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第9話・御嬢様とはじめての闘技場

メギドの町・賭博場『ソドム』近隣に併設されている闘技場『ゴモラ』会場内、観客席にて…。


「「「うおおおおおおおお!!」」」


「「「殺せ!殺せ!殺せぇえええええええ!!!」」」


「「「ぶっ殺せぇえええええええ!!」」」


「「「ヒャーハッハッハー!!」」」


ギラギラした目つきをした魔族の観客達の怒号にも等しい歓声が闘技場内全域に響き渡る…彼らは別に殺し合いに参加している剣闘士(グラディエーター)達を応援しているわけではない…彼らが殺し合い、血を撒き散らし、四肢がもげたり、臓腑を四散させ、そして死ぬ…そういうものが見たくて堪らないといった狂気に満ちており、ついでに賭けに勝てば金も手に入り、客にとっても闘技場の運営側からしてもまさにガッポガッポの大儲けで一石二鳥である。


「此処が闘技場か、周りがちと五月蝿いがこの雰囲気は悪くないな。」


「とんでもねぇところに来ちまったぜ…」


「ヤバイって周りの奴ら、頭は確かかよ?目が完全にイッてんぞ…」


「こ、こんな恐ろしいところで…リクス様が、戦うなんて…!!」


一方、リクス達は闘技場がどういうところかを知るために参考として試合で剣闘士が行う戦いというものを実際に見るため、観客席で見学していた。これが終わったら後に自分が出なければならないというのに呑気にリクスは呑気に売店で購入した魔界の海・魔海(ヘルディープ)産の魚妖・鬼虎魚(スティングフィッシュ)の串焼きをバリバリ食べながらマイペースに観戦し、バンホーやギャスク、カイナは周りの観客の異常な狂気に顔を青褪めさせながら闘技場の雰囲気に飲まれてしまっていた。尚、フローラは昔のことを思い出したくないため一緒に着いていかずにラガミと一緒に店で待機するとのことでこの場にはいない。


「それでは試合開始致します!選手、入場!!」


「バリッ…ボリッ、そうこうしてる内に始まったぞ?」


丁度ここで試合開始のアナウンスが鳴り響く。途中から入場したため、試合の内容は不明だが、観客席はこの闘技場の中心部の円形のリングを囲う形で配置されており、リングには左右向かい合う様に二つの鉄格子状のゲートがあるが、選手入場の合図のファンファーレが鳴り響くと共にゲートが上へせり上がる形で開かれる…。


「さあ、まずは東門からは東の山の民にして人食いの蛮族!生皮剥がしの達人!!オニベエ選手!!」


「死にてぇ奴はいねがぁあああ!!」


「西門からは密林からやって来た怪力無双のマッスルゴリラ!現時点で未だ負け無しのパワーファイター!ボボンゴ選手!!」


「ウッホウッホ!!ウホホホホホイッ!!ウッホ!!ウッホッホー!!」


司会者のアナウンスと共に現れた二人の剣闘士…血がベットリ付いた巨大な鉈を持ってる二本の角を頭に生やしてる鋼鉄製の朱色の鬼面を着け藁で出来た衣服の上に全身に鉄鋲を生やした黒い鎧を纏う小柄な鬼型の生剥(ナマハゲ)族のオニベエ、巨大な掌のオブジェが付いた肩パッドを付けており顔や腹に灰色の泥で描いた奇妙なボディーペイントを入れ木製の巨大な棍棒を持った黒い体毛に覆われた巨体をしているゴリラに似た姿の羅漢猿(ハヌマーン)族の亜種・剛羅猿(コング)のボボンゴが入場し、リングに足を踏み入れた。


「ゴッホッホー!!おい、チビスケ!!そんなナリで本気でオデに勝つつもりか~!?」


「ケェッ!!抜かしてろよ、脳筋ゴリラ!デカけりゃ勝てるなんて誰が決めた?あぁ!?クルァッ!!」


リングに上がった両者は互いにガン飛ばし、互いに口汚く罵りあった…図体のデカいボボンゴは自信たっぷりに見下ろしながら小柄な体格のオニベエを侮り、オニベエもまた体がデカいこととそれ故に強い事をアピールしてくるボボンゴに対して鉈を突きつけながら殺意を剥き出しにする。


「御嬢、どっちが勝つと思います?オレはオニベエだと思いますが。」


「そうだな、やはりあのボボンゴとかいう奴だな、デカイ奴は普通に強い。鬼熊とかその代表格みたいなものだろ?」


「御嬢様ー…あんな規格外の奴と此処の剣闘士を比べても比較にならないですよ…でもまぁ、俺もボボンゴで。」


「…うう、あの悪夢の様な出来事は…もう、思い出したくないです…あ、私はオニベエで。」


殺意全開な二人の様子に反して四人はというと…ちゃっかり賭けていた。リクス以外の三人もなんやかんやで闘技場の雰囲気に適応出来ていた。ちなみにリクスとバンホーはボボンゴに、ギャスクとカイナはオニベエにと見事に賭けの対象が分かれている。


「レディー…ゴー!!」


「ウッホー!!ウホホホホホ!!」


「シャアアアアア!!」


司会者の試合開始の合図と共にゴングが鳴り響き、ボボンゴとオニベエは即座に相手目掛けて虎の様に飛びかかりながら殺し合いを始めた。尚、この闘技場の試合には審判はいない、どちらかが死ぬか、試合続行不可能な状態になるかまで続けられるが大抵は前者の展開が非常に多い。


「ウッホー!ウッホホホー!!どうだ~?オデは強いだろ~?」


「うわっ!?おわっ!!危ねっ…テメー!!この野郎!!調子クレてんじゃねえーよ!!ボス猿ゥウウウウウ!!」


ボボンゴの怪力から降り下ろされる先手必勝の巨大な棍棒の一撃でリングのアチコチがクレーター状にヘコみ、彼の連続攻撃を次々と避けるだけの防戦一方なオニベエに対してこの脳筋ゴリラは自分のバカ力をアピールするかのようにマッスルポーズをして挑発してきたため、オニベエも負けじと攻めに転じた。


「オラァッ!!まずは足ィッ!!」


「ウッ…!ウッボォッ!?ボハァアアアアア!!?」


オニベエは鉈をボボンゴの右足に突き刺すと、強引に刃を力ずくで押し込み足の肉を皮膚ごとゴッソリと抉り取る…大量の血飛沫を鬼面に浴びながら、今度は左足に狙いを定め、素早く同じ行程を行い、左右前後に繰り返して両足の皮膚をベリベリ剥がしまくってしまった。


「ウホギャアアアアア!!いっでぇえええええええ!!?いでぇよォオオオオオ!!」


「腕ェ!!」


「ひっ!?や、やめで…ひぎゃああああああ!!」


皮膚を剥がされた激痛が走る両足にバランスを崩して豪快に倒れたボボンゴの悲痛な叫びやさっきまでの威勢の良さが一気に無くなった情けない命乞いを全て無視した。オニベエは無慈悲にも狙いをボボンゴの両腕に切り換え、両足同様皮膚を肉ごと抉り取る様に剥がしていき、吹き出る返り血で自分の全身を汚い赤に染めていく。


「ウホァアアアアア!!やめでェエエエエ!!オデが悪かったァアアアア!!この勝負、オデの負げ…!!」


「はぁああん?ンなもん、ダメに決まってんだろ~?それに痛くしねぇとお仕置きにもならねぇし、オレも客も面白くねぇだろが!バーカ!!次以降のお剥がしフルコースは腹、背中、そして最後にテメェの汚ねぇツラって決まってんだよ!!ギャーハッハッハッハッ!!」


「ウッ…ウホウワァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


…最早、勝負は既に決まっていた。断末魔を上げた後にボボンゴは自慢の肉体の皮膚を全てオニベエに剥がされるという残酷極まる形で惨殺されてしまった…。


「決まりましたァアアアア!!勝者!オニベエェエエエエ!!」


「「「やったぁあああああ!!オニベエェエエエエ!!お前に賭けて良かったぜェエエエエ!!」」」


「「「ボボンゴォオオオオオ!!ふざけんなァアアアア!テメェェエエエエ!!金返せェエエエエ!!」」」


オニベエの勝利が司会者によって高らかに宣言されたと同時に彼に賭けた観客は大儲け出来たために歓喜に包まれたものの、反対に死亡したボボンゴに賭けた観客は大損した怒りのためか死者に鞭打つ様な罵声と非難の雨嵐であった。


「ケェッ!ドシロウトがぁっ…!図体がデケェだけでこの闘技場(せかい)でやってけると思うなよ!雑魚!!」


そう吐き捨ててオニベエは東門へ退場して行った。この闘技場の剣闘士達の大半が元・盗賊や殺し屋といった者や戦争帰りの軍人、多彩な流派の格闘家など様々な経歴の持ち主であるが、そんな幾多の修羅場に慣れている彼らであったとしても此処の闘技場での殺し合いはヤバイ商売(しごと)のため、惨めに討ち死にしたボボンゴの様に単に体格や腕力が優れていれば勝てるというものではないのだ。


「クソがァアアアア!!何負けてんだよ!?てめぇコラ!このゴリラ野郎ォオオオオオ!!」


「おのれェ…ヴァジュルトリア家十四代目当主たるこの私によくも恥をかかせたな、猿めェエエエエ…!!」


「イェーイ!!やったな!カイナちゃん!オレ達ついてるー!!ヒャッホー!!」


「ふふ、良かったです…賭けたのがオニベエで…」


さて、こちらはというと…賭けに盛大に負けたバンホーはブチ切れながら喚き散らし観客席のフェンスに両手でバンバン叩き、リクスはドス黒い怒りを発しながら鬼虎魚の串をバリバリ噛み砕いた。逆に賭けに勝ったギャスクとカイナは喜びのあまり互いに抱き合いながらその場で小躍りしていた。なんとも現金な連中である。



…その後


「御嬢ォ…もう帰りましょうよ~。それに今日のは視察みたいなもんですし…」


「い、嫌だ…嫌だ…!私は…負けていない…負けていないんだ…!!」


「…バ、バンホーさん、も…貴方もいい大人、なんですから…ね?」


「嫌だァアアアア!!勝つまでやるんだァアアアア!!」


…負けた悔しさにムキになったリクスとバンホーが駄々っ子のように半泣きでグズりだし、結局二人の望み通りになるまでギャスクとカイナはそれに付き合い、何度も賭け試合をするハメになった。しかし、よほど今日は運が悪いのか?二人は負けに負けまくり、ようやく勝って闘技場から出て行ったのはかなり時間が経った後のことだった…。


「ハッ!?闘技場の試合に勝つまで賭けることに夢中になってて忘れてたが…御嬢様!貴女、闘技場の試合に出るんですよね?」


「む?無論、そのつもりだが?」


闘技場を後にする際にバンホーがふとあることに気づき、リクスにどうしても確かめたいことがあるので思いきって聞いてみた。それは…。


「あの…そもそも、御嬢様って…戦えるんですか?」


「愚問だな、バンホー。出来んならば、フローラの店は有無も言わずに最初から諦めているはずだ。」


リクス本人に戦う力があるかどうかに対する疑問であった。彼女には条件さえ合えば相手を石化させる邪眼という強力な切り札があるものの、失敗したらどう戦うつもりなのか?それ以前にリクスが邪眼以外の方法で誰かと戦った場面など見たこともなかったため、バンホーが不安を感じるのは当然と言えるが肝心のリクスは表情を変えず、後ろから話しかけてくる彼に対して振り向きもせずに平然と言い切った。


「それに、リクス様…邪眼、使うのは…マズくないですか?その、立場的なアレで…。」


「そうッスよ!身バレしたら後々面倒な連中とかに目ェつけられそうッスよ?なんせヴァジュルトリア家の御当主様なんスから…。」


更に問題なのは仮に試合中に邪眼を使った後の事である。メギドの町にとって完全な余所者で、しかも生まれながらに持つ邪眼蜥蜴(バジリスク)族特有の邪眼で相手を石化出来る者など目立って仕方ない上に最悪すぐさま良からぬ連中に調べられて身元が即座にバレてしまう、リクスが魔界でも五本の指に入る魔界貴族のヴァジュルトリア家の当主などと知れたら、万が一何をされるか…。


「カイナ、私が邪眼抜きでは戦えない腰抜けだとでも言いたいのか?それにギャスク、そのことに関しては私にいい考えがあるので問題ない。」


しかし、カイナとギャスクの忠告などどこ吹く風、やはり表情は殆ど変わらずにその顔で『全てが問題ない(ノープロブレム)』と言わんばかりに戦えることをバンホーと同じく後ろにいる二人に向かって一切振り向かずに断言した。


「今日は色々あって疲れた。適当に宿でも取って休むついでに用意しておきたいものもあるからな、闘技場へのエントリーは後日だ。いいな?」


「「「は、はい。」」」




そう言い放ち、宿屋にズカズカと向かうリクスの背中を三人は不安そうに見つめ、それでも着いていこうと追いかけた…こうしてリクスにとっての初の森の外への外出の一日目は終了した。

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