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いつでも終えられるプレパレーション

 ある時から、ずっと気になっていることがある。


 それは、パソコンを手に入れて、島のなかの指定された範囲を好きにいじれるようになったことがきっかけだった。


 ふと、転生に必要だという青い玉がどこにあるかを調べたのだけど――。


「そろそろ訊いておこうと思うんだけど」


 ベッドに腰掛けたリンリルの前に仁王立ちをし、厳しい口調で問い掛ける。


「……なんでギルドに、あれがあんの?」

「ついに、気がついてしまいましたか」


 あぁ、気が付いた。反応があるなぁ、と思って調べてみたら、売店の奥の方にある棚の奥の方に置かれていたのだ。値段は百円。


「いや、誰でも買えるじゃねーかよ。転生、普通に出来んじゃん」

「はい。しかも売れたら補充されるます」


 この島にいる意味は何なのだろうか。


「でも、不思議なことに今まで一度も売れていないんですよね。本当に、不思議です」

「まぁ、ホームセンターでも、開店以来一度も売れていない商品とかあるって話だし、不思議ではないと思う。けどさ、何のためにあんなところにあるん? この島での行動の意味は?」

「準備以上の理由はないですよ。ただ、新しい世界に行く前に、自分が得られる能力を試しておこう、ってだけです。なので、自分が狙いやすいタイミングで転生できるように、さまざまな場所に、あの玉は現れるのです」


 なるほどなぁ。準備とかは気にしないから、さっさと転生したいって人のために、あの値段で売られているわけか。


 にしては、わかりにくい場所にあって意地が悪いけどな。


「それに気が付いたヤータさんは、どうしますか、直ぐにでも転生しますか?」

「うーん、そう言われると、なんだかなぁ。もう少し時期を見たい気がしてしまう。いつでもできるとなると、なんだか身構えちゃうよな」

「そういう人、結構いると思いますよ」


 だから、売れ残っているのかもな。


「因みに、もう一つ獲得方法があるのです。いわゆる隠し要素ですね」

「ほう。どんな?」

「ギルド職員の好感度です。高いと見つけやすくなります」


 ……まさか!?


「ちょっと待ってくれ。じゃあなにか? 俺がギルドであれを見つけたのも、お前の好感度が高かったからか?」

「そうですよ」


 なんというか、色んなゲームの寄せ集めみたいな島だったんだなぁ、此処は。


「……じゃあ、さ。俺の好感度次第で出現率を変えることもできるのだろうか」

「信仰のされ具合では、可能かもしれませんね」


 なるほど。


「となると、……仮に転生をしたとして、この立場を維持し続けることが出来るかどうかは、未知数――というより不可能だろうな。それなら、この島で好き放題やったほうが得な気もする」

「きゃ!」


 胸を寄せるなよ。好き勝手って、そういう意味ではない。


「どのみち、転生して何をするかなんて決まってないし、しばらくここで遊んでみるのも良いかもしれないな」

「人に転生する権利をもたらす。本当に、神様みたいになりそうですね」

「そのための準備、なのかもな」


 自分が転生するためではなく、誰かを転生させるための準備、か。そういうのも、悪くはないのかも。


「そのためには、……先ずは寝るかー」

「きゃ!」


 だから、そういう意味ではない。こいつとの関係も、当分変わらないだろうな。

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