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第七話・御嬢様と愉快な観光

「俺達は一体何をしていたんだろうな?」


「うーん、はしゃぎすぎたか???」


「まぁまぁ、バンホーさん、ギャスクさん…私も、久々、楽しめま…あ、リクス様、見えました…」


「フッフッフッ…ついに来たか!!」


数時間経過の後…一同は出入口に陣取っていただけの樹霊達を意味もなく殺戮しまくったことに対して特に反省すること無く移動し続け、ようやく目的地に到達した。


辺境の町・メギドの町。


「ほほう?これが町なのか…」


魔界独特の血を乱雑にブチ撒けたような模様をしたり、蔓草・茨が絡まってる建造物が並ぶ町並みに外の世界を今まで知らなかった興味津々なリクスは金色の瞳を密かに輝かせながらキョロキョロと周囲を見渡す…すると。


「うっぷ…おぶォ、吐きそッ…オヴェエエエエエエ!!」


「フッ…スーッ…ハーッ…あー、あー…キィエヤァアアアアア!!うわぁあああああ!!オレは殺されるんだァアアアアア!!ギェエエエエエエ!!」


「テメェ!!弟の癖に兄貴に逆らおうってのか…ぐぇ!?」


「うるせぇっ!!それがどうした!!このクソ兄貴…うぼぉっ!?」


昼間から働きもせずに酔い潰れて地面に嘔吐物(ゲロ)を盛大に吐く河馬の頭を持つ大柄な図体をしている河馬巨頭(ベヒーモス)族のオッサンがいるわ、魔界産且つ最もハイにキメられることで有名な粉末状の麻薬・黒魔薬(サバト)を鼻から吸ってラリッてる長い首をしたウナギ型の魚人…魚人(マーマン)族の亜種・怪鰻蛇(イール)が幻覚見てるわ、額に一本の角または二本の角を生やした大柄な鬼…人鬼(オーガ)族の兄弟らしき二人組が理由は不明だが往来で殴り合いの喧嘩してるわ…この町に住んでいる住人達はそれはそれはロクなものじゃなかった、が…。


「ククッ…なるほど、賑やかでいい町じゃあないか、気に入ったぞ。外部とはいえ魔界はこうでなくてはな。」


「ハハッ!あっちこっちで起きてる戦争とは比較的無縁の場所ですから、まぁちょっとうるさすぎるのが気になりますけどね。」


「ヒャッハッハッハ!!相変わらずバカやってんなー!この町のバカ達はよッ!!」


「今日も、平和な…証拠、ですね…フフッ。」


冒涜的な行為をしまくってる町民のことなど、魔界の住人たるリクス達にとってはあって当然の様な光景なため、嫌悪感を抱くどころか、むしろ微笑ましく笑い飛ばしていた程だった。


「色々な店があるものだな?沢山有り過ぎてなんだか解らんが…」


「雑貨店・工具や武器を扱う鍛治屋・食堂・賭博場・食材や麻薬の露店・酒場、そして風俗…」


「ヒョッ…!?ホ、ホァアアアアアアッ!!」


「…ゲハッ!?痛ェーな!!なにしやがる!?バンホー!!」


「バッカ!よせ!頭は確かかッ!?女性二人連れてるのになんつーこと言おうとしてるんだ!?ギャスク!!」


「?」


「ギャスク、さん…最っ低、です…!」


メギドの町にある数多くの施設の説明をリクスにするギャスクだが、最後に風俗店(いかがわしいみせ)のことをデリカシーもなく口にしようとしたため、それを遮るように素っ頓狂な絶叫を上げるバンホーから思い切り頭を引っ叩かれてしまう。だがそういうことに疎いのか?リクスは不思議そうに首を傾げ、そういうことに詳しいのか?逆にカイナは軽蔑したような冷たい視線を助平野郎(ギャスク)に送った。


「あ、失礼しました…リクス御嬢様、小規模の町ながらも種類豊富な店が沢山在ります。例えばあそこの鍛治屋は俺達古象人やギャスク達化石魚が道具の調達のためよく利用してましてね…。」


「ほう?というと、耕具や狩猟用の道具を扱ってるのか?」


ギャスクの下品(セクハラ)発言はさておき、バンホーはリクスを町の施設の一つとして鍛治屋を案内した。最近のリクスはバンホーやギャスクから食材の話のみならず、農業や狩猟に関係する話にも興味を持つようになっていたのでどんなものかと思い、一緒に入店した。


「おーい!ダンナ!邪魔するぜ!!」


「よう!元気してるかー?」


「ム…ギャスク、それにバンホーか?」


威勢良くギャスクとバンホーが同時に先陣切って入ると出迎えてくれたのは金色に輝く独眼があるだけののっぺりとした黒い顔、黒い鋼鉄製のメタリックボディに身を包み両腕や両足、腹、背中、後頭部など身体中の至るところに赤い炎状のトライバルパターンの紋様が走り、腰に棒状の金属プレートを複数ぶら下げ、作業中なのか?椅子に座りながら巨大なハンマーを振るって刃物を打っている独眼魔人(サイクロプス)族の鍛治職人であった。


「二人一緒に、だと?お前達、確か…。」


「あ?あー、それなー。」


「訳あってな、今は和解した。」


「ム、そうなのか?ムム、カイナはともかく、そっちの女性は…?」


化石魚と古象人がとっくの昔に和解していた事を知らなかったためギャスクとバンホーが二人して同じタイミングで入店したことが珍しい鍛治屋であったが、同じく面識があるカイナはともかく見慣れない存在であるリクスを珍しそうに独眼魔人特有の巨大な独眼をギョロリと向けて凝視した。


「私はこの者達の雇用者であるリクス・L・ヴァジュルトリア14世だ。鍛治屋、貴様は?」


「ム…ラガミ・ブラックスミス、だ…よろしく頼む。」


軽い自己紹介を交わした後、リクスは独眼魔人の鍛治職人であるラガミ・ブラックスミスが経営している鍛治屋の内装や彼の仕事ぶりがやはり物珍しいのか、一つ一つが彼女にとって初めて見る新鮮なものだった。


「ほう?耕具や狩猟用の道具のみならず、普通の武器も扱っているのか?」


ラガミはどうやら恐らく種族間の紛争などで大量に卸されるだろうか?大剣(バスターソード)戦斧(バトルアックス)などの近接武器のみならずボウガンや銃器といった遠距離武器なども取り扱って生成しているようだ。


「ム、必要ならば…あつらえてやろうか?」


「ほう?いいな、それ…またいつ鬼熊のような奴に襲われるか解らんからな。」


今こそバンホー達が側にいるから良いものの、外の世界はリクスにとっては完全に未知の世界…ましてや無法の荒野にも等しい魔界なら尚更のことであり、以前彼女達を襲ってきた鬼熊みたいに何者かからの襲撃も充分に考えられる。そのためか、リクスは護身用にと武器の作製を是非ともと、ラガミに頼もうとした…。


「一つ頼もう…」


「ム、腹が減った…すまんが、今日は閉店だ。」


「…か、って…な、なに?いきなり閉店…だと?」


…が、駄目っ…!!突如、空腹なのか?腹の音を鳴らしたラガミはあろうことか、まだ営業時間であるにも関わらずにいきなり店を閉店にするなどと普通では考えられない事を口走ったのだ。このまさかの対応には流石のリクスも面食らった顔であった。


「貴様…私を一体、誰だと思っ…!!」


(((アカン。)))


魔界においては商売事に関しては単に需要があるだけだから適当にダラダラやってるだけであり、店員や商人達は恐ろしくやる気がない者や仕事に対する責任が無い者、単に面倒臭くなって今日はやめようなどと考える怠け者が大半であった。リクスは噂でだが、そういう町の住人の在り方は聞いていたものの実際にやられて相当腹が立ったのか、怒りに身を任せて邪眼を発動しようとし、バンホー達が止めるべきか考えてた時だった。





「ム、ム…行きつけの店があるが、昼食がまだなら、来るか?」


「…フンッ…良いだろう、だが私の舌を満足させるような、それはそれはさぞかし良い店なんだろうな?」


「「「ちょ、ちょろィイイイイッ!?」」」


食欲旺盛、悪食上等、どこまでも貪欲過ぎる食い意地の悪さ故に…昼食に誘ってきてくれたせいか?先程のラガミの不敬な態度さえも不問とし、ホイホイ誘いに乗ってしまったという、こんなちょろ過ぎる雇い主に対して三人は思わず口に出して魂の限りツッコミを入れてしまったという。



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