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第二話・御嬢様は人材が欲しい

「さて…始めるか。」


翌日、リクスは早速行動を開始した。


「御嬢様!?本気ですか!?」


「この森を切り拓くだなんて!」


蜥蜴人の執事やメイド達はリクスのやろうとしていることに激しく動揺していた。無理もない、彼女は自分が秘匿する領土を自ら開拓して今森から取れるクソマズイ食糧を越えるものをリクス自身の手で作ろうと考えているのであるから。そんなことしたら森の特性が減少してしまい、外部からの侵入者達が容易にこちらへと攻め込んできてしまうのだが…。


「行くぞ、かかれー!!」


「ギガァアアアッ!!」


「「「フシャアアアッ!!」」」


「「「話を聞いてェエエエエエッ!!」」」


…聞く耳持たず、リクスはブルドーザータイプの重機械兵(ゴーレム)に乗り込んで洋館の近隣の木をバキバキなぎ倒したり、八本の足を生やした鎧の様な外見に見える重厚な鱗に包まれた一ツ目の巨大な蜥蜴・大鎧蜥蜴(サンゲイザー)を操り地面を踏み固めたりと、執事やメイド達の制止をガン無視してやりたい放題だった。


「次だ!次ッ!耕せ!者共ッ!!」


「こ、こんなことが許されていいものだろうか…?」


「歴代の御領主様達が大事になされていた領土を粗末に扱うなんて…。」


「しっ!聞こえたら毒蜥蜴みたいに石化されるぞ!?黙って言う通りに耕せ!!」


取り合えずの土台を固め終えたリクスは次に執事やメイド達に耕具を持たせて畑を耕させた。彼らは彼女に抗議しようとしたものの毒蜥蜴のコックの末路を思い出し、逆らうことは諦めて渋々慣れない農作業を開始した…が。


「なぁ、こんな感じか?」


「いや、こうではない気が…」


「ヒィ、ヒィ…こんなの出来ませんよ~」


当然ながら素人達の作業なんてたかが知れたもので、そもそも耕そうにもやったこと自体が殆んどないのだから…。


「ぬぅ…やはりド素人共では無理があったか?ならば…。」


まさかこんな初っぱなからつまずくとは思いもしなかったらしい、リクスは執事やメイド達の手際の悪さを想定に入れてなかったため、仕方無くやり方を変えることにした。



帰らずの森・洋館の東の地域にて。


「おうおう!てめぇらァアアアアア!!今日こそ一族郎党皆殺しにして三枚おろしだ!ゴラァアアアッ!!」


「やれるもんならやってみろ!この木偶の棒共がァアアアアア!!おのれらの肉で焼き肉パーティしたらァアアアアア!!」


此処では魔象人(ガネーシャ)と呼ばれる象型の獣人の亜種…毛深い象の姿をした獣人である古象人(マンモス)と魚の姿をした人型の怪物・魚人(マーマン)族の亜種たる石のような鱗に覆われた化石魚(シーラカンス)の一族達が縄張り争いの小競り合いをしていた。お互いに睨み合い、まさに一触即発の雰囲気…と、その時だった。


「邪魔するぞ。」


「あんぎゃああっ!?」


「みぎゃあああッ!!」


「「「リーダァアアアアアーッ!!?」」」


ブルドーザータイプの重機械兵に乗ったリクスが森の木々を豪快に倒しながら乱入…突如現れた謎の第三者に対応出来る訳もなく、古象人と化石魚のリーダーはまるで石ころの様に撥ね飛ばされてしまった。


「おい、貴様ら。」


「てめぇが殺ったのか!?このアマァッ!頭は確かか!?俺達のリーダーに何しやがる!!」


「どっちのリーダーも汚ねぇ魔界のお星様になっちまったじゃねえか!?どうしてくれるんだ!!」


重機械兵のハッチから頭を出したリクスの顔を見た古象人と化石魚の下っ端達は最早お互いに争っていたことなど忘れ、彼女が自分達のリーダーを星に変えてしまった事に対する怒りで頭が一杯になってしまい、怒号を上げて詰め寄ろうとしたが…。


「話を聞け…下賤な蛮族共。」


「「「マッ。」」」


「「「ぎゃああああ!!?なんでコイツら皆石になってるんだァアアアアア!!」」」


リクスはなんら躊躇いも容赦なく邪眼を見開いて古象人と化石魚の一団を数名だけ残す形で石化させた。


「我が名はリクス・L・ヴァジュルトリア14世、この帰らずの森全域を治める邪眼蜥蜴一族のヴァジュルトリア家14代目当主である。」


「ンなッ…!?」


「魔界貴族のヴァジュルトリア家の御当主様だと!?」


「「「ははぁああああ!!」」」


リクスの名乗りを聞いて古象人と化石魚の生き残り達はさっきまでの威勢の良さはどこへやら…顔を青褪めさせ、震えながら土下座をして自らの頭の高さを一気に低くさせた。


ヴァジュルトリア家…今でこそリクスが当主となり魔族でありながら魔界の戦争に我関せずと言わんばかりに静観を決め込んでいるがその昔は魔界において五本の指に入るほどの猛者と恐れられ、彼らの栄華の極みたる過去の功績はこの魔界において今尚影響力が高く、帰らずの森に外部の者が近寄らないのも単に迷いやすく遭難者が絶えないからだけでなく此処がリクス達の領域で迂闊に手出し出来ないからだというのも理由の一つである。例えどれだけの戦力を誇る部族だろうがなんだろうがヴァジュルトリア家の名を聞き、それだけで侵略行為を諦める者も多々存在している。


「あの、ヴァジュルトリア家の当主様?貴女方のような方が我々のような下々の者になんの御用で…?」


「貴様らのどちらかが農耕民族と聞いて遙々やって来たが、どっちだ?」


「あ、ハイ、それなら俺達、古象人の方です。」


「ちなみに我々化石魚は狩猟民族です。」


「なんと!これはついている…どちらも私が今もっとも欲しい人材ではないか!」


「「「へ?」」」


リクスが古象人を求めて訪ねた理由はというと彼らが縄張り争いの傍ら普段は魔界でも希少な農業を生業とする農耕民族故にそのスカウトのためだった。更に幸運なことに古象人達と敵対している化石魚達はというと帰らずの森に棲息する獣などを狩る狩猟民族だった。これ幸いとリクスは自分が今やろうと考えていることを彼らに説明した…。




…数時間後、ヴァジュルトリア邸にて…。




「リクス御嬢様!近場はとりあえず終わりました!」


「ある程度整備されてたため殆どすぐでしたけどね。」


「御嬢!サンプルとしていくつか獲ってきました!河童(カッパ)の肝です!」


黒後家蜘蛛(ブラックウィドー)の腹や狗妖精(クー・シー)の頭も美味いですぜ!味は保証しますよ!」


「うむ、流石だな…農業と狩猟を生業としているだけあって仕事が早い。」


あの後、リクスは彼らの石化を解除し、古象人と化石魚の一族全員をほぼ強制的に連行し、ヴァジュルトリア家専属の食糧生産担当のスタッフとして雇用した。最初こそ戸惑う彼らだったが普段からよくしてる手慣れた仕事のためか、その働きようはヴァジュルトリア邸の執事やメイドとは比べ物にならないほどの優秀ぶりだった。


「いやぁー…いきなり『働いて畑耕せ』と言われたのには驚いたけど意外と悪くないな。」


「金も用意してくれるし、それにリクス様だったか?あんなにもお美しい方の下で働けるなんて…嗚呼、最高だぁ~!」


「ところでリーダー達ってどうなったんだ?」


「ハッハッハッ!いいよ、別に。そんなのもう。今が楽しけりゃさ!」


残念ながらブッ飛ばされた彼らのリーダーは未だに行方知れずだが最早そんな些細なことは忘却の彼方である程、古象人と化石魚達も今までは縄張り争いで不毛な小競り合いばかりだった関係ながらも元々両者は働き者な種族な上に新しい仕事と十分な賃金を得られ、そして強く美しい上司(リクス)の元に仕えられるため、満更でもなかったりする。ついでに言うと協力しながら働いてる内にもうお互いの中の敵意は完全に消失してしまっていたという…。

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