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小鬼 第七話 不測ノ事態

連投ですヾ(^▽^)ノ




「……あれは?」


「人間ノ群レ。」


 長く続くオレンジ色の灯りはどうやら松明のようで、隊列を組んで進んできているように見えた。

 あの数からして軍隊……騎士団のような団体さんが攻め込んで来てる可能性が高い。


「なんで夜にこんな所まで人間が来ているんだ?」


「ワカラナイ。コッチニ来ナイトイイケド……。」


 分かるわけが無いと知りつつも聞かずにはいられなかった。


「レイ。兄サンヲ呼ンデキテモラエル?」


「う、うん。分かった!」


 ニコは監視を続けると言っていたので、滑るように木を下りていきダッシュでコロニーへ戻った。


「バロン!!」


「オッ、色ゴブリンノレイカ。コレ食ベタイノカ?」


 バロンはまだ広場で数人のゴブリンとワイワイやっていた。いつもの調子で俺を茶化してきたので少しイラッとする。


「それどころじゃないんだ!人間が大量に森にいるんだ!!まだ近くには来てないけど、ニコがバロンを呼んで来いって!!」


「……ワカッタ。皆、念ノ為全員ヲ起コシトイテクレ。」


 広場でワイワイやっていた連中にバロンが指示を出すと、さっきまでの姿が噓のように機敏な動きで駆けていった。


「レイ、ニコノ所ニ行クゾ。」


「うん!!」


 木に戻り登っていくとニコの表情は険しい。そしてバロンの表情もみるみるうちに険しくなっていった。


「マズイナ。コノママデハココマデ来ル可能性ガ高イ。」


 この辺りの森を知り尽くしてるバロンが言うのだから根拠はあるのだろう。今は無駄な質問をしてる時間も余裕も無い。


「ニコ、レイト洞窟へ戻レ。ソッチハ任セル。」


「……兄サン。」


 僅かな逡巡の後、決心したニコが俺の手を掴んで木を下りようとする。


「ちょ、バロン!!何なんだよ!どうするつもりなんだ!!ニコ、離してくれ!」


「レイ、洞窟カラ出ルナヨ。」


「だからバロン!!説明してくーーー」


「レイ!!……ニコヲ頼ム。」


 そう言い残してバロンは森へ飛び出していった。


「レイ……行クヨ。」


 ニコは静かに手を離し、木を下りていった。俺も胸がモヤモヤしたまま木を下りていく。


 洞窟へ歩いているがどうにもすっきりしない為、ニコに思い切って説明を求めた。


「ニコ、バロンは何をしにいったの?こないだみたいに偵察じゃないの?」


「前トハ状況ガマルデ違ウ。モシコノママ、コノコロニーガ見ツカレバ、皆殺サレルカモ知レナイ。」


「じゃあ何しに行ったの?」


「誘導。引キツケテ、コッチニコナイヨウニスル。」


 引き付けて誘導……それを実行するにはあの数の人間に見付かるという事だ。


「あんな数の人間から逃げきれないよ!!!」


「ソレハ、分カラナイ。デモ、問題ナイ者達ダッタラスグニ引キ返シテ来ル。トニカク今ハ皆ニ状況ヲ説明シナイト。」


 答えを聞いても結局モヤモヤした気持ちは変わらなかった。どうにかバロンを止めようと思っても、ニコはそれを無理矢理止めるだろう。

 それにバロンからすればコロニーを頼んだのに無責任なことをするなと思うかも知れない。バロンの覚悟を無下には出来ない。


 でもそんなもの……綺麗事だ。バロンが死んだら後悔するどころの話ではない。今動かなかったら、俺は心を無くしてしまう。

 

「レイ、早ク戻ロウ?」


 立ち止まり拳を握り締めた俺を見て、ニコは察したのだろう。優しく手を握り、手を引き始めた。


「ニコ、俺はそっちには歩けない。」


「レイ、駄目。兄サンハ命懸ケデーーー」


「知ってるよ!!でも、バロンが覚悟したように……俺だってバロンと一緒にみんなを守る覚悟を決めたんだ!!ここでバロンにだけ命を懸けさせたら、俺は二度とコロニーに戻れない!!!」


「レイ………。」



 手を離したニコは俺の胸に飛び込んできた。見上げるニコの瞳がウルウルしてるのが分かった。

 いつも思う。ゴブリンでもメスは柔らかいんだなぁと。こんなことを考えられる余裕はあるみたいだ。

 だからこそこの決意が冷静に考えた結果なのだろうと思う。


 もしかしたらバロンの言うように、ニコの気持ちを汲んでそばに居てあげた方が良いのかもしれない。


 だけど、もう決めたんだ。


「気持チハ……変ワラナイ?」


「ごめん。でも必ず俺もバロンも生きて戻るよ。」


 ニコの頭を一撫でした後に、俺は森へ向かって走り出した。




 森へ入ってすぐに気付いた事があった。よく昼間に見る小さい魔物達と度々すれ違うのだ。恐らくみんな人間達から避難しているのだろう。

 あれだけの行群だから危機管理能力もビンビンに発動するのも当たり前か。


 それを見て余計にビビってしまう情けない俺だが、今回は逃げ出すわけにはいかない。

 無理矢理足を運びバロンを追い掛けた。


 途中何度か木に登り距離を確認し移動を繰り返していると、あと100メートル程の所まで辿り着いた。

 

「バロン……。」


 その時、空しく響く俺の声を掻き消すように何かが爆発するような音が聞こえてきた。

 慌てて木を登り確認すると、人間達がいるすぐ先の森が燃えていた。

 それから爆発音は連続し、徐々にコロニーのある洞窟とは違う方角へと変わっていく。


「誘導してる……バロンがあそこにいる!」


 本音を言ってしまえば、戦闘が始まる前にバロンと合流したかった。

 尻込みしてしまう前に……逃げられない状況へ追い込んでおきたかった。


「……弱気になるな。俺はゴブリンを救うと決めたんだ!!」


 決死の思いで歩みを進める。やがて戦火の中へと入り込んだ。


 また炎が鳴き声をあげる……近い。


 戦闘が行われているということはバロンはまだ生きているという事だ。

 人間達も当初よりも西へと進む方向を変えている。


 再度木に登り辺りを見渡すと人間達の松明の明かりが見えた。もう数十メートルしかない。

 ここから先は木から木へと飛んで渡り近付いていくと、やがて人間の姿が目に映る。


「国の騎士じゃ……ないのか?」


 俺はてっきりどこかの国の騎士団かと思い、全員が同じ鎧を身に纏っているのかと思い込んでいた。

 だがそこにいたのは皆まちまちの格好をした者達だった。


 人間達と程よい距離を保ちつつ、それに沿って先頭を目指していく。


 やがて戦闘集団へ追い付くと、グレーのローブを身に纏った者が何かを唱えていた。

 すると少しの間を置いて頭上に火の玉が生まれると、杖を振り抜くのと同じくして火の玉が飛んでいった。


 前方の木に着弾した火の玉が爆発すると、周囲が照らされる。


「くっ!熱っ!!……バロン!!!」


 爆発する瞬間、木から木へと飛び移るバロンの姿が見えた。慌てて追い掛けようと飛び出すと、人間が騒ぎ出した。


「他にも現れたぞ!!警戒しろ!!!」


 マズイ。見付かったか?!声が聞こえ念の為すぐに木の葉で身を隠した。

 すると俺の乗っていた木が揺れる。


「クララララァ!!!」


「灰老樹だ!!火甲虫を呼ばれる前に燃やし尽くせ!!」


 木の揺れは人間の攻撃によるものではなく、この木自体が魔物だったようだ。

 慌てて他の木に飛び移ると直ぐさま先程と同じ火の玉が放たれる。それに続いて斧や剣を持った者達が木の魔物に飛び掛かっていった。


 灰老樹と呼ばれる魔物には顔は無く、根っこや木の枝を鞭のように使い攻撃を繰り出していた。移動しないところを見ると動くことは出来ないようだ。


 人間達が灰老樹に気を取られている隙に最前線を抜け出る。そして人間達に聞こえないように気を付けながら小声でバロンを呼び続ける。


 すると移動しながら名を呼ぶ俺を追い掛けてくる気配を感じた


「レイ!!!」


「バロン!!!」


 足を止め振り返るとそこには軽い火傷はしているようだが、大怪我はしていない(すす)だらけのバロンの姿があった。


「レイ!!何故ココニイル!!!ニコヤ、コロニーヲ任セタハズダ!!!」


 胸ぐらを掴み、見たこともない形相でバロンは睨んだ。だが負けじと睨み返し手を払いバロンへ言い返した。


「恩人を死なせない為に決まってるだろ!それに…ニコやコロニーを守りたければ、人任せにしてないで自分の手で守って見せろ!!!」


「………話ハ後ダ。」


 バロンは魔法に注意しろと続け、身を構える。


 人間達の方を見ると灰老樹が音を立てて倒れていくのが見えた。

 ここからが本番だ。気を引き締めよう。


「レイ、俺ガ矢デ気ヲ引ク。ソノ隙ヲ見テ帰ルンダ。」


「何を言われても帰らないよ。それにもう俺も気付かれたみたいだし。」


 木の上にいる俺を指さす少年がいた。まだ年若く見えるバンダナを頭に巻いた黒髪の少年は、腰のポーチからナイフを取り出し投合してくる。


 それをバロンは斧で容易く防ぐと弓を放つ。それを今度は大きな盾を持った男が前に出て防いだ。


「ゴブリンが集まりだしているかもしれん!早い内に叩くぞ!!」


 最前線で指揮を執る立派な鎧と剣を身に着けた剣士?騎士?風な男が声を上げた。


「あのゴブリン色が違うぞ!」

「亜種のレッドゴブリンだ!!」

「よっしゃ!トドメをさした奴の手柄でいいんだよな?!」

「金になるぞ!傷付けすぎるなよ!!」

「今はそんなこと後回しだ!亜種なんだ、気を付けろ!!」


 口々に人間達は騒ぎ立てる。だがバンダナ少年だけは騒ぐ事無くジッと見詰めてきた。

 あの年でこの討伐隊みたいなものに参加出来るくらいだから強いのだろうか。


「魔法使いを前線に戻せ!」


 騎士が指示を出すと他の男が伝令をしに走り出す。


「魔法使いが前線に来るって言ってるけど、バロンはどうやって魔法避けてたの?」


「……人間ノ言葉ガ分カルノカ?」


 あっ……そうだった。異世界の言語なのかと思いきや普通に日本語として聞こえる。そういえばゴブリンの言葉も普通に片言の日本語っぽいし。

 俺の高貴なる魂がそうさせてくれてるのか、はたまた性悪幼女のくれた(のろい)がそうさせてるのか。


「なんか……分かるみたい。魔法使いを前線に戻せって言ってた。」


「ナラ今ノウチニ少シ、距離ヲ取ルカ。様子ヲ見ヨウ。」


 バロンは木から木へと飛び移り移動を開始した。それに続いて俺も飛び出した。

 松明の明かりが数百メートル離れた所でバロンが立ち止まり、振り返り様にボディーブローを放ってきた。


「……レイ。」


 だが拳は空を切る。想定内だ。熱血ゴブリンの考えなんてお見通しだ。誘導していた方角とも違っていたからな。


「バロン!!いい加減に諦めろ!!二人で切り抜けるんだよ!!!俺だって戦えるんだし、足手まといになんかならない!!!!」


「ハァ。ニコニ怒ラレソウダナ………魔法ハ発動前ニ予備動作ガアル。見レバ分カル。不意打チニダケ気ヲ付ケロ。距離ヲ取レバ問題ナイ。」


「……バロン。よっし!とっとと遠ざけて必ず二人で洞窟へ帰ろう!!」


「ソウダナ。」


 かなり苦戦したが分からず屋は攻略成功だ。これで人間達に集中出来る。


 後はうまく誘導が出来ればいいんだけど。




 

Good-byeストック。


集中して小説作り出来る時間が欲しい!一日二時間は欲しい!


ここまで読んでくれてありがとうございます!!

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