パンはパンでも……。
「パンはパンでも、はけないパンってなーんだ?」
リンリルからの突然のクイズに、俺は咄嗟にこう答えた。
「フレンチトーストが食べたい」
「フレンチな接吻ならいくらでも」
ああ言えばこう言う。これは真剣に答えなくてはならないのだろうか。そうなると、一つ潰しておかなければならない気がする。
「はけない、のニュアンスってどんな?」
「それを答えたら面白くないですよね? あ、パンを二つ思い浮かべてます? パンが二個あると思ってます? ヤータさんはパンツが好きですねぇ」
これで履くの方向性は消えたな。
「……もしかして、パン、持ってきてんの?」
「あ、もしかして気が付いちゃいました? ふふっ、焼きたてのパンを持ってきたんです。漫画みたいなリアクション、期待していますね」
「いや、恋人が作った不味いパンは、絶対に吐きたくないけれど、お前が作ったパンは遠慮なく吐く」
「辛辣なコメントなコメントを吐くその口には、パンを押し込みましょう」
そうして詰め込まれたパンを吐き出すと、その形に対し、思わず――
「これ、丸まったパンツみたいな形をしてるんだが?」
「……」
「結局、何言っても正解じゃねーか!」
まぁ、こんなパンを作る腕前は褒めてやるけど。意外に美味しそうな味をしていたし。
「レモン風味です」
いらんことを言うな。




