 今この時に答えを見出す事は出来ないだろう。だが、それでもこの胸に熱く滾る想いに沿って行動すれば、後悔だけはしないでいられる気がした。


「バロン……ニコの手当て頼んだよ。うまく誘導してみるから!」


「レイ!!!!」


 俺の名を呼ぶ声が聞こえた。走り出したせいでそれがニコなのかバロンなのかは分からなかった。

 でも声が聞けて何だかリラックスすることが出来た。


 地を駆け人間達の前へ飛び出すと、周囲は一際にざわめきたった。


「レッドゴブリンだ!必ず討ち取れ!」


 騎士風の男が剣を翳し、すぐさま指示を出す。すると一斉に武器を構えた人間達が飛び掛かってきた。


 それを見て俺は戸惑うこと無く誘導作戦を開始……出来なかった。


 言い訳ではないが、俺には天下無双の強さがあるわけでは無い。決意も覚悟も決めてはいるつもりだが、正面からぶつかって殲滅させるなどは出来ないのであくまでも俺は俺のやり方をしようと決めたのだ。


 決して顔が恐すぎたわけではない!!これから俊敏な動きで翻弄させるのだ!!


「ちょっ!まった!!」


「っ!?ゴブリンが………喋った?」


 あかーん!!ビビりすぎてつい喋っちまった!!


 ヒャッハー!!と言わんばかりに飛び掛かってきていた人間達は歩みを止め困惑を極めた。

 それだけゴブリンが言葉を話すのは異常だったのだろう。


「お、おい。ゴブリンが喋るなんて聞いたことあるか?!」


「あるわけねぇだろ!」


「エンシェントドラゴンが相手なら分かるがゴブリンだぞ!どういうことだ!」


「まさか……ただのレッドゴブリンではないのか?」


 困惑というか、最早混乱だった。

 俺の皮を剥いで売り捌こうと目論んでた癖に、既に勢いは完全に沈静化している。今更、やっぱり喋れませんよ?なんて通用するわけがないし、とりあえずこれを利用しない手は無い。


「……我は魔獣ゴブ・イフリートである。」


 嘘です。ゴブリン公認のレッドゴブリンであります。


「貴様等に危害を加えるつもりはない。だがこれ以上我が寝床を荒らされては黙っておれぬ。」


 今回は噓を言っていません。何故なら危害を加えるつもりはないですし、それに寝床を荒らされては黙っていられなくて泣き叫ぶぞこんちくしょー!


「魔獣ゴブ・イフリート。聞いたことは無いが……。」


 そうですよね。即席の創作ですからね。出来ればあんまりジロジロ見ないで。


「だが会話が出来るなど高位の魔物であることは確かだ。お前ら、死にたくなければ勝手に動くなよ。」


 常にリーダーぶってて、いけ好かない雰囲気を醸し出してる騎士風の男が指示を出す。すると息巻いてた取り巻き共は武器を下ろした。


「誇り高き人間達よ、良き心掛けだ。我は無駄な殺生は好まぬ故、感謝するぞ。」


「はっ!魔獣ゴブ・イフリート殿。その懐の広さにこちらこそ感謝します!」


 ……騎士まじチョロ。こういう奴は褒めときゃなんとかなるだろうと思ったら、ジャブでイチコロだよ。


 すると突然灰色ローブの魔法使いの女性が一歩踏み出した。


 危ねぇ、魔法ぶちかまされるかと思って危うくビクッてしそうになったぞ姉ちゃんよ。


「魔獣様の住処と知らなかったとは言え、我々の勝手な行動を謝罪致します。ですが、こちらにも事情がありまして……その寛大な御心で、話を聞いては頂けませんか?」


 信者弐号機爆誕!!!!


 この世界の人間は単純なの?!それともこれだけの人間がいてもどうにもならない位にヤバい魔物が存在してるの?!ねぇ!!存在してるの!?答えてよお姉ちゃん!!!


 とりあえず落ち着け俺。何とか乗り切らないといけないんだ!しっかりしろ!


「…………名を申せ。」


 よし、時間稼ぎだぜ!!!


「はい。私はダイアと申します。」


 駄目だこの質問。時間稼ぎにならん。致し方ない……無理難題は即刻却下だぞ!!


「……ダイアとやら、我は立場上聞けぬ事もあるが言ってみるが良い。」


 あっ。今何となくぷほぉって聞こえた気がする。いやっ、絶対聞こえた。何これキモイ。盗聴?ストーカーですか?ウザいんですけど。俺だってやりたくて演じてるんじゃないし、集中したいんでやめてもらえます?


 クソッ。集中力が散漫している。演技に意識を戻さなくては。


「ありがとうございます。我々はパレットで冒険者をしております。」


「冒険者か……森を探索するには随分と数が多いようだが。」


「私共の所属しているクランはパレットで冒険者ギルドの次に多いクランですので人数も多いのです。」


 クランか……多数の冒険者が集う集団のようなものかな。しかもさらっと冒険者ギルドとか言ってるけど、胸熱じゃね?


「遠い昔に人間達の集団と交流は持っていたが、我がこの森に住みつきこれだけの人間が訪れたのは初めてだ。」


「そうでしたか。確かに私共も80名近くのメンバーを集めたのは久しぶりです。」

 

 80人もいんのかよ!!どんだけの事件が起きたらこれだけの冒険者が集まるんだよ。


「それだけ集まれば騒がしいはずだな。」


「やむを得なかったのです。この森の夜は危険だという認識がありましたので。魔獣様のように森を恐れずにいられる強さがあれば良かったのですが、人間にそれだけの力は中々持てません。」


 やっぱり夜の森ヤバいんだな。恐れまくってるのが俺だけじゃなくて安心しました。人間ありがとう。


「しかし数を集めてでもこの森に来なくてはなりませんでした。とある人をどうしても探さねばならぬのです。」


 とある人?


「探し人か……それならば少しは役に立てるかも知れぬな。」


「ありがとうございます。本来口外禁止なのですが魔獣様なら問題ないと判断してお話致します。探しているのはパレット第七王女であるコンキスタ様です。」


「…………第七王女と言ったか?」


「はい。何か心当たりがありますか?」


 そうじゃなくて。第七王女って…どんだけ子沢山何だよ。まさか側室沢山抱え込んでる羨ましい王がのさばってるんじゃあるまいな。


「いや、その者は知らぬな。他に情報があれば聞かせよ。」


 うーん、情報を聞かせよって魔獣言うかなぁ。なんか変な感じするけど、アドリブだからこれ以上は無理があるんだよな。そもそも魔獣がどんなものか知らないし、つーか存在するのかすら分からん。

 我とか言うかなぁ。


「ご協力感謝致します。コンキスタ様は容姿端麗で鮮美透涼であり純情可憐であります。」


 わかるわけねぇだろが!!!!!


 抽象的というか、そもそも論点違うだろ!!探し人の説明だよね?!紹介とかじゃないよね?!


「しかし大胆過ぎる一面もあり、第七王女という身で有りながら我々のクランに入団しておりました。」


「そんなことが可能であるのか?」


「普通ならばあり得ません。しかし第七王女は冒険者への憧れがとても強く、国王陛下に只管直訴したのだとか。まだ歳も若く、婚約者が現れるまでという条件下でお許しを得たと聞いております。危険がつきまとう職業ですが、もちろんコンキスタ様には万全を期した状態でしか依頼は受けさせていませんでした。ですが依頼とは別で、勝手にここへ立ち入ったようなのです。」


 政略結婚をする時期までって事か。第七王女となると出来るだけ良いとこの貴族と結婚するのがお役目なのだろう。


 段々話が見えてきたぞ。要するに王女を預かってるクランが無鉄砲王女を心血注いで探してるってとこか。そりゃ一大事だな。


「そうか。では、もっと具体的に特徴を述べよ。」


「はい。とは言ってもコンキスタ様は王族として扱われるのを嫌っていたので、見た目での特徴を伝えるのが難しいところではありますが……挙げるなら王紋のロザリオでしょう。冒険者をやる上でそれだけは外してはならないと言われていたようですので。」


 ロザリオと聞いて心臓が脈打つ。どうして今まで他人事のように聞いていたのだろうか。俺は馬鹿か。


「………その者は短い赤毛で、銅の胸当てをしていたか?」


「そ、その通りであります!!!やはりコンキスタ様をご存じなのですね?!」


 確信となった。なってしまった。


 ダイア達が探しているのは、墓を掘ってあげた少女の事だ。



なんとゴブ・イフリート降臨です。レイは人間とどう向き合いこの危険な場面を切り抜けるのか!?



ストックある内は勿体ぶらずどんどん放出する予定です!


読んでくれた方、心より感謝です(∩´∀`∩)

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